日本カルメネール振興協会の活動日です。これは昔から飲んでるやつなんですが、このブログでは未掲載のミゲル・トーレス・チレのカルメネールと参りましょう。ん!? カルメネールの表記が「Carmenére」とアクサンテギュ付きになっています。このパターンはありえません。裏ラベルはエノテカが貼り替えたやつですが、ここも間違っています。さては、エノテカが間違えたか?

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以前、カルメネールの発音と綴りについて考察をしています。アクサンテギュとアクサングラーヴの有無の違いでおおよそ3パターンあり、使われる表記はまちまちです。

(1) Carménère(カルメネール)
(2) Carmenère(カルムネール)
(3) Carmenere(スペイン語読みをするとカルメネーレ)

カルメネールはもともとボルドーの品種ですから、フランス本国に倣えばいいんですが、肝心のI.N.A.O.(Institut National des Appellations d'Origine)が(2)の「Carmenère」を正としているようなんです。フランスのブドウ品種サイトも昔は「Carménère」表記だったものがどんどん「Carmenère」に変わってきているようです。「Carménère」はシノニム扱いになってるところも多いです。
チリではまだまだ「Carménère」表記をするところがありますが、本国の影響か「Carmenère」が増えてきているようです。ご存知のように、個人的にはアクサンテギュとアクサングラーヴの両方ついた、「カルメネール」としっかり読める(1)Carménère を押しています。(笑)

で、本日の問題は、「Carmenére」というおそらく間違いであろう表記です。フランス語の正字法に従うと、アクサンテギュがついた後に、子音+無音の「e」が来ていますので、ここはアクサングラーヴでないといけません。これをわかっていると何とも気持ちの悪い表記に映ります。


さて、作り手のミゲル・トーレス・チレは、名前からわかるようにスペインの大手トーレス(Familia Torres)が1979年にチリに進出して立ち上げたワイナリーです。チリに目を付けた海外勢では一番乗りだったようです。公式ページはさすがにしっかりしています。

ワイン紹介もデータシートあり。
・カルメネール 100%
あれれ、データシートはちゃんと「Carménère」となってました。しかし、写真はやっぱり「Carmenére」となっています。おそらくミゲル・トーレスの中の人がラベル上で間違えたようですね。エノテカさんの間違いじゃないようです。エノテカさん、疑ってスミマセン。(笑)
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この写真、ミゲル・トーレスの畑の看板ですが、大文字で書いてアクセント記号をつけてないです。こんなだからラベルでミスをすることになるんですかね。(笑)
熟成は、全量の50%のみ3年落ち以上の樽を使い6ヶ月だそうです。グラン・レセルバというもののローレンジではありますね。


いやあ、カルメネール、表記含めいろんな意味で謎めいてるミステリアスな品種です。
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その数奇な歴史や、チリで混同されてきたメルローとの違いなどは過去記事で何度か触れています。そこでも引用していますが、日本酒類販売がナティバというカルメネールのワインの専用サイトを作ってまして、ここのカルメネールの解説がとても素晴らしいので一度ご覧になってください。ここでは系統にだけ触れておきます。2013年に実施されたDNA分析によると、カルメネールという品種の親子関係はこのようになります。

カルメネール= (母) ムラル x (父) カベルネ・フラン

ムラル(Moural)はフランス原産の品種です。このようにカルメネールの親として登場はしますが、現在栽培はされていないようです。チリでカルメネールと混同されていたメルローはというと…

メルロー= (母) マグドレーヌ・ノワール・デ・シャラント x (父) カベルネ・フラン

そ~ら、片親(父)が同じカベフラです。混同されたくらいですから血は争えないですね(笑)。このマグドレーヌ・ノワール・デ・シャラント(Magdeleine Noire des Charentes)というのもフランス原産の古い品種で現在は栽培はされていません。しかし、コ(Côt)すなわち、マルベック(Malbec)の母親もこの品種なのでいろいろお世話になってはいます。(笑)
ついでにカベソーもおさらいしておきましょう。

カベルネ・ソーヴィニヨン= (母) カベルネ・フラン x (父) ソーヴィニヨン・ブラン

でしたね。ここではカベフラは母となりました。世界で人気の品種ですから、DNA分析が流行りになってきて真っ先に調べられ親子関係が判明したのがカベソーだったそうです。


ミゲル・トーレス・チレを訪問しておきます。これは入り口。敷地は右方に広がってます。
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パンアメリカン道路(チリハイウェイ)5号線沿い、マウレ州、クリコーの町の郊外です。ホテルやワイン・レストランなんかが併設されており興味深いです。

マウレ州を俯瞰するGoogle Mapで位置関係を見ておきます。
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ミゲル・トーレス・チレの所在(黄四角)も書き込みました。クリコーの町を最初に探してみてください。今日のワインはDO(Denominación de Origen)セントラル・ヴァレー(Valle Central)なのでマイポまで含む広域になります。よって畑は特定できませぬ。

ミゲル・トーレス・チレの公式ページの所有畑の紹介ページにこんな地図がありました。
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チリの全産地に畑を持ってるのかと思ったら、チリの代表的な産地を紹介しているだけでした。ミゲル・トーレス・チレの所有畑は、やはりクリコーやマウレ中心でした。イタタ・ヴァレーはいいとして、なんだかすごく南方にも畑を持っていて、寒すぎてブドウが育つのか心配になります。


ラベル平面化画像。
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う~ん、やっぱり「Carmenére」が気になる(笑)。スペイン人らしい間違いと言えばそうなんですが。


さあ、抜栓。
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キャップにはシンボルマーク(リャマ? アルパカ?)。

コルク平面化。
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Alc.13.5%。(pH:4.53、Brix:7.3)
少し赤味の濃いガーネット。
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黒ベリー、スモーキーな香り…カフェ、ダークチェリー。
シダっぽいのは樽香かな。
辛口アタック。
珍しくソフトな酸を感じますね。
まろっとまろやかながら厚みのあるストラクチャー。
喉越しから余韻で、ほどよいタンニンの収斂性を楽しめます。

上等感はないですが、十分おいしいです。
カルメネールとしても合格点。


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Miguel Torres Chile
Santa Digna Cruz de los Andes
Carmenére Gran Reserva 2019
RRWポイント 92点