AOCグリニャン・レ・ザデマールGrignan-Les-Adhémar)をいただきます。南部ローヌの北端にあるこのAOCはお初になりますので、ひとつ課題クリアってことで。ところで、このAOCはかつてコトー・デュ・トリカスタンCoteaux du Tricastin)と呼ばれたもので、2008年に起きたトリカスタン原子力発電所の放射能漏れ事故の影響により、風評被害を避けるため2010年に名称変更になったものです。この原発事故、調べてみると結構ヤバかったみたいですね。当時日本では東電や原発行政に忖度してマスゴミはあまり大きく報道しなかったようで記憶にある人は少ないんじゃないでしょうか。そんなことも考えながらいただくとしましょう。(笑)

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作り手は、ヴィニュロン・アルデショワ(Vignerons Ardéchois)という地域最大の協同組合で、1967年に創業、現在1000以上の生産者が参加し総計6000haもの畑をカバーしています。

公式ページはさすが大手と言う感じの雰囲気ですが、ワイン情報は極少。

セパージュはこう。
・シラー
・グルナッシュ
比率がわかりません。熟成はインポーター情報でステンレスタンクで6ヶ月。
AOCグリニャン・レ・ザデマールは赤・白・ロゼがありますが、赤の規定では主要品種がシラーとグルナッシュとなっています。主要品種で70%以上、シラー単体は30%以上入れないといけないことになってます。先に書いてあるシラーが順当に半分以上入ってるんでしょうね。補助品種はサンソー、カリニャン、ムールヴェードル、マルスランで、単独で15%を超えず、補助品種合計で30%を超えてはいけません。(主要品種70%の裏返しですね。)

作り手訪問。っていうか、すごくでかい企業のような風情です。
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アルデシュ県南部のルオム(Ruoms)というところにあります。社名が「アルデシュのワイン生産者(Vignerons Ardéchois)」ですからね。

南部ローヌを俯瞰してAOCグリニャン・レ・ザデマールや作り手の所在を確認。
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例のトリカスタン原子力発電所の場所も記しました(笑)。いつも使ってる地図を左側にインポーズして参考にしています。
この地図、AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(AOC Côtes-du-Rhône-Villages)の範囲を見るのにいい地図だと思って、ケランヌやラストーなんかを削除・修正しながら使っていましたが、「Villages」のあとに地名を名乗ることができる所が近年増えていて、さすがに参考にするには少々古すぎたようです。
AOC Côtes-du-Rhône-Villages ~のように補足的地理的呼称(Dénominations Géographiques Complémentaires)がつくのが 16 あると以下を上げていましたが、実はいつの間にか6つ増えていて現在 22 あるそうです。

・Côtes-du-Rhône-Villages Chusclan
・Côtes-du-Rhône-Villages Laudun
・Côtes-du-Rhône-Villages Massif-d'Uchaux
・Côtes-du-Rhône-Villages Plan-de-Dieu
・Côtes-du-Rhône-Villages Puyméras
・Côtes-du-Rhône-Villages Roaix
・Côtes-du-Rhône-Villages Rochegude
・Côtes-du-Rhône-Villages Rousset-les-Vignes
・Côtes-du-Rhône-Villages Sablet
・Côtes-du-Rhône-Villages Séguret
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Gervais
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Maurice sur Eygues
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Pantaléon-les-Vignes
・Côtes-du-Rhône-Villages Signargues
・Côtes-du-Rhône-Villages Valréas
・Côtes-du-Rhône-Villages Visan

追加された地名と言うのが以下の6つです。追加された時系列で挙げます。

<2012年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Gadagne

<2016年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Sainte-Cécile
・Côtes-du-Rhône-Villages Suze-la-Rousse
・Côtes-du-Rhône-Villages Vaison-la-Romaine

<2017年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Andéol

<2020年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Nyons

2020年って、つい最近も追加があったんですね。AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュは南部ローヌ(Vallée du Rhône Sud / Méridional)にしかなく、北部ローヌ(Vallée du Rhône Nord / Septentrional)にはありません。そしてどんどん進化していってるようです。南部ローヌの最新情報に目が離せませんね。

しかし…
南部ローヌにとっては微妙な位置にあるトリカスタン原子力発電所。行ってみました(笑)。
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なんと、Google Mapではボカシが入ってます。上空写真も拡大しても高解像度になりません。なんだ、なんだ? ヤバそうな雰囲気がプンプンします。
2008年の放射能漏れ事故を調べてみました。2008年7月、天然ウランを含むウラン溶液18,000リットルが誤って放出され地面に漏れてしまったとのことで、ガフィエール川(Gaffière)とロゾン川(Lauzon)で高濃度のウランを検出。これらの川はカナル・ド・ドンゼール=モンドラゴン
(Canal de Donzère-Mondragon)を通じてローヌ川に合流しています。当局は川からの飲用水と農業用水の使用を禁止、この他にも水泳やウォータースポーツ、釣りも禁止されました。その後、約100人の従業員が、停止した原子炉から漏れ出した放射性粒子によって被曝していたそうです。ただ事ではなかったみたいですね。
フランスでは59基もの原発が稼働しており、総電力の80%を原子力に頼っている状態ですが、フランス政府は原子力発電所の運営を原子力開発会社大手アレバ(AREVA)というのに丸投げで任しており、アレバの言うことも鵜呑みの状態だそうです。アレバの幹部はこの事故後、「健康や環境への被害はない」と発表しているそうです。ああ、良かった…ってならんわ!!
この原発と同じ名前のAOCコトー・デュ・トリカスタン(Coteaux du Tricastin)を名称変更したのが今日のワインですが、風評被害という理由もわかりますが、それ以上に南部ローヌのワインのヤバさを隠そうとするための名称変更であったような気がしてなりません。(笑)

今日の作り手はアルデシュ県(Ardèche)にあるだけあって、主力は IGP Ardèche だそうで。
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最後に、IGPアルデシュをGoogle Map上で見ておきます。南部ローヌに属する県南部を特に IGP Ardèche-Coteaux de l'Ardèche と言うようですね。


エチケット平面化画像。
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裏ラベルは剥がした跡がありますが…

インポーターシールがこんな具合でした。これはいけません。
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おっと、安定剤(アカシア)入り! まあ、安かったですからね。


さあ、抜栓。
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まあ、無印ですわな。

コルク平面化。
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ノマコルクでした。

Alc.12.5%。(pH:4.49、Brix:6.4)
ガーネット。
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黒ベリー、カシス、黒胡椒。
辛口アタック。
酸味は邪魔ではないんですが、しっかりそこにあるって感じ。
タンニンも効かせながらバランスは悪くないですが、
奥行きや立体感は正直弱いですね。

軽いローヌが味わえて満足ではあります。
放射能と安定剤(アカシア)入りですが。(笑)


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Vignerons Ardéchois
Le Grand Devès
Grignan-Les-Adhémar 2019
RRWポイント 88点