コート・デュ・ローヌのちょっといいやつ、AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(AOC Côtes du Rhône Villages)には、補足的地理的呼称(DGC=Dénominations Géographiques Complémentaires)として村名がつけられるAOCがあって、さらにワンランク上だと思われます。AOCケランヌ(AOC Cairanne)のように、このDGC付きヴィラージュから単独AOCに格上げ(2016年)になるものがあるくらいですから。しかし、あんまり見かけないんですよね~。と思っていたそんな折、AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ヴィザン(AOC Côtes du Rhône Villages Visan)というのをスーパーの店頭で発見。思わずゲットです。

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作り手はボワイエ家(Boyer)という昔からのブドウ栽培農家で、テンプル騎士団の要塞兼農園だったというこのヴィザンにあるドメーヌを1989年に手に入れて再興させました。ワイナリー自体は1978年にシュズ・ラ・ルース(Suze-la-Rousse)という隣の村に設立されています。日本のインポーターのサイトの解説では、ヴィザンではまだまだ元詰めをする生産者は少なく栽培されたブドウのほとんどは協同組合に買い取られている状況の中、30年に渡りドメーヌ元詰めを行ってきたドメーヌ・ド・ラ・バスティードの功績は大きいということだそうです。


公式ページは質素な感じですが(笑)、しっかりしたものがあります。

しかしながら、ワイン情報は貧弱。辛うじて今日のワインの2017だけ載ってました。
・シラー 40%
・グルナッシュ 40%
・ムールヴェードル 20%
インポーター情報では2019も同じセパージュでした。コンクリートタンクで8ヶ月の熟成のようです。AOCの規定では、グルナッシュ40%以上、シラー+ムールヴェードル25%以上なので、シラー多めって感じですね。

さあ、作り手訪問。ヴィザンのコムーネ、集落から車で7分の所にあります。
Bastide01
古そうですが、さすがテンプル騎士団、しっかりした建物のようです。

ヴィザンのテロワールを感じるべく、少し離れて畑の雰囲気も撮ってみました。
Bastide012
石の多い土壌で南ローヌらしい感じがします。


AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュは南部ローヌ(Vallée du Rhône Sud / Méridional)にしかなく、北部ローヌ(Vallée du Rhône Nord / Septentrional)にはありません。いつもネットで拾ったこの地図を使って位置関係の確認をしていました。「Visan」は18番。
Rhone_Sud_B
AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(AOC Côtes-du-Rhône-Villages)の名称までカバーしたちょうどいい地図がないので、ケランヌやラストーなんかを削除・修正しながら騙し騙し使っていましたが、「Villages」のあとに地名を名乗ることができる所が近年増えていて、さすがに参考にするには古くなりすぎたようです。

この地図をベースに、AOC Côtes-du-Rhône-Villages ~のように補足的地理的呼称(DGC=Dénominations Géographiques Complémentaires)がつくのが 16 あると、過去には以下を挙げていましたが、実はいつの間にか6つ増えていて現在 22 あるそうです。

<2012年までのDGC付き16ヶ村>
・Côtes-du-Rhône-Villages Chusclan
・Côtes-du-Rhône-Villages Laudun
・Côtes-du-Rhône-Villages Massif-d'Uchaux
・Côtes-du-Rhône-Villages Plan-de-Dieu
・Côtes-du-Rhône-Villages Puyméras
・Côtes-du-Rhône-Villages Roaix
・Côtes-du-Rhône-Villages Rochegude
・Côtes-du-Rhône-Villages Rousset-les-Vignes
・Côtes-du-Rhône-Villages Sablet
・Côtes-du-Rhône-Villages Séguret
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Gervais
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Maurice sur Eygues
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Pantaléon-les-Vignes
・Côtes-du-Rhône-Villages Signargues
・Côtes-du-Rhône-Villages Valréas
・Côtes-du-Rhône-Villages Visan

追加された地名と言うのが以下の6つです。追加された時系列で挙げます。

<2012年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Gadagne

<2016年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Sainte-Cécile
・Côtes-du-Rhône-Villages Suze-la-Rousse
・Côtes-du-Rhône-Villages Vaison-la-Romaine

<2017年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Saint-Andéol

<2020年追加>
・Côtes-du-Rhône-Villages Nyons

2020年って、つい最近も追加があったんですね。どんどん進化していってるようです。この中からまた単独AOCが生まれることでしょう。南部ローヌの最新情報に目が離せません。


ヴィザン周辺地図で近隣との位置関係を見てみます。
Bastide02
実は、ヴァンソブルや、ケランヌ、ラストーといったヴィラージュからの昇格組AOCに囲まれています。ヴィラージュ+DGCも周辺に密集していますね。

南ローヌ全体を俯瞰するとこんな感じです。
Rhone_Sud_Meridional真Villa
ヴィザンを書き込みました。今後もヴィラージュ+DGCを見つけたらお試しして、この地図に書き足していこうかと思います。


エチケット平面化画像。
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裏ラベルはインポーターの完全貼り替えですね。表のドメーヌのイラスト(上)は貧相ですが、右下に立派な建物のイラスト+「VISAN」の文字があります。こんな塔はドメーヌにはなかったので、これはどこだろうなと気になりました。

ヴィザンの集落を探し回ったらありました。町の中心部にあった教会です。
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サン・ピエール(Saint-Pierre)教会と言うそうです。エチケットのイラストは間違いなくこれですね。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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汎用品ですが、DIAM3? DIAM5?

Alc.14.5%。(pH:4.04、Brix:7.3)
濃いガーネット。
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黒ベリー、カシス。
メトキシピラジンの青っぽさも感じます。
辛口アタック。
さほどの厚みは感じないんですが、まとまりよい感じです。
バランスの妙とでもいうんでしょうか。
喉越しで若い酸とタンニンの収斂性が加勢します。
余韻もあっさりなんですが、
やっぱりいいバランスで満足できます。

熟成させたら化けるんじゃないって気がする味です。
村名付きヴィラージュの面目躍如じゃないでしょうか。


*****


Domaine de la Bastide
Côtes du Rhône Villages Visan 2019
RRWポイント 90点