ロワールの上流域、サントル・ニヴェルネ(Centre Nivernais)の銘酒プイィ・フュメ(Pouilly-Fumé)をいただきます。コストコの店頭で適当に選んだのですが、調べてみるとこの作り手、サンセールのテロワールを世に知らしめたソーヴィニヨン・ブランの単一区画醸造を最初に行ったパイオニアだそうで、フランス歴代の大統領や国外の政治家もこぞって飲んでいるそうです。

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作り手は、ジットン・ペール・エ・フィス。1945年、マルセル・ジットン(Marcel Gitton)さんによって設立された家族経営のドメーヌです。日本のインポーターの紹介が詳しいのですが、今でこそ当たり前となった、それぞれの土壌の個性(サンセールは主に3種~15種類に分類されるという土壌の多様性で知られる。)を活かした区画ごとの醸造をこの地で初めて実践したのが初代のマルセルさんで、1981年から現当主として引き継ぐ息子のパスカル(Pascal Gitton)さんも、テロワールごとの個性をさらにクリアに表現するため、当時としては珍しかった Demi-Muid(600リットル樽)を導入し、その後世界的な名声を獲得するに至るそうです。


公式ページのURLが「gitton.blog」です。ブログ? 「gitton.fr」もありますが動きません。

確かにサイト自体の作りがブログっぽいので(笑)内容も少々貧弱ながら、ワイン情報は最低限ありました。
・ソーヴィニョン・ブラン 100%
「機械収穫」とはっきり書いてますね。正直でいいです(笑)。自然酵母による発酵、熟成はステンレスタンクで6ヶ月だそうです。30haを超える所有畑の大半はサンセールですが、プイィ・フュメの畑も 7.5ha 持っているとのことで、今日のワインはそこからになります。場所までは特定できませんが、北西向きの斜面(傾斜20~35°)で樹齢は45年。土壌はやっぱりのキンメリジャンの泥炭土壌(Marne Kimméridgienne)です。


ロワールではブラン・フュメ(Blanc Fumé)とも言われるソーヴィニョン・ブランです。なので、AOC Pouilly-FuméAOC Blanc Fumé de Pouilly と表記しても構いません。
SauvignonB
2013年のDNA分析では、Savagnin=Traminer と何らかの交配種だと判明しているようですが、Savagnin=Traminer という品種自体が具体的な存在が未確認らしく、サヴァニャン・ブラン(Savagnin Blanc)と混同しているような解説もあって情報は混沌としています。(サヴァニャン・ブランは別名トラミナーで、その突然変異種から、Savagnin Rose ≒ Gewürztraminer という関係もあって、さらに話は混迷を極めますのでここでは詳述しません。笑)
しかし、ソーヴィニョン・ブランのように Savagnin=Traminer を親とする品種は多く、シュナン・ブラン、デュラ(Duras)、トゥルソー(Trousseau)ほか無数にあります。こんな世界中に広まっている国際品種、早く解明されないものでしょうか。
※最近のデータでは母方が「サヴァニャン・ブラン(Savagnin Blanc)」で確定のようです。父方は依然不明…。


サンセール近くにある作り手を訪問します。
Gitton01
ストビューではうまく撮れませんが、大きな敷地・建物は奥の方にあります。

少しズームアウトして、近隣との位置関係を見てみましょう。
Gitton02
サンセールの南側、車で10分ぐらいのところ、メネトレオル・ス・サンセールという町にあります(Ménétréol-sous-Sancerre)。東側、ロワール川を越えるとAOCプイィ・フュメ(AOC Pouilly-Fumé)のエリアになります。また、サンセール市街の北側にはパスカル・ジョリヴェが見えますね。


AOCプイィ・フュメ、AOCサンセールなどの位置関係を、やはりこの地図で見てみましょう。
(ロワール渓谷のワインの公式ページ、「VINS DU VAL DE LOIRE」から)
Sancerre00
AOCごとの赤・白・ロゼ表示の通り、プイィ・フュメやカンシー(Quincy)は白だけというのがわかります。サンセール他には大抵赤もロゼもあります。

やはり、恒例のGoogle Map転記を敢行しています(笑)。ドメーヌ位置もご確認を。
Loire_Centre-Nivernais01
サントル・ニヴェルネ(Centre Nivernais)ってフランスでは言わないのか、日本の解説書でしか見ないんですよね。サントル(Centre)は真ん中なので、まさにフランスのド真ん中という意味はわかります。ニヴェルネ(Nivernais)はヌヴェール(Nevers)周辺の昔のフランスの地方名で、現在ではニエーヴル県(Nièvre)に相当します。

これが中央フランスのワインの公式ページ。ここでは「Centre-Loire」と言ってます。

サントル・ロワール。これも個人的には変です。ロワールの真ん中じゃないから…。やっぱり、フランスの真ん中(Centre de la France)っていうのが一番正しい気がします。(笑)


ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
ひと筋縄ではいかないロワールの全体像が見られていい地図だと思います。

この地図の出典は、ロワール渓谷のワインの公式ページというここからです。

わかりやすくていいサイトです。


エチケット平面化画像。
IMG_5958
畑の場所でしょうか、プイィ・シュル・ロワール(Pouilly-sur-Loire)と記されています。

AOCプイィ・フュメは以下のINAOの地図のように7つのコミューンが対象です。
PouillyFume01
プイィ・シュル・ロワールはロワール川沿いの一番中心となるコミューンですね。また、同じ対象エリアでシャスラ(Chasselas)100%で作ったワインは AOCプイィ・シュル・ロワールAOC Pouilly-sur-Loire)を名乗ります。


さあ、抜栓。
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ドメーヌ名入りですね。コルクはこのドメーヌ名x2なので平面化はしません。

Alc.12.5。(pH:3.64、Brix:5.3)
濃いめのイエロー。
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黄桃、ライム。出汁的な香りも。
甘ったるさを想像させる辛口アタック。
糖度は低いんですけどね。
ネーブルのような味わい。
ねっとりとしたコクもある。
これが例のミネラル感と言えなくもないですね。
レモン系の酸がチラチラ出てきていい感じです。

やはり、ロワールのソーヴィニョン・ブラン。
新世界のそれとはまた違う貫禄がありますね。


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Gitton Père & Fils
Clos Joanne d’Orion
Pouilly-Fumé
 2018
WWWポイント79点



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