おっ、ジュラの赤か~と店頭で眺めていると、店員さんも飲んで美味しかったとおススメのセールストーク。こりゃあ、買わないわけにいかなくなりました(笑)。ここは新しく出来たワインショップで、あまり見かけないワインが置いているので最近は定期的に偵察しています。

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作り手は、エチケットにあるようにジェローム・アルヌー(Jérôme Arnoux)さん。ラ・カーヴ・ド・ラ・レーヌ・ジャンヌ(La Cave de la Reine Jeanne)が元のブランド名で創業は1997年です。ワイナリー名もル・セリエ・デ・ティエルスリーヌ(Le Cellier des Tiercelines)という名前ですが、2012年から醸造を任されていたジェローム・アルヌーさんが2019年にすべての権利を買い受け、現在は自身のワイナリーとして運営しています。このワインのエチケットのように、いずれ自身の名前「ジェローム・アルヌー」に改名して前面に押し出していくんでしょうが、裏ラベルにはまだ「ル・セリエ・デ・ティエルスリーヌ」表記が残っていますね。

このワインを買ったのはニューヨークに1号店のある「The Winery」というところの3号店になる「The Winery Kyoto」。2店目は順当に東京なのですが、3店舗目が京都店(2022年2月オープン)という何とも面白いところです。ジュラのワインは何年も前からニューヨークのソムリエ達の熱狂的な支持を得ているそうです。白の方が流行ってるようですが、このお店のお勧めはピノ・ブレンドのこの赤なんだそうで。

公式ページはどうやらなさそうです。残念。facebookは見つかりました。

ワイン詳細はインポーターやショップ情報に頼ります。

・ピノ・ノワール 1/3
・プルサール 1/3
・トゥルソー 1/3

3種均等にブレンドしています。ワイン名の「Friandise」はキャンディーの意味で、味が何となく想像できますね。ブドウ全量の50%が除梗なし(全房)です。野生酵母で発酵。清澄・ろ過なし。SO2使用は最小限。ヴァン・ナチュールに分類されるワインですね。

一応、ピノ・ノワール、プルサール、トゥルソーの外観を見ておきましょう。
Pinot_Noir_Poulsard_Trousse
ピノ・ノワール はジュラ地方では「グロ・ノワリアン(Gros Noirien)」というシノニムがあります。シャルドネのジュラでのシノニム「ムロン・ダルボワ(Melon d'Arbois)」と一緒に覚えておきましょう。
プルサール は現地では「Plousard」と綴られたりします。プールサールかプルーサールかってことでしょうが、日本語ですとどっちもプルサールでいけそうです(笑)。果皮が薄く、色素も少なく、黒ブドウと言ってもオレンジ色のクリアな赤ワインになります。
トゥルソー は正式名称「Trousseau Noir」です。起源はジュラにあると考えられるローカル品種、のはずですが、世界で 1,263ha ある栽培面積の内、9割以上を占める 1,163ha がポルトガルにあります(2016年)。ポルトガルでは「Bastardo」と呼ばれ、ポートワインやマデイラなどの酒精強化ワインになっています。ジュラの品種がなぜに? 謎です。

以上この3品種が、AOC Arbois や AOC Côtes du Jura の赤ワインの主要品種になり、80%以上が主要品種でないといけません。赤ワインの補助品種はなんと、白ワインの主要品種のシャルドネ、サヴァニャン(Savagnin)で、白ワインの補助品種はこの逆の、ピノ・ノワール、プルサール、トゥルソーという面白い規定になっています。

さあ、作り手訪問。アルボア(Arbois)の町のど真ん中。ワインもAOCアルボアですし。
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店舗とカーヴが少し離れています。カーヴは、アルボア市街地の屋敷の地下にアーチ型の支柱が整然と並ぶゴシック様式の美しいもの。14世紀に作られたこのカーヴは現在も建設当時のまま残されているんだそうです。

ジュラを俯瞰する地図で位置関係を見ておきましょう。アルボアを見つけてください。
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今日のワインは「AOC Arbois」です。地図にも書き込んでいますが、このAOCは、赤・白・ロゼあり。Vin Jaune(黄ワイン)、Vin de Paille(藁ワイン)もあります。
ジュラのすぐ東側はジュラ山脈(Massif du Jura)があり、スイスとの国境を成しています。西側はと言うと地図にギリギリ入っていませんが、ブルゴーニュが同じくらいの緯度で並走している感じです。ジュラの南北はちょうどボーヌからマコンの町に当たる感じです。


エチケット平面化画像。
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ワイン名はネックのシールという変わったパターン。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.13%。
超クリアなルビー。オレンジ味もありあり。
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フランボワーズ、チェリー、アセロラ。
鉄っぽさもフッと感じます。
甘み思わせますが…辛口アタック。
果実味とフレッシュネス満載ながら、
かすかな苦味様の複雑味がいい仕事してくれます。
あとで薬草っぽさがフッときますが、
それもいい個性と思わせるほどにバランスよく、
余韻、フィニッシュへと流れるように進みます。

ピノっぽいけど、ピノじゃない…。
ピノのうまさの次元を超えたポテンシャルを感じます。


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Le Cellier des Tiercelines
Jérôme Arnoux / La Cave de la Reine Jeanne
Friandise 2019
Arbois
RRWポイント 93点