AOCフィエフ・ヴァンデアン・ブレム(Fiefs Vendéens Brem)からのピノ・ノワールです。こんなワインを試すのは、このところの高騰もあってブルゴーニュ以外の美味しいピノ・ノワールを探しているからで、フランス国内でも各所でピノ・ノワールは作られていますので結構楽しんで探しています。またこれは、「知識としては知っているが飲んだことがないAOC」でもあります。一応、ロワールに分類されるようですから後ほどまとめておきましょう。

IMG_8517
作り手のドメーヌ・サン・二コラは、1960年に先代パトリス・ミションさんが始めた家族経営のワイナリーです。息子のティエリー・ミション(Thierry Michon)さんが現当主となってから、近代的なワイナリーを建設、ビオディナミも実践し、1995年には全所有畑が ABマーク、Demeter、Biodyvin、Ecocert の認証を受けています。マイナーな産地ですが各方面で評価は高いようです。産地の「フィエフ・ヴァンデアン(ブレム)」は、VDQSから2011年にAOCとなっています。
* VDQS(Vins Délimités de Qualité Supérieure)とは、2011年まであったフランスのワインの規格で、2011年に全ての産地がAOCに昇格し、事実上廃止されています。(EUのワイン法にこれに当たるカテゴリーがなかったため廃止になりました。)

公式ページはグッド。内容充実。メンテ(facobookやブログの更新)もされています。

ワイン情報は最新ヴィンテージの2017年のデータシートのみでした。

・ピノ・ノワール 100%

ビオディナミによる栽培、手摘み収穫、完全除梗、1~2年落ちのオークの大樽で12ヶ月の熟成です。

ドメーヌ訪問。きれいなカーヴが見えますが、ストビューでは近づけませんでした。
Saint_Nicolas01
サーブル・ドロンヌ(Les Sables-d'Olonne)という大西洋に面した海辺の町のすぐ東隣のリル・ドロンヌ(L'Île-d'Olonne)という町にあります。車で10分で海岸に出られるくらい海に近いので、今日のワインの AOCフィエフ・ヴァンデアン・ブレム(Fiefs Vendéens Brem)は気候や土壌が海の影響を強く受けているようです。フィエフ・ヴァンデアン~と名の付くAOCは5ヶ所あるんですが、それぞれの場所のテロワールは異なると思われ、AOCフィエフ・ヴァンデアンという名前で一括りにはできなさそうな印象を受けます。

さあ、AOCフィエフ・ヴァンデアンってどこやねん?ということですが、ロワール渓谷のワインの公式ページ「VINS DU VAL DE LOIRE」のインタラクティブ地図で見てみるとペイ・ナンテ(Pays Nantais)の南側にかろうじて載っていることがわかります。
Muscadet03
フィエフ・ヴァンデアンのエリアをクリックしても何も出てきません。オマケ程度の扱いですね。

INAOの地図で場所を確認するとこんな感じ。
INAO_Fierfs_Vandeens
フィエフ・ヴァンデアンの5地域はヴァンデ県(Vendée)にあり、「Fiefs Vendéens」が「ヴァンデ県の領地」という意味なのも合点がいきます。ナント(Nantes)のあるロワール・アトランティック県(Loire Atlantique)の隣(南側)の県になりますが、どちらもペイ・ド・ラ・ロワール地域圏(Pays de la Loire)という同じ地方に属しますので、ロワールの一員という扱いのようです。

以上、ペイ・ナンテ地区の飛び地のような AOCフィエフ・ヴァンデアン ~(AOC Fiefs Vendéens ~)ですが、後ろにコミューン名をつけて5ヶ所に分れます。単なる「AOC Fiefs Vendéens」というのはありません。コミューン名付きの以下の5つになります。

・Fiefs Vendéens Brem(フィエフ・ヴァンデアン・ブレム)
・Fiefs Vendéens Mareuil(フィエフ・ヴァンデアン・マルイユ)
・Fiefs Vendéens Chantonnay(フィエフ・ヴァンデアン・シャントネ)
・Fiefs Vendéens Pissotte(フィエフ・ヴァンデアン・ピソット)
・Fiefs Vendéens Vix(フィエフ・ヴァンデアン・ヴィックス)

AOCフィエフ・ヴァンデアンは、赤・白・ロゼが認められています。白ワイン主体のペイ・ナンテに分類されてるのがやはり違和感ですね。

<赤>
主要品種:カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ネグレット(Négrette)
補助品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、ガメ

<ロゼ>
主要品種:ガメ、ピノ・ノワール
補助品種:カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ネグレット
※Fiefs Vendéens Brem はグロロー・グリ(Grolleau Gris)も使えます。

<白>
主要品種:シュナン・ブラン
補助品種:シャルドネ
※Fiefs Vendéens Brem はグロロー・グリ(Grolleau Gris)も使えます。
※Fiefs Vendéens Vix はソーヴィニョン・ブランも使えます。


AOCフィエフ・ヴァンデアンはフランス全体のどのあたりかというとこんな感じ。
フランス産地
緯度的にはブルゴーニュあたりと同じくらいですかね。

上のフランス地図の四角部分をGoogle Mapで拡大、AOC Fiefs Vendéens を書き込みます。
Fierfs_Vandeens
先ほどのINAOの地図でお気づきの人がいればすごく偉いです。注意深く見てみると、フィエフ・ヴァンデアン・ピソット(Fiefs Vendéens Pissotte)の対象エリアはピソット(Pissotte)のコミューンのみとなっており、そこに連なる3つのコミューンは「ひとかたまり」で同じエリアなのかと思えば、少し離れたフィエフ・ヴァンデアン・ヴィックス(Fiefs Vendéens Vix)の方に属しています。つまり、フィエフ・ヴァンデアン・ヴィックスは分断されて2ヶ所あるということです。これ、大抵のフランスAOCの解説書は間違ってますので、すごい新事実って気がします(笑)。

対象コミューンをまとめると…。

<AOC Fiefs Vendéens Brem
Brem-sur-Mer
・Bretignolles-sur-Mer
・L'Île-d'Olonne
・Olonne-sur-Mer
・Vairé

<AOC Fiefs Vendéens Mareuil
・Chaillé-sous-les-Ormeaux
・Le Champ-Saint-Père
・Château-Guibert
・La Couture
Mareuil-sur-Lay-Dissais
・Rives de l'Yon
・Rosnay
・Le Tablier

<AOC Fiefs Vendéens Chantonnay
Chantonnay

<AOC Fiefs Vendéens Pissotte
Pissotte

<AOC Fiefs Vendéens Vix
・Auchay-sur-Vendée
・Longèves
・Le Poiré-sur-Velluire
   ------------------------
Vix

以上、マイナーなAOCを掘り下げてみました~の回でした(笑)。


エチケット平面化画像。
IMG_8464
裏ラベルのQRコードは公式ページではなく携帯専用の簡易サイトにつながり、ドメーヌの簡単な説明やアクセス地図が提供されています。頑張ってますね。

インポーターシールは微妙に重ねてありました。なぜに?
IMG_8463
これでもかのビオワイン、ビオディナミの認証マークです。


さあ、抜栓。
IMG_8512

コルク平面化。
IMG_8513

Alc.12%。
オレンジ褐変ありの濃いめルビーです。2011ですからね。
IMG_8516

フランボワーズ、リコリス、ダシ感も。
熟成か、樽から来るのか、スパイスっぽくも。
酸味がそこそこ主張する辛口アタック。
果実味しっかりあります。
奥行きのある複雑な味わいです。
かすかな苦味様の味もいいアクセント。
酸味が帰ってきながらですが、余韻に浸れます。
ちょこっとオリがありました。ビオっぽい。

ピノ・ノワールとしてなかなかのレベルですよ。
こんなのを探していきましょう。
ブルゴーニュに頼らなくていいように(笑)。


*****


Thierry Michon
Domaine Saint Nicolas
Cuvée Jacques 2011
Fiefs Vendéens - Brem -
RRWポイント 92点