元来「泡」が今ひとつ得意じゃないんですが(笑)、さすがに連日の熱波、良さげなスパーリングを探してみました。するとリカマンの店頭で面白そうなフランチャコルタのラインアップを発見。フランチャコルタはイタリアのスパークリングで初めてDOCG認定され、イタリアの発泡性ワインで「シャンパーニュ方式の瓶内二次発酵(Metodo Classico)」が義務づけられている数少ない最上級のスパークリングワインです。例によって一番お手頃なのを選びましたが(笑)。

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ラベルにPOPな擬人化された動物のイラストがあり、新しい作り手なのかな~と裏ラベルを見ると、「ジロラモ・コンフォルティ(Girolamo Conforti)」という生産者名が書かれています。なるほど今風のセカンドブランドかと思いちょっと調べてみると、フランチャコルタのエリアの11のワイン生産者が共同で立ち上げたフランチャコルタ専門のワイナリーで、2014年設立とかなり新しいところでした。

「Girolamo Conforti」ブランドのクラシックなフランチャコルタも出していますので、今日の「Ca’ de Pazzi」は別系統のカジュアルブランドのような位置づけなんでしょうね。
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このように店頭でフルラインナップ(スプマンテ・ブリュット、サテン、ロゼ、ミレジマート)が並んでいました。今日いただくのは一番左の普通の「BRUT」です(笑)。

フランチャコルタDOCGについてですが、16世紀からワイン造りをしていたロンバルディア州中央東側のフランチャコルタ地方で1950年代後半にスパークリングワイン「フランチャコルタ」が生まれたそうです。1967年にはDOCに認定され、1995年にDOCG化されました。DOCGになったのは割と新しいですね。イタリアで瓶内二次発酵が義務づけられている数少ないワインなのは前述の通りですが、その品質は「シャンパーニュに次ぐ」と世界的にも認められ、「フランチャコルタの奇跡」と称されるほど高く評価されています。


今日の「Ca’ de Pazzi」の単独の公式ページがありました。


ジロラモ・コンフォルティ(Girolamo Conforti)、本家のHPがこれです。シンプル~(笑)。

こっちのHPでは「Ca’ de Pazzi」には全く触れられていません。まあ、単独ページがあるからOKです。

・シャルドネ 90%
・Pinot Bianco(=ピノ・ブラン)10%

ピノ・ブランを使ってますが、シャンパーニュでいう、いわゆるブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)になるんでしょうか(笑)。(ちなみにピノ・ブランやピノ・グリはピノ・ノワールの突然変異種でDNAプロファイルはほぼ同じです。)
製法はHPに書かれるまでもなく、フランチャコルタDOCGの規定でだいたい決まってきます。手摘み収穫が規定です。(なんと2020年だけは新型コロナの影響で機械収穫が許されたとのこと。)除梗なしの全房をプレスします。これも規定。一次発酵(通常のワイン醸造)の後ブレンドを行い、糖と酵母等の混合物、リキュール・ド・ティラージュ(Liqueur de Tirage)を添加して、王冠で蓋をし瓶詰め(Tirage ティラージュ=伊:Imbottigliamento)します。その後オリと共に熟成され、いわゆる「瓶内二次発酵(伊:Seconda Fermentazione In Bottiglia)」に入ります。シャンパーニュの熟成期間(ノンミレジメ:15ヶ月)に対し、Franciacorta DOCGの規定では18ヶ月と少し長めです。
そして最後の工程、澱抜き(Dégorgement デゴルジュマン=伊:Sboccatura)になります。瓶のネックを冷凍し王冠を外すと氷結した沈殿物のみがはじき出されるというのが澱抜きです。と、なるんですが、その準備として、ピュピトル(Pupitre)と呼ばれる傾斜台に瓶を倒立させ、毎日回転させて、沈殿物(澱と清澄剤)を瓶口に集める動瓶(Rumeage ルミアージュ)という作業があります。(Giropallet という自動の回転台を使う場合もあります。)この澱抜きの直後、目減りした液量を補うとともに最終の糖度の調整(後述:表にまとめます。)を目的としてリキュールを加えます。これが加糖=ドザージュ(Dosage 加糖=伊:Dosaggio)です。このリキュールは「門出のリキュール(Liqueur d'Expédition)」という名前で知られていますが、イタリア語の解説を見ると「Sciroppo di Dosaggio(ドザージュのシロップ?)」などとも言うようです。このリキュールは通常リザーブワインなどをベースに作られますが、各セラーの秘密のレシピになっているようです。最後にセラーで寝かせたあと出荷となります。

フランチャコルタの規定はややこしいので表にまとめてみました。

使用品種ドザージュ残糖 (g/L)熟成期間
FranciacortaChardonnay最低50%Dosaggio Zero0~318ヶ月
(SpumantePinot NeroExtra Brut0~6

Pinot Bianco最大50%Brut0~12

Erbamat最大10%Extra Dry12~17



Sec (Dry)17~32



Demi Sec32~50
Franciacorta RoséPinot Nero最低35%Dosaggio Zero0~324ヶ月

Chardonnay最大65%Extra Brut0~6

Pinot Bianco最大50%Brut0~12

Erbamat最大10%Extra Dry12~17



Sec (Dry)17~32



Demi Sec32~50
Franciacorta SatènChardonnay最低50%Brut0~1224ヶ月

Pinot Bianco最大50%


FranciacortaChardonnay単一ヴィンテージDosaggio Zero0~330ヶ月
MillesimatoPinot Bianco85%以上Extra Brut0~6
(Rosé、Satènあり)Pinot Nero
Brut (Satèn)0~12



Extra Dry12~17
FranciacortaChardonnay(Spumante,Dosaggio Zero0~360ヶ月
RiservaPinot BiancoRosé, Satèn)Extra Brut0~6
(Rosé、Satènあり)Pinot Neroに準じるBrut (Satèn)0~12

Erbamat



※前述のドザージュ(Dosage=伊:Dosaggio)での調整により、Dosaggio Zero ~ Brut ~ Demi Sec などの糖度が決まります。
※フランチャコルタは通常はガス圧が5気圧以上ですが、サテン(Satèn)は5気圧以下で作る規定があります。サテンはいわゆるブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)なので、ガス圧を弱めることでさらにクリーミーさを強調しているということらしいです。
※シャンパーニュの瓶内熟成期間は、ノンミレジメ:15ヶ月、ミレジメ:3年(36ヶ月)です。フランチャコルタのミレジマートは逆に若干短めということですね。
注)この表、スマホ版で見ると「熟成期間」が切れるかもしれません。PC版推奨です。

さて、使用品種にちょこちょこ登場しているエルバマット(Erbamat)です。
Erbamat
エルバマットは16世紀からロンバルディアで栽培されてきた土着品種ですが、晩熟で酸が高く過去はあまり品質が高くないという理由でDOC/DOCGワインには使用が禁じられてきたといいます。それが2017年からフランチャコルタDOCGに上限10%とはいえ使用可能になったというから驚きます。土着品種を見直すという理由以外にも、気候変動で特性が変わりつつある現行使用品種の補正をするような意味合いもあるようです。ただ、現在のところ栽培面積も多くなく、がっつり使っている生産者はいないようですが。

ロンバルディア州ブレシア県エルブスコ(Erbusco)にあるジロラモ・コンフォルティ訪問。
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2014年創立にしてはパッとしない建物です。どこかのワイナリーの流用なか? フランチャコルタの公式ページにはこのワイナリーの紹介はちゃんと載っています。

フランチャコルタDOCG周辺の地図で位置関係を見てみます。イゼーオ湖が目印です。
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周辺もいろんなDOC/DOCGがありますね。まず、フランチャコルタDOCGとほぼ同じ範囲がクルテフランカDOCCurtefranca DOC)といい、赤・白のスティルワインのDOCになっています。1995年にDOCになった当時は Terre di Franciacorta DOC と呼ばれていましたが、2008年に改名されています。「フランチャコルタ」の名前の安売りをしたくなかったんでしょうね。ちなみに「クルテフランカ」はフランチャコルタの語源である「免税交易地域」を意味するラテン語クルテス・フランカ(curtes francae)から来ているようで、元は同じ意味のようですね。
少しベルガモ寄りに Scanzo / Moscato di Scanzo DOCG という甘口赤ワインのDOCGがあります。Moscato di Scanzo(Moscato Nero)という品種を使い Passito 製法で作られます。2002年にDOCになり、2009年にDOCG化しています。畑は18haしかなく、イタリアで最小のDOCGだそうです。覚えておきましょう。
この Moscato di Scanzo DOCG を内包して、Valcalepio DOC という1976年からの赤・白のDOCがあります。こことほぼ同じ範囲に Terre del Colleoni / Colleoni DOC という赤・白・ロゼ・泡・甘口と何でもありのDOCが2011年にできていて、ちょっとイタリアらしいカオスになっています。(笑)
一方、一部フランチャコルタのエリアとかぶるブレシア周辺が、Cellatica DOC です。1968年からの古いDOCでバルベーラと Marzemino という地元品種による赤のみのDOCです。さらにその Cellatica DOC と一部かぶっているのが Botticino DOC で、ここもバルベーラとMarzemino主体の赤のみのDOC。さらにここも1968年に一緒にDOCになってるといいますからもうわけワカメです。(補助品種が若干違いますが。)あと、少し離れて Capriano del Colle DOC というのがありますが、ここは1980年にできた赤・白のDOCです。
ちなみにですが、Franciacorta DOCG と Cellatica DOCをひっくるめた広域のIGP(Indicazione Geografica Protetta)が IGP Sebino と呼ばれています。イゼーオ湖(Lago d'Iseo)の別名がセビーノ湖(Sebino)です。なるほどですね。
※IGP(Indicazione Geografica Protetta)=IGT(Indicazione Geografica Tipica)

最後にロンバルディア州全体を俯瞰。先ほどのフランチャコルタ周辺の位置関係を把握。
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ロンバルディア州はローマに次ぐ大都市ミラノに注目が行きがちですが、ワイン産地としても実に多種多様です。真ん中の Franciacorta DOCG のみならず、北部山中の Valtellina Superiore DOCG(Chiavennasca=ネッビオーロ)や、ポー川流域の Oltrepò Pavese Metodo Classico DOCG(ピノ・ノワールの瓶内二次発酵スプマンテ)などメジャーなDOCGを抱えます。おっと、イタリア最小のDOCG、Scanzo(Moscato di Scanzo)DOCG も忘れてはいけませんね。


ラベル平面化画像。
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「Brut」なので残糖量は0~12g/Lになります。

インポーターシールは遠慮がちに裏ラベルを隠さず上の方に貼ってありました。
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おっと、CMCとアカシア入りです。たまにあるダブルパンチです。安ワインの定番安定剤という認識ですが、どうなんでしょうね。


さあ、抜栓。
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ミュズレやコルクはシンプルでした。

Alc.12.5%。
薄いキラキラゴールド。
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泡立ちを動画にて。


パイン、青リンゴ。
かすかなトースト香あり。
ライム系柑橘の風味もありますが、
バター的なリッチ感もあります。
ミネラル感やコクもあって満足度高いんですが、
これって、CMC・アカシアのお陰なんですかね。
でも美味しいんだから、まっ、いいか(笑)。


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Ca’ de Pazzi
Franciacorta Brut
Rhino
WWWポイント79点



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