このブログ、単なるテイスティング記録だけではなく、飲んだワインにまつわるバックグラウンドなど諸々を自分用のメモとする形で書いています。果てしないワインの世界をできるだけ網羅すべく日々いろんなワインを幅広く試そうとしています。つまりは「飲まなきゃ記事は書かない」というスタンスです。しかし、しかしです。今回も超例外的ではありますが、飲んでないワインで記事を書きます。(過去DRCなんかは飲まずに書いてますが。笑)ローヌのいくつかのAOCが気にはなってるんですが飲めていないので。今回はAOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズです。

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作り手はお馴染み、ポール・ジャブレ・エネ。そこが作るAOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズの天然甘口ワイン、ヴァン・ドゥ・ナチュレル(Vin doux naturel)です。

ポール・ジャブレ・エネは、1834年にさかのぼる歴史ある作り手です。2006年に、ボルドーのメドック格付け第3級、シャトー・ラ・ラギューヌ(Château La Lagune)を所有するフレイ家がオーナーとなり、オーナー兼醸造責任者のカロリーヌ・フレイ女史(Caroline Frey)が、シャトー・ラ・ラギューヌと共に切り盛りしています。ポール・ジャブレ・エネと言えば、パーカーおじさん100点ワイン、エルタミージュ・ラ・シャペルが有名ですね。

公式ページは前も見てますが、トップページに facebook のリンクがあるだけ。

エルタミージュ・ラ・シャペルの畑にあるチャペルとカロリーヌ女史の写真のみ。仕方がないのでインポーター情報ほかを頼ります。

・ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン 100%

発酵中のワインにブランデーなどアルコールを添加し発酵を止めて甘口ワイン(ヴァン・ドゥ・ナチュレル)に仕上げます。

使われるのがミュスカ・ブラン・ア・プティ・グランMuscat Blanc à Petits Grains)。
Muscat-Blanc-a-Petits-Grain
広い意味では、いわゆるマスカット(Muscat)です。イタリアでモスカート(Moscato)、スペインやポルトガルではモスカテル(Moscatel)と呼ばれるものです。ヨーロッパ種(Vitis Vinifera)であり、ワイン用のみならず生食用としても古くから広く世界中で栽培されています。実際は長い年月を経てたくさんの品種に分かれているので、300ものシノニムが世界に広がっています。粒が丸くて小さいという意味の「Muscat Blanc à Petits Grains Ronds」が今日のワインのブドウのフランスでのフルネームになります。

実は、AOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズには白だけでなく、赤とロゼのヴァン・ドゥ・ナチュレルも認められています。その場合のブドウは何なんだ?と気になりますが、なんとミュスカには変異種のグリやノワールが存在し、これらが使われるようです。
Muscat_Var
AOCの規定にも「Muscat à Petits Grains Rouges」と言う名前が出てきます。これはグリの方かな? いずれにせよ圧倒的に白の方が多いとは思いますが…。


北部ローヌのタン・レルミタージュ近くにあるポール・ジャブレ・エネ訪問。
PaulJabouletAine01
タン・レルミタージュはエルミタージュ(Hermitage)の畑のふもとの町でしたね。

さあ、AOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズのエリアを確認します。
Rhone_Sud_Meridional_FINAL_
以前から使ってる南部ローヌのAOC地図にもしっかり書き込んであります。

見にくいので、AOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ周辺を拡大します。
Rhone_Sud_Meridional_Magnif
付近のAOCとの位置関係がよくわかりました。ラストー(Rasteau)にもVDN(Vin doux naturel)がありますね。こちらは名前に rancio / hors âge がついたりもしますし、ブドウもグルナッシュ(ノワール / ブラン)が使われます。もともとVDNのAOCだったのですが、ラストーの赤が2010年に Côtes-du-Rhône-Villages Rasteau から昇格して追加されている形です。

AOCボーム・ド・ヴニーズという赤のAOCもあるので更に拡大して関係を見ます。
BdV_BIG
AOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズは、Beaumes-de-Venise とその南側の Aubignan(オーヴィニャン)が対象コミューンですが、赤のAOCボーム・ド・ヴニーズの方は、Beaumes-de-Venise とその北側の Lafare、La Roque-Alric、Suzette の3コミューンが対象コミューンになります。ボーム・ド・ヴニーズのコミューンが共通なので名前が似てしまいややこしいですね。
天然甘口ワイン(VDN)のAOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズは1945年に出来ていて、60年後の2005年に赤ワインのAOCボーム・ド・ヴニーズができています。歴史の差は歴然ですね。(赤ワインのAOCボーム・ド・ヴニーズは、それまでは「Côtes de Rhône Villages」名でした。)


店頭なのでエチケット平面化撮影はできません(笑)。
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そして、インポーターシールも剥がしたくても剥がせません(笑)。いずれ飲んでみたいものです。


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Paul Jaboulet Aîné
Muscat de Beaumes de Venise
Le Chant des Griolles 2019
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