ジェラール・ベルトランのAOCラングドックをいただきます。以前同じ作り手のAOCコルビエールを試しています。インポーターのうたい文句では、ラングドック・ルシヨンのプレミアムワインのパイオニアで自然派ワインの巨人なんて書いてます。お手頃ワインが多いラングドックやペイドックに中になあって、やはりそれなりにいいお値段していますので期待は高まります。

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父からコルビエールの畑(Château de Villemajou)を受け継いだブドウ栽培家でありながら、元ラグビー仏代表という異例の経歴を持ったジェラール・ベルトラン氏がラグビーを引退後、家族経営のワイナリーを設立したのが今日の作り手です。1975年のことのようです。ラングドック・ルシヨン各地に16ものシャトー/ドメーヌを持ち、畑の総面積は850haにも及ぶそうです。また、2002年来これらの畑のビオディナミ化を推し進めているそうで、なるほど「自然派ワインの巨人」なわけですね。

公式ページは、さすが大手といった雰囲気。

今日のワインの紹介、ハイコレクションというカテゴリーに入っています。上等ラインでしょうか(笑)。

・グルナッシュ
・シラー
・ムールヴェードル

セパージュはいわゆるGSMなんですが、データシートまであるのにパーセンテージが不明です。GSM(Grenache、Syrah、Mourvèdre)はそれぞれ個別に醸造されます。MLFあり。ブレンド後フレンチオーク樽にて15ヶ月の熟成をします。このワインはAOCラングドックと広域で、畑がどこか書かれていないので畑訪問はできそうにないです。

AOCラングドックの規定だけ書き出しておきます。後ろに補足的地理的呼称(DGC=Dénominations Géographiques Complémentaires)の付かない単なるラングドックです。(DGCが付くラングドックは微妙に規定が違ったりしますので。)

<主要品種・補助品種>
・主要品種:グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、Lladoner Pelut
 (※ Lladoner Pelut=Garnacha Peluda:スペイン原産のガルナチャの変異種)
・補助品種:カリニャン、サンソー、Counoise、グルナッシュ・グリ、Morrastel、Piquepoul Noir、Rivairenc、Terret Noir
・補助品種(5%に制限されるもの):Agiorgitiko、Calabrese、Marselan、Montepulciano、Œillade

<比率に関して>
・主要品種は、合計で50%以上
・シラー、ムールヴェードルは、合計20%以上
・カリニャンを入れた場合、グルナッシュと Lladoner Pelut は合計20%以上
・カリニャンは、40%以下
・サンソーは、40%以下
・以下の補助品種は合計20%以下:Counoise、グルナッシュ・グリ、Morrastel、Piquepoul Noir、Rivairenc、Terret Noir、Agiorgitiko、Calabrese、Marselan、Montepulciano、Œillade
・以下の補助品種は合計10%以下:Counoise、グルナッシュ・グリ、Morrastel、Piquepoul Noir、Rivairenc、Terret Noir
・以下の補助品種は作付面積の5%以下:Agiorgitiko、Calabrese、Marselan、Montepulciano、Œillade

一応書き上げましたが、辻褄が合ってるかさえ怪しい複雑さですよね。ここは主要品種だけ押さえて、補助品種は無視でいいでしょう(笑)。

作り手訪問。2002年に取得なので創業の地ではないようですが本拠地はここのようです。
Gerard-Bertrand01
シャトー・ロスピタレット(Château l'Hospitalet)という名前でホテルもやっています。周りの雰囲気も含めなかなか素晴らしいところです。公式ページによると、ここで作ってるワインはすべてAOCラ・クラープ(AOC La Clape)になっているようです。

AOCラ・クラープとAOCコルビエール(Corbières)の地図で場所を確認してみましょう。
Corbieres
確かにジェラール・ベルトランの本拠地はAOCラ・クラープにありますが、AOCラ・クラープの大部分はAOCコルビエールとオーバーラップしており、ギリギリAOCコルビエールとも言える場所ですね。
因みに、今日の作り手はAOCコルビエール・ブートナック(AOC Corbières-Boutenac)に創業の地の「Château de Villemajou」があります。地図上に示したのでご確認を。
また、AOCフィトゥー(AOC Fitou)もAOCコルビエールの範囲に含まれることに描いていて気づきました。AOCコルビエールって、ほんといろんな他のAOCとかぶってたんですね。ナルボンヌ近郊の小さなAOCですが、AOCラングドック・カトゥールズ(AOC Languedoc Quatourze)というのもAOCコルビエール範囲内です(笑)。

Google Mapに描き込んだラングドック・ルシヨン地図で全体の位置関係を把握。
Languedoc_Roussillon_NEW
AOCラ・クラープにあるジェラール・ベルトランの場所わかりましたね。実はこの地図、ラングドック・ルシヨンのAOCを網羅はしてるんですが、今日のワインの(単なる)AOCラングドックの範囲が今ひとつうまく表せてないんですよね。全域っちゃあ全域なんでしょうが…。

INAOの地図を拝借すると AOC Languedoc という全体を包括するAOCの範囲はこうです。
Languedoc-DC
これと先ほどのGoogle Mapと見比べて確認ください。AOCラングドックのエリアではあるものの、他のどのAOCにも属さないという部分が見受けられます。ベジエ(Béziers)の南側なんかがそんなエリアですね。
また、既存のAOCは全部AOC Languedocになるかと思うと、AOC Malepère だけがAOCラングドック対象エリアから外れたりしています。なぜだか考えてみましたが、おそらく、AOCマルペールのみ2007年にAOC昇格する前が、VDQS Côtes de Malepère であり、AOCよりワンランク落ちるVDQSだったため今も仲間外れになっているんじゃないかと想像します。
* VDQS(Vins Délimités de Qualité Supérieure)とは、2011年まであったフランスのワインの規格で、2011年に全ての産地がAOCに昇格し、事実上廃止されています。(EUのワイン法にこれに当たるカテゴリーがなかったため廃止になったそうです。)

今度は IGPペイ・ドック( Pays d'Oc)とAOCラングドックの対象範囲を比べます。
Languedoc_PaysdOc_INAO
INAOの地図で、左側に IGP Pays d'Oc、右にAOC Languedoc を置いています。まず、IGPの方は、ガール(Gard)県、エロー(Hérault)県、オード(Aude)県、ピレネー・ゾリアンタル(Pyrénées-Orientales)県の4県全域が対象です。対してAOCラングドックは対象コミューン(地図上の区画はコミューンです。)がかなり細かく決まっていることがわかります。まあ、これは普通によくあるIGPAOCの差ですね。
また、AOC Languedoc というのは、2007年まで AOC Coteaux-du-Languedoc と呼ばれたものが名称変更したもので、同時に、元々 AOC域内で AOC Coteaux-du-Languedoc~なんちゃらと呼ばれていたAOCが、単独名称のAOCや AOC Languedoc~なんちゃらというAOCに名称変更になっています。この「AOC Languedoc~なんちゃら」の「なんちゃら」というのが補足的地理的呼称(DGC=Dénominations Géographiques Complémentaires)です。
ひとつ気になるのは、このINAOの地図を見る限り、AOC Languedoc がルシヨン(Roussillon)地域(ピレネー・ゾリアンタル県)を含んでいることです。「AOCラングドック」=「ラングドック・ルシヨン」ってことになります。まあ、AOCルシヨンなんてのがないからいいのかな。(笑)
※ラングドック・ワインの公式ページなるものがあって、CIVL(Conseil Interprofessionnel des Vins du Languedoc)という団体が運営しています。ご参考まで。


エチケット平面化画像。
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自然派ワインの巨匠ですからね。ユーロリーフのビオワインです。と思うと、インポーターシールには安定剤(アカシア、メタ酒石酸)含有とあります。特にメタ酒石酸は日本の食品衛生法ではワイン以外の食品への使用が禁止されている物質です。いったい健康にいいんだか悪いんだか(笑)。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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ジェラール・ベルトランのエンブレム(x2)のみですね。

Alc.14.5%。
ガーネット。
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黒ベリー、スパイス。
複雑味、構造感はあり。
若干酸が出ているのが気になります。
お陰で一見よさげなバランスも惜しい感じになってきます。

そこそこおいしいんですが、
なぜか「安定剤」を見てしまうと辛口評価をしてしまします。


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Gérard Bertrand
Héritage Kosmos 888
Languedoc 2019
RRWポイント 91点