モルドバのワインをいただきます。モルドバ共和国は1991年独立の若い国家ですが、オスマン帝国やロシアの支配下だったり、ベッサラビア(地方)がルーマニアになったりと長い歴史で紆余曲折を経て現在に至ります。今はワインが基幹産業の非常に興味深い国です。白ワインが70%ですが、ルーマニアと共通の土着品種を持ちながら、国際品種が今や73%を占めるそうで、そういう意味で今日のピノ・ノワールなんかお試ししたくなるわけです。

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シャトー・プルカリ(Château Purcari)は、モルドバの3大産地のひとつシュテファン・ヴォーダ(IGP Ștefan Vodă)を代表する生産者であると同時に、モルドバでもっとも名高い作り手です。ラベルに1827年とありますが、ロシア皇帝ニコライ1世が1827年に発した特別布告を受け、ベッサラビア地方で最初の御用達ワイナリーとして設立されています。その後、プルカリの所有者にはモルドバのボヤール(貴族)であるダンチラ、クロットだけでなく、ドイツ人、ロシア人、フランス人などの外国人も名を連ねました。
1878年のパリ万国博覧会にて行われたブラインド・テイスティングにてフランス人専門家がボルドーの銘酒と信じて疑わなかったワインが実はプルカリの「Negru de Purcari」という赤ブレンドワインでした。ここで初めて金メダルを獲得したプルカリは以降ボルドーやブルゴーニュと同じくらい人気を博したそうです。以前試したモルドバワインのラダチーニ(1998年創業)とは歴史も格も違うようですね(笑)。

ちなみに何を隠そう私は、インポーターのアグリとそのラダチーニが与える「モルドバ・ワインマスター」なる称号を保持しています。ソムリエみたいなカッコいいバッジでしょう?
WineMaster
試験はテキスト見ながら回答するだけでもらえるバッチですが(笑)。

公式ページは充実しており、ルーマニア語と英語表示ができます。

ワイン紹介はショップ兼用ですが最低限の情報はちゃんとあります。

・ピノ・ノワール 100%

手摘み収穫。伝統的な製法。フレンチオークのバリックで6ヶ月の熟成をさせます。シャトー・プルカリでは樽は225Lのフレンチオークのバリックしか使わないそうです。しかしながら、前述のフラッグシップ「Negru de Purcari」もカベソー主体のボルドーブレンドというように国際品種が得意なのかと思いきや、ララ・ネアグラ(Rară Neagră)などの土着品種も守り続けているそうです。


シャトー・プルカリを訪問。ストビューがないのでHPなどから写真を拝借。
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実に立派な「シャトー」ですね。プルカリ(Purcari)はこの地方の小さな村の名前です。ウクライナとの国境になっているドニエストル川(Dniester)が近いです。(ウクライナを流れる大河ドニエプル川とお間違えなきよう。)

ズームアウトしてIGPシュテファン・ヴォーダ(Ștefan Vodă)を俯瞰します。
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モルドバの首都キシナウ(Chișinău)からプルカリまで車で2時間ほどの距離です。

モルドバ全体を周辺国と共に。IGPシュテファン・ヴォーダが一番小さそうです。
Moldova
黒海の周辺国と東欧諸国がわかるような地図をインポーズしてあるので位置関係おさらしておきましょう。ロシアのウクライナ侵攻のせいもあってこのあたりの地理に詳しくなってきました(笑)。

モルドバのIGP(Indicație Geografică Protejată)には以下があります。

・IGP Codru(コドゥル)
  ‐ 冷涼な中部、肥沃な黒色土壌(黒土:チェルノーゼム)
  ‐ 白ワイン(63%)

・IGP Ștefan Vodă(シュテファン・ヴォーダ)
  ‐ ドニエストル川と支流、標高低い(粘土ローム土壌)
  ‐ 赤ワイン(57%)

・IGP Valul lui Traian(ヴァルル・ルイ・トラヤン)
  ‐ 温暖な南部、ベッサラビア平原(Bessarabia)
  ‐ 赤ワイン(60%)

・IGP Divin(ディヴィン)
  ‐ ワイン・スピリッツ(ブランデー)のIGP
  ‐ モルドバ全域が対象(2回の蒸留、3年の樽熟成)


ラベル平面化画像。
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裏にはいろいろとルーマニア語で書かれていますがほぼHPと同じ内容。簡単な地図の他、QRコードや facebook のURLなどの情報が至れり尽くせりです。

インポーターアグリのシールは裏ラベルを隠してませんが別撮りしました。
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さあ、抜栓。
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コルク平面化。DIAM1です。
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Alc.13%。
濃いめのルビー。
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ラズベリー、カシス、スミレ。
辛口アタック。
果実味は抑えめ。
わりと厚み・複雑味あって貫禄も出てます。
いいバランスでフィニッシュまで楽しめました。

高級ピノ・ノワールの雰囲気が出て、さすがという感じ。
ネグル・デ・プルカリ(Negru de Purcari)が飲んでみたくなります。


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Château Purcari
Since 1827
Pinot Noir de Purcari 2020

Vin Roşu Sec
RRWポイント 92点