なんだこのボトルは? 上半分が赤ワインで下半分が白ワイン? …なわけはなくて、上半分が黒く塗られてるようです(笑)。ドイツのテーブルワインかと思いきや裏ラベルを見ると「Qualitätswein Rheinhessen」とあるので、g.U.(geschützte Ursprungsbezeichnung)のラインヘッセンということはわかりました。しかし、気になるのは「リヴァーナー(Rivaner)」という品種。ミュラー・トゥルガウのことらしいんですが、そのあたりを紐解きながらお試しすることにしました。

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レー・ケンダーマンは、1920年にモーゼル地方でワイン商を立ち上げたカール・レーさんが近代的な醸造技術を取り入れ自ら設立したワイナリーと、ケンダーマン・ワイナリーとが1997年に合併してできたものです。ドイツ各地でワイン作りをしていますが、本拠地はレーさんが立ち上げたワイナリーのあるライン川のほとり、ラインヘッセン側の町ビンゲン・アム・ライン(Bingen am Rhein)にあります。

公式ページはこれ。Black Towerというシリーズはここの看板ワインだそうです。

Black Tower のリースリングは載っていますが、リヴァーナーがありません。

と思ったら「Black Tower」専用サイトがありました。やっぱり看板ワインですからね。

こちらにはデータシート付きでリヴァーナーが載っていました。

・リヴァーナー(ミュラー・トゥルガウ) 100%

リヴァーナーのドイツ語のシノニムがミュラー・トゥルガウだと解説があります。今風の醸造をしています以外の情報はありません(笑)。辛口ではなく「中甘口」であることはわかりました。

これがミュラー・トゥルガウ。古くからありますが人工的に育成された交配種です。Muller-Thurgau_Rivaner
もっぱらドイツかオーストリアで栽培されています。ドイツでは2番目に多い(1位はリースリング)ポピュラーな品種で、一時期(1975~1995年)はNo.1でした。1882年にドイツのガイゼンハイム研究所でヘルマン・ミュラー(Dr. Hermann Müller 1850-1927)さんが交配をしました。このヘルマンさんはスイスのトゥルガウ州出身でした。ミュラー・トゥルガウの名前の所以がわかっちゃいましたね(笑)。育成された新品種の最良の苗木が選ばれ、リースリングとジルヴァーナー(Riesling x Silvaner)の交配種として広まります。いつしか両親の頭文字を取って「Ri + vaner」=「Rivaner」と呼ばれ定着します。しかしながら、リースリングとシルヴァーナーの交配種を作っても、すでに広まっている所謂「Rivaner」の特徴に合わないということで、早くからその真偽は疑われていたらしいです。交配をしたヘルマンさん本人も「もしかして品種、間違っちゃったかも…」という書簡を残してるそうです(笑)。そして、1996年、DNA分析によって「Rivaner」の親は「Riesling x Silvaner」ではないことが判明します。

DNA分析の最初の結果では、父親がジルヴァーナーではなくシャスラと出ました。Muller-ThurgauXXX
すぐにそれは訂正されて、父方は「マドレーヌ・ロワイヤル(Madeleine Royale)」で確定しました。品種名も作成者の「ミュラー・トゥルガウ」でファイナルアンサーとなったわけですが、没年は1927年ですからご本人の死後ですね。残念な感じがするとともに、間違いで命名された「Rivaner」が今日のワインのように現在も残っているのが何だか可哀そうな気がします(笑)。


レー・ケンダーマンの拠点はいくつもあるようですが本拠地はここビンゲンになります。
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地域的にはラインヘッセンなんでしょうが、ライン川の畔、ラインガウのリューデスハイムの対岸になります。しかし、巨大な工場然とした建物ですね。

今日のワインは13ある指定生産地域(g.U.)のラインヘッセン(Rheinhessen)になります。German_Wine_Regions
ザクっと13の指定生産地域、g.U.(geschützte Ursprungsbezeichnung)を見た地図です。「Rheinhessen」に「Qualitätswein」が付記され、EU法のAOPの位置づけになります。各g.U.の赤・白比率が視覚的にわかるように示してありますが、ラインヘッセン含めミュラー・トゥルガウが優勢の地域が多いのがわかると思います。


ラベル平面化画像。
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表ラベルと裏ラベルが重なっていて、ぐるっと1周してるのでボトルの黒い部分と透明部分の境目が見えなくなっています。


さあ、スクリュー回転。
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Alc.11%。
淡いイエロー。
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青リンゴ、ライム。
めっちゃペトロール香感じます。
さすが母親リースリングってことでしょうか。
微甘アタック。
味わいは黄桃感ある柑橘系。
重み、貫禄は残念ながらないですが、
カジュアルワインとしてスルスル楽しめる感じです。
ただし、個人的に甘口はあまり好まないので点数は厳しくなりました。


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Weinkellerei Reh Kendermann
Black Tower Rivaner 2019
Qualitätswein Rheinhessen
WWWポイント77点



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