Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録

ワインについて、僕SFが自分用のメモ・備忘録として書き込む場所です。 Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない。 かの有名な僕の名言です。(笑) あくまで自己流に、(お手頃価格の)ワインの世界を日々記録しています。 いつかその「偉いワイン」に出会うために。

>> その他の白品種

Respire Souvignier Gris 2021 Atlantique IGP

リカマンで売っていたフランスの安いワインなんですが、品種が「Souvignier Gris」となっています。スーヴィニエ・グリ? ソーヴィニヨン・グリ(ソーヴィニヨン・ブランの色変異種)とは違うようです(笑)。また変なのを見つけてしまいました。こんなのは試さずにはいられません。アトランティーク IGP(Atlantique IGP)がボルドーあたりの地理的保護表示なのは何となく知っていましたが、これも確認しておきましょう。

IMG_1152
作り手は、ヴィニュロン・ド・トゥティアック(Vignerons de Tutiac)というボルドーの4つのワイン生産協同組合を束ねる会社のようです。50年の歴史があり、ボルドーの16のAOCをカバーしているそうです。500の生産者がメンバーで畑の総計は5,400ヘクタールにのぼるとのこと。

公式ページは「我がボルドーの代表なり」と言わんばかりの写真が踊っています。

やはりですが、今日のワインはショップページにも見当たりません。

・スーヴィニエ・グリ(Souvignier Gris) 100%

多分こうでしょう(笑)。その他の情報はありません。せめて裏ラベルにでもこの謎の品種の説明ぐらい欲しかったところです。

さあ、スーヴィニエ・グリSouvignier Gris)を見ます。果皮色がロゼの「グリ」です。
Souvignier-Gris
ドイツのフライブルグにあるブドウ栽培研究所のノルベルト・ベッカー博士(Norbert Becker:1937~2012年)が1983年に交配して生み出した品種です。博士曰く「カベルネ・ソーヴィニヨン x ブロナー(Bronner)」の交配としていましたが、DNA分析の結果、「セイヴァル・ブラン(Seyval Blanc) x ツェーリンガー(Zähringer)」の交配だと判明しました。「博士、全然違いますやん!」と言いたいところですが既に亡くなられています(笑)。

耐寒性がある上、カビ類にも耐性があり、各種病気に対する抵抗力が強いため優れた品種と呼べそうです。2018年にオーストリアで高級ワイン用ブドウ品種として発売され、主にシュタイヤーマルクで広まっています。

フランスにいつどうやってどれだけ入ってきたかはわかりませんでしたが、2017年4月19日に「Catalogue des Variétés de Vigne(ブドウ品種カタログ)」に正式に登録されたそうです。IGP Atlantique の規定を調べたんですが、昔の規定にはなかった Souvignier Gris が最新版(2023年4月)にはちゃんと載ってました。最新(2023年8月)のAOCボルドーの規定も見てみると、条件付きですが、Alvarinho、Floréal、Liliorila、Sauvignac といった品種と一緒に Souvignier Gris も補助品種の仲間入りをしています。


ヴィニュロン・ド・トゥティアックの本拠地を訪問してみました。
Vignerons-de-Tutiac
ジロンド川の右岸、川岸のブライ(Blaye)の町から内陸へ車で30分くらいのところです。ジロンド川の対岸はサンテステフ(Saint-Estèphe)~ポイヤック(Pauillac)あたりになります。ヴィニュロン・ド・トゥティアックの拠点はボルドー中にいくつもあるようですが、ここが一番大きく本部のようになっています。


INAOの地図でIGP アトランティーク(IGP Atlantique)の範囲を確認します。
AtlantiqueIGP
シャラント・マリティーム県(Charente-Maritime)、シャラント県(Charente)、ジロンド県(Gironde)、ドルドーニュ県(Dordogne)、及び、ロット・エ・ガロンヌ県(Lot-et-Garonne)の一部が対象エリア。

AOCボルドーを内包します。というか、AOCボルドーはジロンド県のみなのです。地図に赤で影をつけておきました。この部分がAOCボルドーになります。ずいぶん差がありますね。AOCボルドーにAOCコニャック(AOC Cognac)のエリア(シャラント・マリティーム県、シャラント県)を加えて、さらにドルドーニュ県とロット・エ・ガロンヌ県の南西地方(Sud-Ouest)も足したのが IGP アトランティーク(IGP Atlantique)というわけです。

IGP アトランティーク(IGP Atlantique)をやっぱりGoogle Map上で見てみます。
IGP-Atlantique
AOCボルドーの範囲と主だった地名を書き込んでおきました。ヴィニュロン・ド・トゥティアックの本拠地の所在もわかりますね。


エチケット平面化画像。
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「Respire(息をする)」という名前に花と虫のイラスト。自然派な感じを出していますが、誇らしげに貼ってあるマークには「殺虫剤の残留成分ゼロ」とあります。当たり前やん(笑)。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.12.5%。
キラキライエロー。
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レモン、青リンゴ。
甘やかな辛口アタック。
柑橘系の味を乗せた酸は生き生き。
ミネラル感もあり、味わいも青リンゴ系かな。
後味に微かに苦味残りますがそれもまたいいです。


*****


Les Vignerons de Tutiac
Respire Souvignier Gris 2021
Atlantique Indication Géographique Protégée
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Bodegas Enguera Aliats Verdil 2021 DO Valencia

定期的に覗いてるグランマルシェに置いてあった安~いスペインのワインです。品種らしき表示に「Verdil」とあるのが気になり調べてみると、やはりバレンシアのローカル品種で、絶滅の危機にあったものが少数の地元生産者によって現在復活の途上にあるんだとか。こういう珍しいワインに弱いんですよね。お値段もお手頃ですし、すぐさまゲットしてお試しとなりました。

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作り手のボデガス・エンゲラは1974年にペドロ・ぺレス・パルド(Pedro Pérez Pardo)さんがエンゲラ(Enguera)の地に農場を手に入れて始めたワイナリーです。この時、同時に少し離れた Fontanars dels Alforins というところにも畑を入手。実はここがアルフォリンの谷(Vall dels Alforins)と呼ばれる絶滅に瀕したベルディル(Verdil)という品種がある場所だったようです。
ベルディルを復活させたのはダニエル・ベルダ(Daniel Belda)というワインメーカーなのだそうですが、この方がボデガス・エンゲラの畑と同じ Fontanars dels Alforins にワイナリーも所有しており、そこで初めてベルディルのバリエタルを瓶詰めしたということのようです。

公式ページはしっかりしてます。安ワインの作り手とは思えないです(失礼!)。
Banner
今日のワインもショップに掲載されてましたがラベルデザインが少し変わってました。

・ベルディル 100%

樹齢15年とありました。ということは2006年に改めて植樹してるということですね。

これがベルディル(Verdil)です。なかなかいい写真がありませんでした。
Verdil
過去にはバルクワインなどにされていたようですが、1990年代半ばにはほぼ消滅。フォンタナル・デル・アルフォリン(Fontanars dels Alforins)のワインメーカー、ダニエル・ベルダ(Daniel Belda)が復活に尽力したというのは前述の通り。畑一帯はアルフォリンの谷(Vall dels Alforins)という谷間になっており、ベルディル栽培の中心地と言えるまでに復活を遂げているようです。
2021年のDNA分析により、母方がスペイン原産の白品種へベン(Hebén)ということが判明しています(父方は不明)。リンゴやパイナップルの香りを持つフレッシュな白ワインができます。

DOバレンシアの公式ページにもこのようにサラッと紹介されています。
White-Grapes-DO-Valencia
頑張って復活させたんでしょうから、もう少し説明があってもいいと思いますが(笑)。


今日の作り手ボデガス・エンゲラを訪問しました。
Enguera01
奥まっていますが、畑も含めなかなか立派なところですね。

ボデガス・エンゲラ周囲を俯瞰して見てみます。
Vall-dels-Alforins
少し離れたアルフォリンの谷(Vall dels Alforins)にベルディルの畑があるんでしたね。ワイナリーからは車で小一時間くらいかかる距離です。アルフォリンの谷の真ん中にはベルディル復活の立役者、ダニエル・ベルダ(Daniel Belda)があります。

例によってバレンシア州の地図で位置関係を確認します。
Valencia_DOs
薄い白の四角のところが先ほどの地図のエリアです。ボデガス・エンゲラも示しました。DOバレンシアをやってるのがわかりますね。バレンシア州(Comunidad Valenciana)には以下の3つのDO(Denominación de Origen=EUワイン法でいうDOP:Denominación de Origen Protegida)があります。

・Valencia
・Utiel-Requena
・Alicante


ラベル平面化画像。横長一枚ものですね。
IMG_0936
創業者ペドロ・ぺレス・パルドさんのサインもありますね。ヴィーガン、ユーロリーフ認証です。CPCというのは非営利環境団体CPC(Carbon Proof Certified)が認めるCO2排出量低減に貢献していますという印です。

インポーターシールを貼る場所がなかったのは理解しますが…
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売りであるヴィーガン認証マークを隠すのはよろしくないですね。


さあ、スクリュー回転。
IMG_0945

Alc.12%。
緑の入ったゴールドイエロー。
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確かに青リンゴ、パインの香りがガッツリあります。
辛口アタック。
不思議なラムネ風味のある酸が面白いですね。
苦味も微かに乗ってるのがまたいい効果です。
個性もあってうまいというのは素晴らしい。
復活させる価値のある品種だと思いました。


*****


Bodegas Enguera
Aliats Verdil 2021
DO Valencia
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Cave du Roi Dagobert Sylvaner Découverte 2019 Vin d’Alsace

AOCアルザス(Alsace)、もしくはAOCヴァン・ダルザス(Vin d'Alsace)です。赤はピノ・ノワールのみですが、白は何種類か使える品種があり、大抵モノセパージュで品種名が表示されます。今日のこれはシルヴァネール(Sylvaner)であります。ドイツのジルヴァーナー(Silvaner)と何が違うの?とか考えながらいただくとしましょう。

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作り手はカーヴ・ドュ・ロワ・ダゴベルト。「ダゴベルト王のワインセラー」という意味です。ストラスブール近郊に1952年に設立された協同組合で、20のコミューンの250の会員(ワイン生産者)から成ります。畑の総面積は1,000ヘクタールにもなるそうです。

公式ページは普通にしっかり。最近リニューアルしたんでしょうか。ロゴが変更になってます。

今日の「Découverte」というラインアップが載ってません。ラインアップも一新でしょうか。

・シルヴァネール 100%

まあ、載っていても大した情報はなさそうなので良しとしましょう。

ここで、AOCアルザス(AOC Alsace)で認められている品種をまとめておきましょう。

・シルヴァネール(Sylvaner=Silvaner ジルヴァーナー)
・ピノ・ブラン(Pinot Blanc
・ピノ・ノワール(Pinot Noir
・ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer(GC)
・リースリング(Riesling(GC)
・ミュスカ(Muscat(GC)
・ピノ・グリ(Pinot Gris(GC)
・シャスラ(Chasselas
・オーセロワ(Auxerrois
・サヴァニャン・ロゼ(Savagnin Rose

黒品種はピノ・ノワールのみ。あとは白かグリですね。最後のサヴァニャン・ロゼ(Savagnin Rose)は「klevener(de Heiligenstein)」というシノニムで呼ばれ、ハイリゲンシュタイン村(Heiligenstein)及び近隣の4つのコミューン(Bourgheim、Gertwiller、Goxwiller、Obernai)でしか使えません。(ワイン名には「Klevener de Heiligenstein」が付記されます。)

※AOCアルザス・グラン・クリュ(AOC Alsace Grand Cru)は 51の特級畑(lieux-dits)からのもので、使える品種がアルザスの高貴品種とされる、RieslingGewürztraminerPinot GrisMuscat の4種でないといけない決まりがあります<上記の (GC) 印>。例外として、シルヴァネールがゾッツェンベルク(Zotzenberg)・グラン・クリュのみで認可されています。

アルザスの品種の表示の仕方について以下にまとめてみました。
使用できる名称 ブドウ品種
<白ワイン(Vins Blancs)>
Auxerrois Auxerrois B
Chasselas / Gutedel Chasselas B & Chasselas Rose Rs
Gewurztraminer Gewurztraminer Rs
Muscat Muscat à Petits Grains B

Muscat à Petits Grains Rs

Muscat Ottonel B
Muscat Ottonel Muscat Ottonel B
Pinot Blanc Auxerrois B

Pinot Blanc B
Pinot / Klevner Auxerrois B

Pinot Blanc B

Pinot Noir N (白ワイン醸造)

Pinot Gris G
Pinot Gris Pinot Gris G
Riesling Riesling B
Sylvaner Sylvaner B
<赤ワイン(Vins Rouges)>
Pinot Noir Pinot Noir N
<ロゼ(Vins Rosés / Clairet / Schillerwein)>
Pinot Noir Pinot Noir N
大抵は品種名をそのまま表示するんですが、「Muscat」、「Pinot Blanc」、「Pinot」と表示される場合は含まれる品種が複数ある可能性があるということになります。「Pinot」なんか、Pinot3種にオーセロワもOK。「Pinot」って何が入ってるんだろうと昔から思ってました(笑)。オーセロワはピノ・オーセロワ(Pinot Auxerrois)というシノニムもあり、ピノの仲間扱いなのでしょう。黒品種のオーセロワ(Malbec、Côt のシノニム)とは全く関係ありません。

また、アルザスで使える黒品種はピノ・ノワールのみなので「Pinot Noir」と書いてなくても「Rouge」であれば必ずピノ・ノワール100%ということになります。Alsace Rosé というAOCもありますが、アルザスのロゼもピノ・ノワールのみで作られます。

コミューン名が付記できるAOCアルザス(Dénomination Géographique Communale)は13あり、付記する場合は使える品種に制限が入ります。以下がこれら13産地を含むアルザスの使える品種まとめ表。上記したAOCアルザスの使用品種もおさらいできますね。また表中の「Alsace lieu-dit(=Alsace suivi d'un nom de lieu-dit;後ろにクリマ名が続くアルザス)」というのは、産地名付きのAOCアルザスになります。(Alsace suivi d'un nom de lieu-dit にはロゼはありません。)
Alsace01
コミューン名を付記する場合、赤(ピノ・ノワール)しか作れないところが3つありますね。Saint-Hippolyte、Ottrott、Rodern の3つです。

AOCクレマン・ダルザス(AOC Crémant d'Alsace)は瓶内二次発酵のシャンパーニュ方式の発泡ワインで、Pinot Blanc、Pinot Gris、Pinot Noir、Riesling と Chardonnay が使えますが、シャルドネだけは逆に AOC Alsace/Alsace Grand Cru に使ってはいけません。

シルヴァネール(Sylvaner)というのは、ドイツ語のジルヴァーナー(Silvaner)のシノニムです。これがジルヴァーナーですが、正式名称を「Grüner Silvaner / Silvaner Grün」といいます。
Silvaner01
VIVCではSILVANER GRUEN(本来の表記は Silvaner Grün)が「Prime Name」として登録されていますが、ドイツ語を英語表記に変換しているのでなんだか変ですね。
1998年に行われたDNA分析では、Traminer(Savagnin Blanc)x Österreichisch-Weiß の自然交配だろうということがわかっています。原産はオーストリアになります。フランスではアルザスで主に栽培されていますが、それでも1,027ヘクタールしか栽培されていません。最大のドイツでも4,744ヘクタールで、これはドイツ全体の5%でしかありません (*)。次点がスイスの250ヘクタール、原産のオーストリアでも38ヘクタールだそうです。(*) ドイツのフランケンではジルヴァーナーが全体の24.3%を占め(2017年)、フランケンの代表品種となっています。

「Grüner Silvaner」の「Grüner」は「緑色の~」という意味です。ということは他の色のジルヴァーナーもあるのかなと察しますが、その通り。赤(Roter ~)と青(Blauer ~)があります。
Silvaner02
Roter Silvaner は「グリ」っぽいですね。Blauer Silvaner は青というより黒ブドウですね。実際「Schwarzer(黒い)Silvaner」とも呼ばれます。これらはジルヴァーナーから突然変異で生まれたため、(グリューナー)ジルヴァーナーとは遺伝的には区別がないそうです。


さあ、やっとカーヴ・ドュ・ロワ・ダゴベルトを訪問。立派ですね。
Cave-du-Roi-Dagobert01
周囲のコミューンからもアクセスしやすい幹線道路の交差点(ロータリー)に面しています。大都市ストラスブール(Strasbourg)からも車で30分。

アルザス全体の地図に所在を書き込んだので位置関係を見ておきましょう。
Alsace_General_-Map
中ほどで分かれる、バ・ラン(Bas-Rhin)、オー・ラン(Haut-Rhin)というのは、ライン川の下流・上流という意味になり、それぞれ独立した県になってます。今日の作り手はバ・ラン県でした。いつもオー・ラン県の作り手ばかりなので今回は珍しいわけですが、それもそのはず、 AOCアルザス・グラン・クリュ(AOC Alsace Grand Cru)で見ると、51ヶ所中、37ヶ所がオー・ラン県にあるのです。バ・ラン県には14しかありません。全グラン・クリュのリストは地図右下に(見にくいですが)あります。このブログの過去ログにも全グラン・クリュ・リストを乗せていますのでよかったらご覧になってください。

実は2021年にバ・ラン県、オー・ラン県が合併し「Collectivité européenne d'Alsace(アルザス欧州共同体)」ができたそうですが、バ・ラン県、オー・ラン県は引き続き行政区分として残るそうで、ちょっと意味が分かりません(笑)。

エチケット平面化画像。
IMG_0832


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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ノマコルクです。

Alc.13%。
濃いめのハチミツ・ゴールド。
IMG_0849

青リンゴ、梨。
スワリングすると白い花が香り立ちます。
辛口アタック。
ミネラル感ある穏やかないい酸が居ますね。
ネクター的な果実味もあります。
苦味もちょうどいい。
バランスの妙です。


*****


Cave du Roi Dagobert
Sylvaner Découverte 2019
Vin d’Alsace
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Cantine Europa Notti di Sicania Zibibbo 2021 Terre Siciliane IGP

やまやにシチリア(IGP Terre Siciliane)のバリエタルがたくさん並んでいました。インツォリア(Inzolia)やカタッラット(Catarratto)なんかは過去にも試していますが、グリッロ(Grillo)とジビッボZibibbo)というのはまだでした。悩んだ末、名前の響きでジビッボを選びました。早速お試しといきます。

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作り手はカンティーネ・エウロパ(Cantine Europa)というシチリア島の西部マルサラの近くに1962年に設立された協同組合です。シチリアの中でも最大規模の生産者ということで、島西部の2,000を超える農家が所属しているそうです。

公式ページはなかなかカッコいいです。創立60周年の記念ロゴになっています。

ワイン紹介には今日のワインは見当たりませんでした。新シリーズかな?

・ジビッボ 100%

セパージュはこうでしょう。「Da Uve Leggermente Appassite(軽く乾燥させたブドウから)」とあるので少し陰干しして水分を飛ばす手間はかかっているようです。

ジビッボ(Zibibbo)。なんとマスカット・オブ・アレキサンドリアのシノニムでした。
Zibibbo
マスカット・オブ・アレキサンドリア(Muscat of Alexandria / Muscat d'Alexandrie)はギリシャかイタリア原産で世界中に多様なシノニムで広がっています。日本の生食用のいわゆるマスカットはこれです。また非常に古い品種で、16世紀にはジビッボの名前ですでにシチリア島にあったそうです。2021年のDNA分析では、シチリア原産のグリッロ(Grillo)は「Catarratto Bianco Comune」x「 Zibibbo(Muscat d'Alexandrie)」の交配種であることがわかっています。また今度グリッロも試したいんですが、ジビッボの子なんですね。


さあ、カンティーネ・エウロパを訪問。さすが地域最大の協同組合という規模です。
Cantine-Europa01
マルサラ(Marsala)の町から南下する幹線道路沿いにあります。

シチリア島を俯瞰してカンティーネ・エウロパの所在と他DOCとの位置関係を確認。
Sicilia_island3
地図の最西端がマルサラ(Marsala)の町です。この辺一帯はマルサラ(Marsala)DOCというマルサラ・ワイン(酒精強化ワイン)のDOCになります。

そうそう、今日のワインは全島が対象エリアの IGP Terre Siciliane でしたね。(IGP=Indicazione Geografica Protetta)つまりは、全島全域からのブドウなんでしょう。巨大協同組合ですからさもありなんです。IGP Terre Siciliane はもともと「IGP Sicilia」なんですが、2011年に DOC Sicilia が出来た時、IGPの方が改名されたものです。(DOC=Denominazione di Origine Controllata)

IGT Terre Sicilianeに使える品種は国際品種含めなんでもOK状態ですから、当然ジビッボもOKなんですが、同じく全島が対象のDOCシチリアにならなかった理由がよくわかりませんね。

DOC Sicilia は赤・白・ロゼ・泡・甘口となんでも可能で、以下が主要品種です。

<黒品種>
・Alicante
・Cabernet Franc
・Cabernet Sauvignon
・Carignano
・Frappato
・Merlot
・Mondeuse
・Nerello Cappuccio
・Nerello Mascalese
・Nero d’Avola (Calabrese)
・Nocera
・Perricone
・Petit Verdot
・Pinot Nero
・Sangiovese
・Syrah

<白品種>
・Ansonica
・Carricante
・Catarratto
・Chardonnay
・Damaschino
・Fiano
・Grecanico Dorato
・Grillo
・Moscato
・Müller-Thurgau
・Pinot Grigio
・Sauvignon Blanc
・Vermentino
・Viognier
Zibibbo

ねっ?ジビッボも使えますから DOC Sicilia もいけると思うんですが。


ラベル平面化画像。
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ユーロリーフのビオワインですね。


さあ、スクリュー回転。
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Alc.13%。
濃いめのハチミツ感のあるイエロー。
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黄桃、メロン。
微かに甘い辛口アタック。
酸は程良く味わいにはネクター感もあります。
ある意味、香りで感じたメロン味にも感じますね。
喉越しと余韻で酸はかすかな苦味を伴います。
最後にフルーティー感が戻ってきていい感じです。


*****


Cantine Europa
Notti di Sicania Zibibbo
Da Uve Leggermente Appassite 2021
Terr
e Siciliane IGP
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Bodegas Osborne Sherry Fino DO Jerez Xérès Sherry

シェリー酒とは、スペイン・アンダルシア州カディス県(Cádiz)ヘレス・デ・ラ・フロンテラ(Jerez de la Frontera)とその周辺で生産される酒精強化ワインの総称で、ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xérès-Sherry)という名でDO(Denominación de Origen)に認定されており、ポートワインやマデイラワインと合わせて世界三大酒精強化ワインとされます。とにかく飲んだこともなく知識だけがトッ散らかっているのでここらでまとめておこうと思います(笑)。

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やまやで普通に売っているシェリーです。辛口でAlc.15%のフィノ(Fino)を選びました。作り手はオズボーン。歴史はトーマス・オズボーン・マン(Thomas Osborne Mann)という若い商人がワインを買い付けにカディスに到着した18世紀末に遡ります。彼はすぐにエル・プエルト・デ・サンタ・マリア(El Puerto de Santa María)で自身のワイナリーを設立し(1772年)、それから200年以上経った今、国際的な知名度を誇る大きなビジネス・グループとなっています。

公式ページは大企業感あり、ワイン以外にも生ハムやキャビア、レストランなど手広いです。

今日のシェリーはローエンドなのかHPのラインアップに見当たりませんでした。

・パロミノ 100%

辛口シェリーを「Vino Generoso」と呼び、Fino、Manzanilla、Amontillado、Oloroso、Palo Cortado などのタイプがあります。今日のフィノ(Fino)はパロミノ種(Palomino)のブドウのモストを完全発酵させたものからアルコール度数15%に酒精強化されて造られ、ベースワインはフロール(flor)と呼ばれるの産膜酵母の膜に液面を覆われ、熟成中のワインが酸化から守られることで独特の風味を持ちます。また、木樽で2年以上の熟成が義務づけられています。
フィノと同じ作り方のマンサニージャ(Manzanilla)というのもあり、これはサンルーカル・デ・バラメダ(Sanlúcar de Barrameda)で作られたものを指します。「DO Manzanilla - Sanlúcar de Barrameda」もしくは単に「DO Manzanilla」を名乗ります。[マンサニージャは1964年にDO Jerez-Xérès-Sherryから分離独立、マンサニージャ=サンルーカル・デ・バラメダ(Manzanilla - Sanlúcar de Barrameda)となり、1996年にはDO Manzanillaのみの表示がOKになります。]

酵母は糖分がアルコールに変化し終わると消滅しますが、ヘレス地域では別種の酵母がいくつか存在し、それらはモスト中にあった糖分がなくなっても活動し続け、ついにはワインの表面を完全に被う膜を形成するに至ります。これがフロール(Flor;「花」の意)です。
Flor1
フロールは約7~10年の寿命であり、7年熟成したフィノを特に「Fino Antiguo」と呼びます。同様にマンサニージャの場合は「Manzanilla Pasada」と呼びます。

シェリーにはザクっと辛口と甘口があり、特に辛口(Vino Generoso)は酒精強化の度数とフロールが発生するか否か(酸化的な熟成の有無)で種類が細分化されます。(下図参照)
GENEROSOS
・酒精強化を15%でフロールを発生させ酸化熟成しないのが「Fino(フィノ)」でしたね。
・酒精強化を17%にするとフロールが作られず「Oloroso(オロロソ)」になります。
・フロールができてもその発達が止まると「Amontillado(アモンティジャド)」とみなします。
・「Palo Cortado(パロ・コルタド)」が一番曖昧で解釈が難しいと思いました。
 ⇒ 15%の酒精強化で始めますが、ある特徴(?)が認められると最初に樽に付けた目印の棒線をカットするような線()を入れて表示(「Palo Cortado」は「カットした棒」の意)、17%まで酒精強化を行い酸化熟成に切り替え、オロロソのような特徴を持たせます。
 ⇒ 一応、パロ・コルタドの規定では「アモンティジャドの洗練された芳香とオロロソの構造とボディを合わせ持つこと」とされていますが、こんなのは作り手の主観的な判断に委ねられますよね。

・「Vino Generoso de Licor」という半甘口があり(上図下段)、辛口のフィノ(Fino)もしくはマンサニージャ(Manzanilla)に極甘口のペドロ・ヒメネス(下図)をブレンドしたものを「Pale Cream」と呼び、アモンティジャード(Amontillado)ベースのものは「Medium」、オロロソ(Oloroso)ベースのものは「Cream」と呼ばれます。(急に英語名で変な感じですが、スペイン語ではこの「クリーム」は「Amoroso」と言うようです。)

・ブドウを天日干しすることで甘口にするものを「Vino Dulce Natural」と呼びます(下図)。
DULCES
ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximènez)は「ペドロ・ヒメネス」という品種名と同じ名前で呼ばれる非常に濃い色の極甘口のシェリーになり、モスカテル(Moscatel)も「モスカテル」という甘口ワインに仕上げられます。パロミノで作ると単なるドゥルセ(Dulce)というようですね。

図中の Aging(熟成)のところに樽を積み上げたようなイラストがありますが、これがシェリー独特の「Sistema de Criaderas y Solera(クリアデラス・アンド・ソレラ・システムの意)」を表しています。
SoleraSystem
通常3段で、一番下がソレラ(Solera)と呼ばれ最終的にここからワインが抽出(Saca)されます。(「Solera」という言葉は「床」を意味する「Suelo」から来ています。)空いた空間には一つ上の段、第一クリアデラ(Primera Criadera)から補充(Rocío)されます。さらにそこで空いた空間はもう一段上の第二クリアデラ(Segunda Criadera)から補充され、新たなワイン(Sobretabla)は最上段の第二クリアデラに補充されるという仕組みです。こうすることで常に安定した品質を保てるということですが、違う年のワインが混ぜられるわけですからシェリーには基本ヴィンテージの表示がないわけです。アニャダ(Añada)」と呼ばれる、このソレラ・システムを使わず同一収穫年のワインで作るシェリーもあります。]

ちなみに、以下の特別カテゴリーもあります。
V.O.S.(Vinos de Vejez Calificada):平均熟成20年以上の熟成期間認定ワイン
[ラテン語:Vinum Optimum Signatum(最高級署名入りワイン)から。英語:Very Old Sherry にたまたま一致。]
V.O.R.S.(Vinos de Vejez Calificada):平均熟成30年以上の熟成期間認定ワイン
[ラテン語:Vinum Optimum Rare Signatum(最高級署名入り希少ワイン)から。英語:Very Old Rare Sherry にたまたま一致。]
Vinos con Indicación de Edad:熟成年数表示シェリー(平均熟成12年もしくは15年)


パロミノ(Palomino)を見ておきましょう。辛口シェリーはほぼこの品種です。
Palomino
スペイン原産です。親子関係は不明。アンダルシア州カディス県(Cádiz)ヘレス・デ・ラ・フロンテラ(Jerez de la Frontera)とその周辺地域がシェリー生産地域ですが、栽培比率の95%以上がパロミノ種です。シェリーに使用が認められている品種は以下の3つ。

・パロミノ(Palomino)
・モスカテル(Moscatel)
・ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez

…だったんですが、実は2021年にDOの規定が改正され、以下の6品種が加えられました。

・Beba
・Cañocazo
・Mantúo Castellano
・Mantúo de Pilas
・Perruno
・Vigiriega

聞きなれないものばかりですが、この地方ではプレ・フィロキセラに時代はポピュラーだったようで、その復活だそうです。シェリー(DO Jerez-Xérès-Sherry)は1933年に認定されたスペイン最初のDO(Denominación de Origen)で、88年越しの大変更のようです。他にもいくらかの規定が緩められているようです。


エル・プエルト・デ・サンタ・マリア(El Puerto de Santa María)のオズボーン訪問。
Osborne01
さすが古くからの大手ですから立派な佇まいです。海寄りの町ですね。


さあ、シェリーの生産地域を地図で見ておきましょう。拾い物の地図ですが(笑)。
JEREZ-de-la-Frontera
まず、右上のスペイン全図で見るとわかるように、シェリーの産地を擁するアンダルシア州はスペインの南端にあります。つまりはかなり暑い地方ということで、ブドウ栽培の南限にも近いです。また、アルバリサ(Albariza)と呼ばれる真っ白な石灰質の土で被われており、これが上質なシェリーを生む秘密だそうで。基本的に過去から Sherry Triangle(スペイン語では「Marco de Jerez」)と呼ばれたこれらの特徴を持つ以下の3都市が規定の産地でした。

Jerez de la Frontera
El Puerto de Santa María
Sanlúcar de Barrameda

その周辺の以下の6地域でもブドウの栽培と醸造は可能でしたが、熟成は上記の3都市で行わないといけませんでした。これを「Zona de Crianza(熟成ゾーンの意)」と言いました。

・Chipiona
・Chiclana de la Frontera
・Rota
・Trebujena
・Puerto Real
・Lebrija

しかし、これも2021年のDO改正で全9都市が等しく同条件でシェリー生産が可能となっています。ちなみに、DOモンティージャ・モリーレス(DO Montilla-Moriles)という、同じアンダルシア州の古都コルドバ(Córdoba)の南部の地域で、シェリーと非常によく似たワインを作るDOがあるのですが、当然シェリーは名乗れません。>


ラベル平面化画像。
IMG_0724
なぜDOが、ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xérès-Sherry)と3つの名前を羅列しているのでしょうか。 それは、ヘレスのワインがスペイン (Vino de Jerez) で人気があっただけでなく、フランス(Xérès)やイギリス(Sherry)でも同様に人気があったから、ということらしいです。

裏ラベルの上に貼られたインポーターシールは最悪ですね。
IMG_0723
ちゃんと英語で解説もしてあるのに。


さあ、スクリュー回転。
IMG_0800

Alc.15%。
ハチミツゴールド、玉ねぎ風。粘性はないです。
IMG_0798

黒糖かイチジクなどのドライフルーツ。
ローストナッツ。ヨードっぽい?
辛いドライな辛口アタック。
ライム系の酸もあるんですが、
なんとも言えない塩味も後味に残ります。
生ハムに合わせたんですが、なるほどイケます。
薄めた養命酒のような薬草ハーブ感があるのだけがちょっと苦手。
同じく産膜酵母を使ったジュラのヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)も似たような風味ですね。
オロロソとかどうなんでしょうね。気になってきました。


*****


Bodegas Osborne
Sherry Fino DO Jerez Xérès Sherry
WWWポイント76点



WhiteWhiteWine01

Pierre Olivier Vin Blanc Mousseux Blanc de Blancs Organic Brut Prestige

暑い日が続きますのでキンキンに冷やした泡をいただくことが多くなります。ただ常にシャンパーニュなど上等な泡をいただく必要はなく、安くてそこそこのうまさがあればオールオッケーなのは皆さまもご承知御の通りです(笑)。今日も今日とて得体の知れないスパークリングワインを抜栓いたします。実はこれスパークリングワインくじのハズレ。ワインくじではよく見かけるやつで、皆様も飲んだことあるんじゃないですか?(笑)

IMG_0720
ラベルを見渡してもフランスのランディラ(Landiras)という町で作られていることしかわかりませんが、前にも同じようなスパークリングを試した時に調べたことがあって、おおよその察しはつきました。おそらく、フランスの1979年創業の大手ワインメーカーグループのGCF(Les Grands Chais de France)でしょう。(過去この企業について何度か詳しく触れています。)ここはフランス各地に生産拠点を持っていますが、ボルドー近くのランディラ(Landiras)という所に「Les Caves de Landiras」という一大拠点を持っています。本社はアルザス地方のペータースバッハ(Petersbach)にあります。

これがそのスパークリングワインくじです。1/5がシャンパーニュって期待しますよね。
IMG_3018
結果は…今日のワインです(笑)。まあ、ハズレの3本の内の一番上ですから、まだマシと考えましょう。

公式ページはこれですが、今日の「Pierre Olivier」なるワインは載っていません。

仕方がないのでネット情報に頼るんですが、セパージュで混乱しました。「Blanc de Blancs」ですから白品種なのは間違いないのですが、「ユニ・ブラン」と書いてある情報に紛れて、「アイレン」と書いてあるのもあったからです。ユニ・ブランはコニャックやアルマニャックの産地にも近いのでさもありなんですが、スペイン最大の栽培面積を誇るアイレンはほぼスペインでしか栽培されていません。したがって、たぶん…こうでしょう。

・ユニ・ブラン 100%

このスパークリングワインはシャンパーニュの伝統的方式ではなく、シャルマ方式で作られているようです。伝統的方式ならラベルで謳ってるはずですからね。

スパークリングワインの製造法は、主に以下の種類があります。

伝統的方式(Méthode Traditionnelle):
いわゆる瓶内二次発酵。ワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えて密閉、瓶内で二次発酵を起こさせるもの。発酵後も熟成、澱引きなどが必要な、最も手間とコストがかかる方式で最高級スパークリングワインの製造に用いられます。シャンパーニュ方式(Méthode Champenoise)とも呼ばれ、その名の通りシャンパーニュはこの方式です。

シャルマ方式(Méthode Charmat):
スティルワインを大きなタンクに密閉し、その中で二次発酵を起こさせる方式。密閉タンク方式ともいい、短期間に生産が可能。一度に大量に生産できるため、コストを抑えたい場合に広く用いられる製造法ですが、ワインが空気に接触しないためブドウのアロマを残したい場合に用いられることが多いです。

トランスファー方式(Méthode Transfert):
瓶内二次発酵をさせた炭酸ガスを含んだワインを、加圧下のタンクに移し、冷却、ろ過した後、新たに瓶詰めします。トラディショナル方式を簡略化したものとも言えます。

田舎方式(Méthode Rurale / Méthode Ancestrale):
発酵途中のワインを瓶詰めし、密封した状態で残りの醗酵を瓶の中で行います。一次発酵のみで完了です。

炭酸ガス注入方式(Gazéifié):
スティルワインに炭酸ガスを強制的に注入することで発泡性にします。この方式は泡のキメが荒く、すぐにガスが抜けてしまう特徴があります。


ユニ・ブラン(Ugni Blanc)です。正式名称はフランスでも「Trebbiano Toscano」。
Saint-Emilion-des-Charentes
サンテミリオン(Saint Émilion)とか、サンテミリオン・デ・シャラント(Saint Émilion des Charentes)というシノニムがあります。大半がコニャック・アルマニャックのブランデー用に栽培されています。今日のワインの生産地はコニャックとアルマニャックの主要産地の間くらいにありますから、使用されたんだと想像します。

一応、アイレン(Airén)にも触れておきましょう。
Airen
スペインが原産で、前述のようにもっぱらスペインでしか栽培されませんが、もともとブランデー用品種として一般的です。長らくスペインのブドウ栽培面積(白品種・黒品種全ての中で)のナンバーワンでした。「でした」というのは、2021年にテンプラニージョが僅差でアイレンを抜きナンバーワンを奪取したからです。それでもスペインのブドウの30%を占めると言いますからすごいものです。ただ、今日のワインに使われていることはないと踏みました。ユニ・ブランもアイレンもブランデー用で素性は似てるんですけどね。


ランディラ(Landiras)にあるGCFの拠点、Les Caves de Landirasを訪問します。GCF-Landiras
でかいです。ランディラの市街地と同じくらいの大きさがありそうです(笑)。

ランディラ(Landiras)の町は、実はソーテルヌのすぐ隣だったりします。
Landiras
ソーテルヌやバルサックに囲まれ、いい甘口ワインができそうなところです(笑)。ボルドーの市街や、ペサック・レオニャン(グラーヴ)も目と鼻の先ですね。


エチケット平面化画像。
IMG_0679


エチケット平面化画像。
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まあ、シンプルです。

Alc.11%。
色味は異様に濃いゴールドイエロー。泡立ちは例によって動画でご提供。

シャルマ方式の泡はなんとなく勢いがなく大人しい感じがします。

グレープフルーツが香ります。
甘やかな辛口アタック。
シトラス系の風味は爽やかでいいですね。
フルーティで楽しめました。
これで十分というなかなかなクオリティでした。
ハズレだからとみくびってはいけないですね。(笑)


*****


Pierre Olivier
Les Caves de Landiras (Les Grands Chais de France)
Vin Blanc Mousseux
Blanc de Blancs Organic Brut
Prestige NV
WWWポイント78点



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Louis Picamelot Vin Mousseux Blanc de Blancs Méthode Traditionnelle Brut

クレマン・ド・ブルゴーニュ(Crémant de Bourgogne)の作り手、ルイ・ピカメロ(Louis Picamelot)のスパークリングを再びいただきます。「Méthode Traditionnelle」とありますから、瓶内二次発酵の本格派です。しかし前に飲んだピカメロは赤のスパークリングで、クレマン・ド・ブルゴーニュではなく Bourgogne Mousseux でした。AOC Crémant de Bourgogne には白とロゼしかなく、赤だと AOC Bourgogne Mousseux になるという理由です。今日のは白、それもブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)ですが、今度もクレマン(Crémant)ではなくヴァン・ムスー(Vin Mousseux)となっています。なぜに?

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作り手のルイ・ピカメロは1926年にコート・シャロネーズ(Côte Chalonnaise)のリュリー(Rully)に創設されています。創立当初からブルゴーニュ・ムスーという名前で瓶内二次発酵のスパークリング・ワインを作っていたという老舗で、クレマン・ド・ブルゴーニュ(Crémant de Bourgogne)というAOCが制定されたのが1975年ですから、その道のパイオニアということになります。ルイ・ピカメロはスパークリングのみを作っています。実際、リュリーの村では過去からスパークリング・ワインは村の生産のかなりの割合を占めてきたんだそうで、クレマン・ド・ブルゴーニュ発祥の地であり中心地とされています。

これが店頭での様子。泡コーナーですが殊更にブルゴーニュを謳っていません。
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インポーターはモトックス。そこからの情報が書いてあるようです。


公式ページはシャンパーニュの大手メゾンのようなカッコいい感じ。日本語表示も完備ですし。

しかしなぜかクレマン・ド・ブルゴーニュのラインアップしか載っておらず、今日のブラン・ド・ブランが見当たりません。よって、モトックスの情報から。

・トレッビアーノ 75%
・シャルドネ 25%

瓶内二次醗酵され、瓶熟成は10ヶ月と、AOC Crémant de Bourgogne の規定9ヶ月はクリアしています。すると、あとは品種がダメなのかもしれません。「トレッビアーノ」ですからね(笑)。

AOC Crémant de Bourgogne の規定を見ておきます。品種は以下が使えます。

<主要品種>
・Pinot Noir
・Chardonnay(30%以上入れること)
・Pinot Blanc
・Pinot Gris

<補助品種>
・Gamay(20%以上は入れないこと)
・Aligoté
・Melon
・Sacy

これらから、白かロゼに仕上げないといけません。

ちょっと脱線ですが、補助品種のムロンとサシーを見ておきます。これがムロン(Melon)。
Melon-de-Bourgogne
ムロン・ド・ブルゴーニュ(Melon de Bourgogne)というシノニムがロワール川下流域(ペイ・ナンテ)でよく知られていますね。いわゆるミュスカデ(Muscadet)です。INAOは単なるムロン(Melon)というのを正式名称としているようです。謂れは、メロンのように葉っぱに切れ込みがなく丸いためだそうです。メロンの風味がする云々の解説はデタラメです。2013年のDNA分析では、グエ・ブラン(Gouais Blanc=Heunisch Weiß)x ピノ(Pinot)の自然交配とされています。これって、シャルドネやアリゴテ、アルザスのオーセロワなんかと同じなんですよね。兄弟品種というようなことらしいです。

こちらがサシー(Sacy)です。指原莉乃みたいな品種ですね(笑)。
Sacy
フランス原産の品種で、なんとこれも、グエ・ブラン(Gouais Blanc=Heunisch Weiß)x ピノ(Pinot)の自然交配のひとつだそうで。同じく2013年のDNA分析の結果です。さっしー、お前もか(笑)。

さて、本題に戻って今日のワイン。規定と照らし合わせて、シャルドネが30%以上入ってない時点でアウトなんですが、やはり「トレッビアーノ 75%」というのがクレマンにならずにムスーを名乗る最大の要因でしょう。

モトックスが「トレッビアーノ」と書いていますが、フランスでは普通に「ユニ・ブラン(Ugni Blanc)」と呼ばれる品種です。サンテミリオン(Saint Émilion)というシノニムもありましたし、サンテミリオン・デ・シャラント(Saint Émilion des Charentes)とも言います。大半がコニャック・アルマニャックのブランデー用に栽培されています。
Saint-Emilion-des-Charentes
念のためもう一度 AOC Crémant de Bourgogne の規定を見ますが、やはりユニ・ブランはありません。クレマンにならない理由はやはりこれですね。この品種はトレッビアーノという名前が有名なようにイタリア原産です。イタリアには「トレッビアーノなんとか」という品種がごまんとあり、大抵全然別の品種のシノニムであったりします。そういう意味ではイタリアはカオスであり(笑)、自分がトレッビアーノの真相になかなか迫れなかった原因でもありました。この品種はおそらくトスカーナが起源で、トスカーナでトレッビアーノ・トスカーノ(Trebbiano Toscano)と言われる品種は本物の(笑)トレッビアーノであり、フランスに入ってユニ・ブランと呼ばれるようになったものです。14世紀にイタリアからフランスに伝わり、ユニ・ブランとなったようです。
VIVIC(Vitis International Variety Catalogue)で調べると、この品種、正式名称(Prime Name)が「TREBBIANO TOSCANO」で、シノニムが「UGNI BLANC」とはっきり書いています。原産はイタリアですが、栽培面積はイタリアの3万5千ヘクタールに対しフランスは位以上の7万9千ヘクタールを誇ります。ユニ・ブランでいいんじゃない?って思ってしまいます(笑)。


ルイ・ピカメロを訪問します。リュリ―の町中です。カッコいい門構えですね。
Picamelot01
1991年まではベースワインを買っていたそうですが、今は40%は自社畑から、残りはブドウの買い付けとし、ベースワインはすべて自社で醸造しています。

コート・シャロネーズ(Côte Chalonnaise)を俯瞰して位置関係を見ます。
Cote_Chalonnaise_NEW
コート・シャロネーズ(Côte Chalonnaise)は、コート・ドールの南端からの続き、アリゴテのみのAOCブーズロンに始まり、マコネまでに5つのコミュナルAOC(村名AOC)があります。リュリー(Rully)、メルキュレ(Mercurey)、ジヴリ(Givry)までは赤・白両方のAOCで、1級畑もあります。さらに南側のモンタニー(Montagny)は白(シャルドネ)のみのAOCですが、ここも1級畑がかなりあります。

リュリー(Rully)のAOC地図上で見てみましょう。
Picamelot02
リュリーには赤・白あると同時に1級畑も結構ありますね。また、AOC Rully は Rully のコミューンだけでなくシャニー(Chagny)にもはみ出していること覚えておきましょう。


エチケット平面化画像。
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「ブラン・ド・ブラン」ですから白っぽいデザインです。

さあ、抜栓。
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コルク平面化。
IMG_0616

Alc.11.5%。
イエロー。
IMG_0613

泡立ちはいつものように動画で確認ください。


はっさく、白い花。
甘味も感じさせる辛口アタック。
味わいもはっさくっぽい(笑)。
酸がフレッシュに効いていて、
喉越しに微かな苦味が心地いいです。
若干ドライ過ぎな感じですが、
果実味が効いていて良い塩梅でした。


*****


Louis Picamelot
Vin Mousseux Blanc de Blancs
Méthode Traditionnelle Brut
WWWポイント79点



WhiteWhiteWine01

Vinarija Daruvar Vezak Graševina 2020

なんと初めてになります、クロアチアのワインです。クロアチアもワイン作りの歴史が古い所ですから外せないはずなんですが今まで縁がありませんでしたね。芦屋のワインショップを物色した帰りに寄った関西きっての高級スーパー「ikari」に置いてあったものです。だからと言って決してお高くはないんですが(笑)お試しといきましょう。

IMG_0595
裏ラベルに「Badel1862」とあったので作り手かと思えば、どうもクロアチアのワイン&スピリッツの流通会社のようですね。ただし、扱いワインは傘下のワイナリーのものを多く扱っているようで、今日のワインは「Vinarija Daruvar(ダルバル・ワイナリー)」というところが作っているようです。

「Badel 1862」の公式ページはこちら。扱いのワイン&スピリッツの紹介があります。

今日のワインやダルバル・ワイナリーの簡単な説明は載っていましたが詳細は不明...。

ダルバル(Daruvar)周辺のワイナリーを紹介するサイトにもう少し詳細がありました。

が、バデル1862の所有ワイナリーで主力がクロアチアの代表品種グラシェヴィーナ(Graševina)ということぐらいしかわかりません。

・グラシェヴィーナ主体

グラシェヴィーナ主体に、リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランをブレンドしてあるとのこと。ワインに関しては他の情報がなく以上です(笑)。

クロアチアの代表品種というグラシェヴィーナ(Graševina)を見てみましょう。
Welschriesling
オーストリアで多く栽培され「Welschriesling(ヴェルシュリースリング)」の名前で通っていますが、リースリングとは全く関係がありません。オーストリアで多いことからか、原産は北イタリアと書いてあることが多いのですが、最近の研究では東ヨーロッパのドナウ地方、ピンポイントでクロアチア原産とも言われており、メインの名称としてはクロアチア語のグラシェヴィーナ(Graševina)と呼ぶべきと提唱する学者(Dr. José Vouillamoz / スイスの生物学者)もいます。実際この品種の最大の産地はクロアチアです(4,459 ha)。2位がハンガリー、3位がやっとオーストリアです(3,338 ha @2016年)。もちろん、クロアチア国内でも30%以上を占める最大生産量の品種です。
2021年に行われたDNA分析でグラシェヴィーナは、コッカロナ・ネラ(Coccalona Nera)x未知の父品種の間の自然交配であるとされました。コッカロナ・ネラは黒ブドウですし、バルベーラの親ですから面白いですね。

ダルバル・ワイナリーを訪問しようと、ダルバル(Daruvar)の町中探したのですが、バデル1862傘下ということが災いして所在がはっきりしませんでした。しかし、いつものサーチ力を発揮し、ついにドンニ・ダルバル(Donji Daruvar)という隣町にあるのを発見しました(笑)。
Vinarija-Daruvar
写真は遠目に狙ったものを先ほどの紹介サイトから拝借しています。近寄ってみても「Badel 1862」の看板は上がっておらず「Vinarija Daruvar(ダルバル・ワイナリー)」と書いてあるのみ。やはり買収かなんかで傘下に収めた感じでしょうかね。
周辺に160haもの所有畑があり、グラシェヴィーナ主体に、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、シャルドネを栽培してるとのこと。まんま今日のワインですね。

さあ、今日はクロアチアのワイン産地の地図を描いたので他の産地や位置関係を見てみます。
GoogleMap_Croatia-DOP
鎌のような複雑な形をしたクロアチアですが、まず気候条件的に海岸沿いの Coastal Croatia (Primorska Ḫrvatska)と内陸部の Continental Croatia(Kontinentalna Ḫrvatska)に大きく分けられます。コースタル~ はアドリア海に面しているので海洋性気候なのがわかります。5つのサブリージョンがあります。(クロアチア語の表記をしていますが、「j」が[i]の発音になることに気をつければ、ほぼローマ字読みできそうです。例:Ḫrvatska Primorje → フルヴァツカ・プリモリエ)

Istria & Kvarner(Istria i Kvarner)>
 ・Istria / Ḫrvatska Istra[主要都市:Pula]
 ・Ḫrvatska Primorje(Croatian Coast)[主要都市:Rijeka]
 
Dalmatia(Dalmacija)>
 ・Sjeverna Dalmacija(Northern Dalmatia)[主要都市:Zadar
 ・Srednja i Južna Dalmacija(Central and South Dalmatia)[主要都市:Split / Dubrovnik]
 ・Dalmatinska Zagora(Dalmatian Interior)

コンチネンタル~ は内陸性気候ですが標高の違いもあり、高地部分とスラヴォニア平原・ドナウ川河畔の低地部分に分類されます。そして計7つのサブリージョンになります。

Croatian Uplands(Bregovita Ḫrvatska)>
 ・Moslavina
 ・Pokuplje
 ・Plešivica
 ・Zagorje - Međimurje
 ・Prigorje - Bilogora[首都ザグレブ(Zagreb)があります。]

Slavonia & Croatian Danube(Slavonija i Ḫrvatsko Podunavlje)>
 ・Podunavlje(Danube)
 ・Slavonija(Slavonia)

コースタル~ とコンチネンタル~ にそれぞれたくさんの小リージョン(地理的表示)が設定されていますが、細かすぎるのでパスします(笑)。さて、今日のワイナリーの名前にもなっていますダルバル(Daruvar)ですが、そんな認定された小リージョンで、いくつかの生産者が集まっている銘醸地のひとつのようです。地図で見るとプリゴリエ・ビロゴラ(Prigorje - Bilogora)とスラヴォニア(Slavonija)の際々にありますが、スラヴォニアの方に属します。

ご参考にクロアチアワイン公式(?)ページ(Croatian Wine)です。

産地ごとの解説や、EUワイン法やクロアチアの法令も載ってます。(クロアチア語ですが。笑)

見にくい地図で細かな解説をしてしまったので上記公式にあった簡易地図で口直し(笑)。
CroatiaWine
これぐらいなら覚えられそうです(笑)。


ラベル平面化画像。
IMG_0573
クロアチアではザクっと以下の3段階のワインの等級があります。順にEUワイン法のAOP(PDO)/IGP(PGI)/テーブルワイン(国名ワイン)に相当すると思われます。

Vrhunsko Vino(Premium Quality Wine)
Kvalitetno Vino(Quality Wine)
Stolno Vino(Table Wine)

裏ラベルを見ると今日のワインは「クワリテトノ・ヴィーノ(Kvalitetno Vino)」ですね。後ろに「KZP」が付いていますが、これは「Kontroliranog Zemljopisnog Podrijetla(原産地管理呼称)」のことで、今日のワインには原産地呼称として「Vinogorje Daruvar」が付いています。原産地呼称「Vinogorje Daruvar」は「Daruvar」含む周辺8つの小エリアが対象のようです。当然、プレミアム・クオリティ・ワインの「ヴルフンスコ・ヴィーノ(Vrḫunsko Vino)」にも「KZP」はあります。


さあ、スクリュー回転。
IMG_2963

Alc.12%。
オレンジ味のあるイエロー。
IMG_0594

梨、はっさく、涼やかな香り。
辛口アタック。
酸はありますが特徴は少ない感じ。
よって瓜感が出てきます(笑)。
あっさりスッキリ系ですね。
爽やかにスルスル飲める夏向きの風味です。
しかし、後味はやっぱり水臭い系かな。


*****


Vinarija Daruvar
Vezak Graševina 2020
WWWポイント77点



WhiteWhiteWine01

Zacharias Omikron Roditis-Moschofilero 2022

カルディで珍しくギリシャのワインが置いてました。品種はロディティスにモスコフィレロ? とにかく飲んだことがない品種なので面白そうです。PDO(Protected Designation of Origin=保護原産地呼称)は書いてありませんね。また指定品種じゃないのでPDOの条件を満たさないパターンでしょうか。しかし、PGI(Protected Geographical Indication=保護地理表示)も書いてないですね。とにかくゲットして調べてみましょう。

IMG_0569
ワイン作りを学びコンサルなどをしていたエリアス・ザハリアス(Elias Zacharias)さんがネメア(Nemea / Νεμέα)近くの現在のワイナリーを購入したのが1990年。2002年から自社で瓶詰めを開始しているそうです。インポーターのアズマのHPを見ると「ザシャリアス・ワイナリー」と紹介していますが、「ザハリアス」の方が原音に近いようです。


公式ページはそこそこ情報あり、英語表示もできるので助かります。

シリーズ名の「O(オミクロン)」というのはギリシャ語のアルファベットの「O」です。品種別のバリエタルのシリーズのようです。

・Roditis 70%
・Moschofilero 30%

と、ロディティス主体の2種ブレンドですね。ロディティスはコリンティア県(Κορινθία / Korinthía)の畑から、モスコフィレロはマンティネイア地方(Μαντινεία)からとなっています。出どころはハッキリしてそうですが、PDOもPGIも表示がありませんでしたね。後ほど詳しく見ますが、品種が規定品種でなくてPDOを名乗れず、2つの違うエリアからのブレンドでPGIも名乗れなくなったというのが真相のようです。醸造はクラシカルな白ワインの醸造法だそうで、当然樽はなく、それぞれの品種を個別に醸造した後でブレンドされます。


これがロディティス(Roditis / Ροδίτης)です。当然のギリシャ原産。
Roditis
写真からわかるように果実はオレンジ~赤みを帯びています。いわゆるグリですね。非常に古い品種で親子関係は判明していません。「Roditis」という名前は「赤みのある果実」というニュアンスがあるようですが、実は名前の謂れはなんとエーゲ海に浮かぶロードス島(Ρόδος / Rhodes)なんだそうです。

モスコフィレロ(Moschofilero / Μοσχοφίλερο)がこれ。こんな写真しか見つからず。
Moschofilero
これもギリシャ原産。日本語では「モスホフィレロ」と書いていたりしますが、ここでは「モスコフィレロ」としておきます。Forvoで聴くと「モスコフィエーロ」と聞こえるんですけどね(笑)。この写真も果実が黒っぽいですが、同じDNAで遺伝的に同一のクローンがたくさん存在し、それぞれ違うシノニムで呼ばれ、色以外にも葉の形状や果実の大きさ、味わいまで違うそうです。色は完全な白ブドウから黒ブドウまで揃ってるみたいですが(笑)、通常白ワインやロゼワインに仕立てられるようです。マケドニア地方とペロポネソス半島に多いそうです。


さあ、ザハリアスを訪問しましょう。ネメア(Nemea / Νεμέα)の町のすぐ近くです。
Zacharias01
2002年から自社瓶詰めを始めたということでまだ新しいワイナリーですが、賞もたくさん取っておりPDOネメアを代表する作り手のひとつになっているそうです。


ペロポネソス半島北側の地図で今日の作り手およびワインと周囲の産地の関係を見てみます。
Nemea-PGI-Corinthia
ペロポネソス半島はギリシャの大陸部分南端に広がる半島で、ギリシャの「本土」とはコリントス湾およびサロニコス湾で隔てられており(地図中央の)コリントス地峡でつながっています。 今日の作り手ザハリアスの場所を示したところが、まさにPDO Nemea(ΠΟΠ Νεμέα)になりますが、このPDOを名乗るにはアギオルギティコ(Agiorgitiko)100%でないといけません。ロディティスはコリンティア県(Κορινθία / Korinthía)の畑からでしたから、ロディティスだけを使っていたら、PGI Corinthia(ΠΓΕ Κορινθία)が名乗れたかもしれません。PGI(Protected Geographical Indication=保護地理表示)なら品種の縛りはないですからね。しかし今日のワインのモスコフィレロはマンティネイア地方(Μαντινεία)からなので、他地域のブドウをブレンドした時点でこれもアウトです。マンティネイア地方はモスコフィレロを85%以上使うとPDO Mantinia(ΠΟΠ Μαντινεία)が名乗れます。ちなみに地図の上の方、コリンティア県に隣接するPDO Patra(ΠΟΠ Πάτρα)はロディティス100%のPDOです。なるほど今日の作り手がロディティスも作っているのがうなづけます。

今日のザハリアスはネメア(Nemea / Νεμέα)にあるPDOネメア(PDO Nemea / ΠΟΠ Νεμέα)の作り手ですからね。ここのアギオルギティコ(Agiorgitiko)も一度試してみたいですね。
Agiorgitiko
カルディ、また置いてくれないですかね(笑)。アギオルギティコは当然ギリシャ原産の黒ブドウですが、古くからここネメア周辺(コリントス~ネメア~アルゴス)のみで栽培されてきたので、おそらく起源はこのあたりとされています。この品種も古すぎて親子関係は不明。一説には古代ギリシャではもう栽培されていたとか。コリントスもアルゴスも古代ギリシャの都市国家でしたからさもありなんです。

最後に恒例ですがギリシャ全体のワイン産地を俯瞰して位置関係を見ておきましょう。
Greece
ロディティスの語源というロードス島は見つかりましたか? エーゲ海のずいぶん南の方ですよ。


ラベル平面化画像。
IMG_0565
シリーズ名の「O(オミクロン)」というのはギリシャ語のアルファベットの「O」でしたね。「O」のまわりに書いてあるのはワイン関連のキーワードのようです。テロワール、歴史、ブドウ畑、バランス、ビジョン、伝統、色、香り、地形、太陽、コリンティア、ロディティス、モスコフィレロ、etc...


さあ、スクリュー回転。
IMG_0567
無印...。

Alc.11.5%。
少しオレンジ気味のイエロー。
IMG_0568

梨、ネーブル、爽やかな香りです。
辛口アタック。
酸はスッキリ系でいい感じに効いています。
ライム様の柑橘系の味わいは爽やかさのみ強調します。
軽くも感じるんですが、それが個性にも感じます。

なかなかいいです。
お初の品種がおいしいとうれしいですね。


*****


Zacharias
Omikron
Roditis-Moschofilero 2022
WWWポイント78点



WhiteWhiteWine01

Concha y Toro Casillero del Diablo Pedro Jiménez Reserva 2021 D.O. Valle del Limarí

チリ最大手コンチャイトロの人気シリーズ「カシジェロ・デル・ディアブロ」は結構どこにでも置いていますが、近所のスーパーで「ペドロ・ヒメネス」なる白ワインを見つけました。これはなかなか珍しいんじゃないかとゲットしてみました。ペドロ・ヒメネスというとスペインのシェリー酒の極甘口タイプのペドロ・ヒメネスを思い出します。品種もペドロ・ヒメネスといいますから、これは同じ品種なんですかね?

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コンチャイトロについては今さらですが、1883年ドン・メルチョール・コンチャイトロさん(Don Melchor Concha y Toro)が創業したチリの老舗かつ最大手の一つです。プレミアムワイン、アルマビバや、お馴染みコノスルなんかも傘下に収めています。サンライズやフロンテラというのが激安ワインとしてスーパーで売られていますが、昔はちょっといいラインと思っていた今日のカシジェロ・デル・ディアブロも結構スーパーに出回ってきています。

「Casillero del Diablo」は「悪魔のワインセラー」の意味です。130年も前、うますぎるワインということで盗難が絶えなかったところ、ドン・メルチョールさん(コンチャイトロ創設者)が「悪魔が住んでいる」とうわさを流すことでワインを守った逸話からきてるネーミングです。
Casillero01
コンチャイトロを見学すると、こんな風にこの悪魔が見られるようです。(笑)

コンチャイトロはチリ各地に畑や拠点をたくさん持っていますが、この逸話は創設の地サンティアゴ郊外のピルケにある畑であった話だそうです。どのあたりか探してみます。
名称未設定-1
これはマイポ川河畔にある拠点ですが、前述の逸話はブロック22というマイポ川から数メートルという場所だそうで、このあたりなんでしょうね。現在では観光客も受け入れてる施設にもなっていて、ストビューで敷地内もぐるぐる回れました。

コンチャイトロの公式ページはこれです。

一応ここにはコンチャイトロの全ラインナップがカバーされてますが、カシジェロ・デル・ディアブロのようなヒットシリーズは専用サイトがあります。

カシジェロ・デル・ディアブロ専用ページはこれになります。

ここには2021のデータシートもありましたが情報量はほぼなし。

・ペドロ・ヒメネス 100%

このセパージュと産地がリマリ・ヴァレーということしかわかりません。リマリ・ヴァレーはあとで確認するとして、まずはペドロ・ヒメネスを調べてみましょう。

これが今日のワインのペドロ・ヒメネス(Pedro Jiménez)ですが結構ややこしい(笑)。
Pedro-Jimenez-Pedro-Gimenez
まず、スペイン語では、「Ji」も「Gi」も「Xi」も「ヒ」と読むことを覚えておいてください。これが混乱の元凶のような気がしますが…(笑)。16世紀中頃にアルゼンチンやチリへ他の品種と共にヨーロッパから持ち込まれたとして、今日の Pedro Jiménez(これはシノニムで、正しくは Pedro Giménez もしくは Pedro Giménez Ruggieri だそう。)は、長らくスペインでシェリー酒に使われるペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)と同じものとされてきましたが、2003年のDNA分析で全く別の品種であることが判明しました。Pedro Giménez / Pedro Giménez Ruggieri(今日の Pedro Jiménez という表記はこれのチリでのシノニムになります。)は 「Criolla Chica (Listán Prieto) x Muscat d'Alexandrie」の交配で、Pedro Ximénez の方は「Hebén x 未知のパートナー」の交配になるそうです。Pedro Giménez の親がアルゼンチンのトロンテス(Torrontés)の親と同じなのが気になりますが、ここでは深掘りしないでおきます(笑)。20個のDNAマーカーのみでの判定なのでファイナルアンサーというわけではないようです。

スペインでシェリー酒に使われるペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)の方がこれ。
Pedro-Ximenez-(with-synonym
アルゼンチンでは Pedro Gimenez Rio Colorado と言い区別できるそうです。整理すると…。

Pedro Giménez(Pedro Giménez Ruggieri)
Pedro Ximénez(Pedro Gimenez Rio Colorado)

ということで、Pedro Giménez のシノニムの今日の Pedro Jiménez はシェリー酒の Pedro Ximénez とは別物ということです。(これ全部発音が「ペドロ・ヒメネス」!)ポピュラーなのはスペインの本家(?)シェリー酒の方かと思いきや、アルゼンチンとチリにしかない今日のペドロ・ヒメネスの方が栽培面積は多いみたいです。(2016年データ)

・Pedro Ximénez(Pedro Gimenez Rio Colorado):合計 8,810 ha
(スペイン)8,528 ha
(ポルトガル)259 ha

・Pedro Giménez(Pedro Giménez Ruggieri):合計 15,576 ha
(アルゼンチン)11,197 ha
(チリ)4,379 ha

シェリー酒の話が出てきたので簡単にシェリー酒に触れておきます。スペイン・アンダルシア州カディス県(Cádiz)ヘレス・デ・ラ・フロンテラ(Jerez de la Frontera)とその周辺地域で生産される酒精強化ワインの総称で、ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xérès-Sherry)とマンサニージャ=サンルーカル・デ・バラメダ(Manzanilla - Sanlúcar de Barrameda)という名前でスペインの原産地呼称制度のDO(Denominación de Origen)に認定されています。(ポートワインやマデイラワインと合わせて世界三大酒精強化ワインとされます。)参考:シェリー酒公式(?)HP
JEREZ-de-la-Frontera
スペイン人が「へレス」と言えばシェリー酒のことです。シェリー酒造りに使用が認められているブドウは以下の3種あります。

・パロミノ(Palomino)
・モスカテル(Moscatel)
・ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)

栽培比率の95%以上がパロミノ種ですので、ペドロ・ヒメネスは数%で、もっぱら「ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximènez)」という品種名と同じ名前で呼ばれる非常に濃い色の極甘口のシェリーになります。モスカテル(Moscatel)も「モスカテル」という甘口ワインに仕上げられます。(ともにブドウを天日干しすることで甘口にします。これらは「Vino Dulce Natural」と呼ばれます。)よって、辛口のシェリーはパロミノ種で作られているわけで、辛口シェリーを「Vino Generoso」と呼びます。(Fino、Manzanilla、Amontillado、Oloroso、Palo Cortado などのタイプがありますが、今日の本題ではないので説明は割愛。)あと、「Vino Generoso de Licor」という半甘口があり、辛口のフィノ(Fino)もしくはマンサニージャ(Manzanilla)に極甘口のペドロ・ヒメネスをブレンドしたものを「Pale Cream」と呼び、アモンティジャード(Amontillado)ベースのものは「Medium」、オロロソ(Oloroso)ベースのものは「Cream」と呼ばれます。急に英語名で変な感じですが、スペイン語ではこの「クリーム」は「Amoroso」と言うようです。


かなり脱線したので今日のワインのDO、リマリ・ヴァレー(Valle del Limarí)を確認。
Chile_Coquimbo_Elqui
チリのブドウの産地としては北側のコキンボ州になります。真ん中あたりのリマリ川の流域がDO Valle del Limarí です。南半球ですから北部は結構温暖な気候となります。


ラベル平面化画像。
IMG_0487
ペドロ・ヒメネスはチリの土着の品種なんて説明がありますね。

インポーターシールはこの有り様です。
IMG_0486
おっと、酸味料に安定剤(CMC)といろいろと入っています。


さあ、スクリュー回転。
IMG_0549
キャップにはディアブロ(悪魔)の顔がエンボスされています。

Alc.12%。
淡いイエロー。
IMG_0547

レモン、ライム、わら。
かすかにペトロールも感じます。
辛口アタック。
黄桃かメロンかのような果実味あり。
決して安物品種じゃないと思わせる貫禄です。
酸も苦味もほどよくあってバランスの妙と言えます。
CMCでコク出して、酸味料で補酸してあるんでしょうが、
う~ん、結構楽しめました(笑)。


*****


Concha y Toro
Casillero del Diablo
Pedro Jiménez Reserva 2021
D.O. Valle del
Limarí
WWWポイント79点



WhiteWhiteWine01
--- Red Red Wine ---

:「偉いワイン」探しの備忘録

"Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない"

かの有名なSFの名言です。(笑)
あくまで自己流にワインの世界を日々記録しています。
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尚、 各記事末の「RRWポイント」なる点数はロバート・パーカー気取りのマイ評価です。

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