今年もボジョレー・ヌーヴォーが解禁されます。まあ、縁起物ということで(笑)機会があれば試すんですが、正直ガメ(Gamay)という品種のクセもあって、なかなか積極的に飲みたいとは思わないんですよね。ただし、同じガメから作るボジョレーのワインでもクリュ・デュ・ボジョレーとなれば話は別。この作り手の2018年のモルゴン(Morgon)を2年前に試していますが、驚きのうまさでした。今年はムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)をいただこうと思います。パーカーおじさんも92点をつけた「これ絶対うまいやつ♪」です。
シャトー・デ・ジャックですが、クリュ・デュ・ボジョレー最高峰の一つ、ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)で最も名声を誇ってきた由緒あるワイナリーだそうで、そこを1996年にルイ・ジャド社(Louis Jadot)が取得しています。某ワインブロガーの大御所が「特有のガメイ臭と呼ばれる匂いが好きにはなれなかったのだ。(中略)ところがネゴシアンのルイ・ジャドー社がシャトー・デ・ジャックを買収してから私の考えは一変した。」と語っていたのが印象に残っています。買収とかがいいように働くこともあるんですね。
ボジョレー・ヌーヴォーは、毎年11月の第3木曜日解禁なので、今年は11月16日ですね。このリリースに間に合うように(日本向けなどは空輸の時間も含め…)収穫したガメをマセラシオン・カルボニック法でちゃちゃっと醸されます。今日のワインはクリュ・デュ・ボジョレーなのでマセラシオン・カルボニック法ではなく通常の醸造で作られ熟成にも耐えられるものです。と言うか、クリュ・デュ・ボジョレーを代表するシャトー・デ・ジャック自体が過去から一切マセラシオン・カルボニック法を行わず、1950年代から起こったこの流れ(マセラシオン・カルボニック法によるボジョレー・ヌーヴォーの生産)に異を唱えていたということらしいです。ゴイゴイスー。
公式ページは単独であり、内容も充実。ただし、ルイ・ジャドのことは一言も書かれてません。
データシート完備。今日のワインは素のムーラン・ナ・ヴァンだと思うんですが、「Roches Rouges(赤い岩)」というのは畑名でしょうかね。これは載っていません。
・ガメ 100%
ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)、もしくは、ムーラン・ナ・ヴァン・クリュ・デュ・ボジョレー(Moulin-à-Vent cru du Beaujolais)がAOC名になります。ボジョレーのAOCについては後ほど掘り下げます。熟成は、半分セメントタンク、半分ユーズド(新樽含む1~2年落ち)のフレンチオーク樽で10ヶ月だそうです。
ガメ(Gamay)です。正式名称は、Gamay Noir(Gamay N)です。
日本では「Gamay」の綴りからの類推でしょうか、「ガメイ」の方が通りがよさそうです。しかし現地の発音を聞くと「ギャメ」と聞こえるんですよね。これを「ガメイ」と言うのなら、「シャルドネ(Chardonnay)」は「シャルドネイ」と言わないとおかしいんですけどね(笑)。
親子関係は、ホイニッシュ・ヴァイス(Heunisch Weiß)=グエ・ブラン(Gouais blanc) x ピノ・ノワールです(VIVC)。なんと父方はピノ・ノワール。確かにブレンドの親和性はありますからね。しかし、味わいはかなり差があるような…。
ガメには亜種が多く、赤い果肉を持つタンテュリエ種もあり、それらと区別するために「Gamay Noir à Jus Blanc(白い果汁の黒いガメ)」というフルネームがあるようです。VIVCに登録されている正式名称は「Gamay Noir」です。
コート・ド・ボーヌのサントーバン(Saint-Aubin)に「Gamay」という集落があり、品種名の起源になったという説がありますが、14世紀(1395年)には初代ブルゴーニュ公「豪胆公」フィリップ2世が「Gaamez」という品種(名前からしてたぶんガメらしいです。)について「御触れ」を出しています…「苦くてあまりにも品質の悪いワインが量産されるこの最悪な品種を、引っこ抜くか、新たに植えないようにせよ」という禁止令です。この禁止令は18世紀半ばまで何度か再承認され続きました。そのせいかごく最近までこの品種の評判はすこぶる悪かったそうです。おかげでガメという品種はボジョレーまで逃げ延びて定着したということのようです。ガメは現在フランス中で栽培され、やはりその90%がボジョレー(約20,000ha)らしいですが、ロワールにも多いですし(約5,000ha)、あながち嫌われ品種とまでは言えないですよね。
さあ、シャトー・デ・ジャックを訪問。ボジョレーなのに(失礼!)立派ですよ。
ロマネシュ・トラン(Romanèche-Thorins)というコミューンにあります。ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)他、モルゴン(Morgon)、フルーリー(Fleurie)、シェナ(Chénas)などに総面積約80haの自社畑を持ち、それをまとめてルイ・ジャドが取得したというわけです。大手はすごいですね。しかし、お陰で温度管理システムを備えた最新型コンクリートタンクやステンレスタンクが導入されたりと施設の刷新には大きな投資がなされています。昨今の高評価もルイ・ジャドのお陰と言えるかもしれません。
ボジョレーの全体像をおさらいしておきましょう。まずINAOの地図からの拝借です。
これが、AOC Beaujolais / Beaujolais Supérieur の対象コミューンです。(たぶん、96あります。)赤・白・ロゼがあり、赤はガメが主体です。(AOC Beaujolais Supérieur は赤のみ。最低アルコール度数の規定が高い。)白は少ないですがシャルドネ主体です。この AOC Beaujolais の内の30コミューンは「AOC Beaujolais + コミューン名」の表示ができます。以下に列挙します。
また AOC Beaujolais の北部の38コミューンが、AOC Beaujolais Villages を名乗ることができます。これらは地続きで、以下の地図の黄緑色にした部分ひとかたまりが AOC Beaujolais Villages になります。その中に、ボジョレー最上級の「Cru du Beaujolais」が10ヶ所あるという形です。この地図はGoogle Map上に以上のボジョレーのAOCのすべてを表現してみたものです。先ほどのコミューン名が付記できる30コミューンは名前を書き込んだだけですが(笑)。
上のINAOの AOC Beaujolais コミューン地図と見比べると、Cru du Beaujolais は、Saint-Amour(コミューンは Saint-Amour-Bellevue)、Morgon、Fleurie、Chiroubles 以外は複数のコミューンから成り立っていることがわかります。また、いくつかの Cru du Beaujolais はオーバーラップしています。(Moulin-à-Vent と Chénas は、Chénas のコミューンが共通。4コミューンから成る Côte de Brouilly は、6コミューンから成る Brouilly に包含されています。)今日の作り手、シャトー・デ・ジャックの所在も示しました。ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)のエリアにあるのがわかりますね。
クリュ・デュ・ボジョレー(Cru du Beaujolais)を列記しておきます。
全体像をおさらいをすると…
・AOC Beaujolais
・AOC Beaujolais + nom de la commune de provenance des raisins
・AOC Beaujolais Villages
以上は、赤・白・ロゼがあり、新酒、いわゆるヌーヴォー(Vin Primeur ou Nouveau)の設定があります。
・AOC Beaujolais Supérieur
・Cru du Beaujolais
以上は、赤のみ。新酒(Primeur / Nouveau)の設定はありません。クリュ・デュ・ボジョレーにはヌーヴォーはないということです。
エチケット平面化画像。
驚いたことに「ボジョレー」の文字はひとつもありません。AOCムーラン・ナ・ヴァンです。きっぱり。
しかし情けないのが、この無神経なインポーターシール。
仏英語併記のメッセージなので、作り手が輸出先で読んでほしいということのはずです。
さあ、抜栓。
コルク平面化。
シャトー・デ・ジャックですが、クリュ・デュ・ボジョレー最高峰の一つ、ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)で最も名声を誇ってきた由緒あるワイナリーだそうで、そこを1996年にルイ・ジャド社(Louis Jadot)が取得しています。某ワインブロガーの大御所が「特有のガメイ臭と呼ばれる匂いが好きにはなれなかったのだ。(中略)ところがネゴシアンのルイ・ジャドー社がシャトー・デ・ジャックを買収してから私の考えは一変した。」と語っていたのが印象に残っています。買収とかがいいように働くこともあるんですね。
ボジョレー・ヌーヴォーは、毎年11月の第3木曜日解禁なので、今年は11月16日ですね。このリリースに間に合うように(日本向けなどは空輸の時間も含め…)収穫したガメをマセラシオン・カルボニック法でちゃちゃっと醸されます。今日のワインはクリュ・デュ・ボジョレーなのでマセラシオン・カルボニック法ではなく通常の醸造で作られ熟成にも耐えられるものです。と言うか、クリュ・デュ・ボジョレーを代表するシャトー・デ・ジャック自体が過去から一切マセラシオン・カルボニック法を行わず、1950年代から起こったこの流れ(マセラシオン・カルボニック法によるボジョレー・ヌーヴォーの生産)に異を唱えていたということらしいです。ゴイゴイスー。
マセラシオン・カルボニック(Macération Carbonique)は、いわゆる「炭酸ガス浸漬法」のことで、ブドウを破砕せず房ごと密閉したタンクに入れ、炭酸ガス(Gaz Carbonique)を充満させ酸素をブロックして短期間で醸すやり方です。これにより、タンニンや渋み・苦みが通常のワインより少なくなり、軽くてフレッシュなワインになるとともに、独特の香りも生まれます。キャンディーのようであったりバナナの香りのようなアレです。「マセラシオン・カルボニック香」なんて言うらしいですね。
公式ページは単独であり、内容も充実。ただし、ルイ・ジャドのことは一言も書かれてません。
データシート完備。今日のワインは素のムーラン・ナ・ヴァンだと思うんですが、「Roches Rouges(赤い岩)」というのは畑名でしょうかね。これは載っていません。
・ガメ 100%
ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)、もしくは、ムーラン・ナ・ヴァン・クリュ・デュ・ボジョレー(Moulin-à-Vent cru du Beaujolais)がAOC名になります。ボジョレーのAOCについては後ほど掘り下げます。熟成は、半分セメントタンク、半分ユーズド(新樽含む1~2年落ち)のフレンチオーク樽で10ヶ月だそうです。
ガメ(Gamay)です。正式名称は、Gamay Noir(Gamay N)です。
日本では「Gamay」の綴りからの類推でしょうか、「ガメイ」の方が通りがよさそうです。しかし現地の発音を聞くと「ギャメ」と聞こえるんですよね。これを「ガメイ」と言うのなら、「シャルドネ(Chardonnay)」は「シャルドネイ」と言わないとおかしいんですけどね(笑)。
親子関係は、ホイニッシュ・ヴァイス(Heunisch Weiß)=グエ・ブラン(Gouais blanc) x ピノ・ノワールです(VIVC)。なんと父方はピノ・ノワール。確かにブレンドの親和性はありますからね。しかし、味わいはかなり差があるような…。
ガメには亜種が多く、赤い果肉を持つタンテュリエ種もあり、それらと区別するために「Gamay Noir à Jus Blanc(白い果汁の黒いガメ)」というフルネームがあるようです。VIVCに登録されている正式名称は「Gamay Noir」です。
コート・ド・ボーヌのサントーバン(Saint-Aubin)に「Gamay」という集落があり、品種名の起源になったという説がありますが、14世紀(1395年)には初代ブルゴーニュ公「豪胆公」フィリップ2世が「Gaamez」という品種(名前からしてたぶんガメらしいです。)について「御触れ」を出しています…「苦くてあまりにも品質の悪いワインが量産されるこの最悪な品種を、引っこ抜くか、新たに植えないようにせよ」という禁止令です。この禁止令は18世紀半ばまで何度か再承認され続きました。そのせいかごく最近までこの品種の評判はすこぶる悪かったそうです。おかげでガメという品種はボジョレーまで逃げ延びて定着したということのようです。ガメは現在フランス中で栽培され、やはりその90%がボジョレー(約20,000ha)らしいですが、ロワールにも多いですし(約5,000ha)、あながち嫌われ品種とまでは言えないですよね。
さあ、シャトー・デ・ジャックを訪問。ボジョレーなのに(失礼!)立派ですよ。
ロマネシュ・トラン(Romanèche-Thorins)というコミューンにあります。ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)他、モルゴン(Morgon)、フルーリー(Fleurie)、シェナ(Chénas)などに総面積約80haの自社畑を持ち、それをまとめてルイ・ジャドが取得したというわけです。大手はすごいですね。しかし、お陰で温度管理システムを備えた最新型コンクリートタンクやステンレスタンクが導入されたりと施設の刷新には大きな投資がなされています。昨今の高評価もルイ・ジャドのお陰と言えるかもしれません。
ボジョレーの全体像をおさらいしておきましょう。まずINAOの地図からの拝借です。
これが、AOC Beaujolais / Beaujolais Supérieur の対象コミューンです。(たぶん、96あります。)赤・白・ロゼがあり、赤はガメが主体です。(AOC Beaujolais Supérieur は赤のみ。最低アルコール度数の規定が高い。)白は少ないですがシャルドネ主体です。この AOC Beaujolais の内の30コミューンは「AOC Beaujolais + コミューン名」の表示ができます。以下に列挙します。
・Beaujolais Beaujeu
・Beaujolais Blacé
・Beaujolais Cercié
・Beaujolais Chânes
・Beaujolais Charentay
・Beaujolais Denicé
・Beaujolais Emeringes
・Beaujolais Jullié
・Beaujolais La Chapelle-de-Guinchay
・Beaujolais Lancié
・Beaujolais Lantignié
・Beaujolais Le Perréon
・Beaujolais Les Ardillats
・Beaujolais Leynes
・Beaujolais Marchampt
・Beaujolais Montmelas-Saint-Sorlin
・Beaujolais Odenas
・Beaujolais Pruzilly
・Beaujolais Quincié-en-Beaujolais
・Beaujolais Rivolet
・Beaujolais Romanèche-Thorins
・Beaujolais Saint-Didier-sur-Beaujeu
・Beaujolais Saint-Etienne-des-Oullières
・Beaujolais Saint-Etienne-la-Varenne
・Beaujolais Saint-Julien
・Beaujolais Saint-Lager
・Beaujolais Saint-Symphorien-d'Ancelles
・Beaujolais Salles-Arbuissonnas-en-Beaujolais
・Beaujolais Vaux-en-Beaujolais
・Beaujolais Vauxrenard
また AOC Beaujolais の北部の38コミューンが、AOC Beaujolais Villages を名乗ることができます。これらは地続きで、以下の地図の黄緑色にした部分ひとかたまりが AOC Beaujolais Villages になります。その中に、ボジョレー最上級の「Cru du Beaujolais」が10ヶ所あるという形です。この地図はGoogle Map上に以上のボジョレーのAOCのすべてを表現してみたものです。先ほどのコミューン名が付記できる30コミューンは名前を書き込んだだけですが(笑)。
上のINAOの AOC Beaujolais コミューン地図と見比べると、Cru du Beaujolais は、Saint-Amour(コミューンは Saint-Amour-Bellevue)、Morgon、Fleurie、Chiroubles 以外は複数のコミューンから成り立っていることがわかります。また、いくつかの Cru du Beaujolais はオーバーラップしています。(Moulin-à-Vent と Chénas は、Chénas のコミューンが共通。4コミューンから成る Côte de Brouilly は、6コミューンから成る Brouilly に包含されています。)今日の作り手、シャトー・デ・ジャックの所在も示しました。ムーラン・ナ・ヴァン(Moulin-à-Vent)のエリアにあるのがわかりますね。
クリュ・デュ・ボジョレー(Cru du Beaujolais)を列記しておきます。
・Saint-amour(サン・タムール)
・Juliénas(ジュリエナ)
・Chénas(シェナ)
・Moulin-à-Vent(ムーラン・ナ・ヴァン)
・Fleurie(フルーリー)
・Chiroubles(シルーブル)
・Morgon(モルゴン)
・Régnié(レニエ)
・Brouilly(ブルイィ)
・Côte de Brouilly(コート・ド・ブルイィ)
全体像をおさらいをすると…
・AOC Beaujolais
・AOC Beaujolais + nom de la commune de provenance des raisins
・AOC Beaujolais Villages
以上は、赤・白・ロゼがあり、新酒、いわゆるヌーヴォー(Vin Primeur ou Nouveau)の設定があります。
・AOC Beaujolais Supérieur
・Cru du Beaujolais
以上は、赤のみ。新酒(Primeur / Nouveau)の設定はありません。クリュ・デュ・ボジョレーにはヌーヴォーはないということです。
エチケット平面化画像。
驚いたことに「ボジョレー」の文字はひとつもありません。AOCムーラン・ナ・ヴァンです。きっぱり。
しかし情けないのが、この無神経なインポーターシール。
仏英語併記のメッセージなので、作り手が輸出先で読んでほしいということのはずです。
さあ、抜栓。
コルク平面化。
Alc.14%。
濃いめルビーのエッジは微かなオレンジ色。
フランボワーズ、プラム、ゼラニウムっぽさも。
辛口アタック。
酸がいい具合に盛り立てる味は、
深みがあるのにフルーティなのが絶妙なバランスです。
喉元にピリッとくるタンニンもいいアクセント。
ちゃんと余韻に流れていくのがまたいい。
*****
Louis Jadot
Château des Jacques
Moulin-à-Vent 2019
Roches Rouges
Château des Jacques
Moulin-à-Vent 2019
Roches Rouges
RRWポイント | 92点 |
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