Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録

ワインについて、僕SFが自分用のメモ・備忘録として書き込む場所です。 Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない。 かの有名な僕の名言です。(笑) あくまで自己流に、(お手頃価格の)ワインの世界を日々記録しています。 いつかその「偉いワイン」に出会うために。

Bordeaux_Supérieur

Gonet-Médeville Cru Monplasir 2019 Bordeaux Supérieur

なんとも情報量のないエチケットです。裏を見るとAOCボルドー・シュペリュールだそうです。普通ならこんなの素通りするんですが、ワインに詳しそうな店員さんが実際に試してかなりおいしかったと熱く勧めてきます(笑)。店頭のPOPには「シャトー・マルゴー、パルメに隣接する畑を持つ」なんて書いています。ええい、いっちょ乗せられて試してみるか。

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作り手は裏ラベルから「Gonet-Médeville」ということと、所在はプレニャック(Preignac)ということがわかりました。あれっ? プレニャックってAOCソーテルヌのコミューンじゃなかったっけ? マルゴー村とどんな関係があるのでしょう。裏ラベルにはHPのURLも載ってましたが、トップページに顔写真だけ(たぶん、ゴネ・メデビル夫妻)の工事中です。困りました。

工事中の公式サイトはこれです。とにかく情報を集めにネットサーフィン(死語)しました。

日本のインポーターは株式会社nakatoですが、シャトー・デ・ゼラン(Château des Eyrins)のワインということで紹介されています。まずはワイン情報。

・メルロー 75%
・カベルネ・ソーヴィニヨン 20%
・カベルネ・フラン 5%

熟成は、新樽率10%オーク樽で10ヶ月と書いていますが、ネット情報を総合すると、正しくは総量の10%をオーク樽で、残り90%をバットで10ヶ月の熟成ということらしいです。

そんなネットサーフィンでわかってきたのがこういうことです。オーナーのゴネ・メデビル(Gonet-Médeville)夫妻というのが、ジュリー(Julie)さんとザビエル(Xavier)さんで、 お二人の出自がユニーク。ジュリーさんの家族はソーテルヌのシャトー・ジレット(Château Gillette)で、ザビエルさんはシャンパーニュのル・メニル(Le Mesnil-sur-Oger)の生産者の出身だそうです。ふたりで「Vignobles Gonet-Médeville」と名乗ってワインを作っています。
裏ラベルにあった所在のプレニャック(Preignac)というのはジュリーさんの親元、ソーテルヌのシャトー・ジレット(Château Gillette)ということになります。そしてお二人は、2009年9月にマルゴー村にあるシャトー・デ・ゼラン(Château des Eyrins)と、今日のワインのクリュ・モンプラジール(Cru Monplaisir)の畑を買収しました。この畑がシャトー・ディッサンとシャトー・マルゴーに隣接した2区画で構成されているとのことです。

まずは、裏ラベルにあった「Gonet-Médeville」を訪問します。
Monplasir01
プレニャックのコミューンの外れ、ガロンヌ川沿いにあります。おそらくここでシャトー・ジレットを作っていると思います。もちろんAOCソーテルヌの甘口白ワインを出しています。

AOCソーテルヌの対象コミューンをINAOの地図でおさらいしておきましょう。
Sauternes
プレニャック村はシャトー・ディケムのあるソーテルヌ村とも隣接し、ソーテルヌ第1級のシャトー・スデュィロー(Ch. Suduiraut)があったりします。バルサック(Barsac)村はAOCバルサックも名乗れるんでしたね。

さて、プレニャックや今日の作り手ゴネ・メデビルの位置関係を把握します。
Bordeaux_Cotes-de-Bordeaux
横着をして「AOC Côtes de Bordeaux」の地図の上に記入しました(笑)。下の方のプレニャック、ソーテルヌのあたりが先ほど訪問したゴネ・メデビルの本拠地です。上の方のマルゴーのあたりには夫妻が取得したというシャトー・デ・ゼラン(Château des Eyrins)も示しておきました。今これを書いていてわかったんですが、マルゴー村とカントナック村は2017年に合併して「マルゴー・カントナック(Margaux-Cantenac)」という新しいコミューンになったんですってね。知らんかった…。

さあ、マルゴー村へ赴いて(正しくはマルゴー・カントナック村)、シャトー・デ・ゼラン(Château des Eyrins)を訪問すると、壁にはクリュ・モンプレジールの文字が…。
Monplasir00
場所はシャトー・ラスコンブのお隣さんでした。

いつものシャトーロゴ入りマルゴー・カントナック地図にも書き込んでみました。
Margaux_中心周辺
しかし、えらいところにシャトーを構えたもんですね。そして、クリュ・モンプラジール(Cru Monplaisir)の畑はシャトー・ディッサンとシャトー・マルゴーに隣接した2区画ですからね。この畑の正確な場所わかりませんが、この地図であの辺りかな~とか想像しておきましょう(笑)。


さて、今日のワインはAOCボルドー・シュペリュール。
普段はスルーしている AOC Bordeaux Supérieur を深掘りしてみましょう。
Machorre02
AOC Bordeaux Supérieur の対象範囲は、ご覧のINAOの地図のようにAOC Bordeaux と全く同じ広範囲になります。境界はかなりの部分ジロンド県のそれと共通です。じゃあ、AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux は何が違うのかということなんですが、なぜか日本ソムリエ協会の教本でも「ボルドー・シュペリュールの方が生産条件が厳しい」とあるだけで詳しく書いてません。なぜなんでしょうね。
 
仕方がないので、2021年3月付けの最新の官報を読み解いてみましょうか。これはフランス農業食料省 MAA(Ministère de l'Agriculture et de l'Alimentation)が出しているもので、INAO(Institut National de l'Origine et de la Qualité、旧称 Institut National des Appellations d'Origine)というのはその傘下になります。AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux は別の文書になっていますが、内容も膨大ながら対象地域や使用品種などほとんどが共通のようです。違いを探すのにひと苦労しましたが、はっきり違うのは熟成期間でした。以下、Rouge(赤)についてです。白(Blanc)はまた違っていて<カッコ書き>しました。

AOC Bordeaux Supérieur:約9ヶ月(収穫翌年の6月15日まで) <白は約3ヶ月>
AOC Bordeaux:約3ヶ月(収穫年の12月31日まで) <白は規定なし>

あと、最低アルコール度数がAOCボルドー・シュペリュールで11%、AOCボルドーで10.5%となってました。白はAOCボルドー・シュペリュールで12%、AOCボルドーで10.0%です。他にも細々といろいろ規定があるようですが、これ以上深読みはしないでおきます。(笑)


エチケット平面化画像。
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表は情報量ほぼなしですが、裏にはセパージュが書いてあって助かります。AOCボルドー・シュペリュールというのも裏でわかります。

インポーターシールは裏ラベルを隠していませんでした。
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さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.14.5%。
ガーネット。
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黒ベリー、スミレ、ウェットで上品な樽香。
辛口アタック。
程良いタンニンの刺激を見せながら滑り込む構造感ある味わい。
しっかりした複雑味湛えたコクは貫禄ありです。
バランスが崩れず、たおやかに余韻に流れれていきます。
メルローの上品な軽さも出ています。

店員さんの言うように確かにいいですね。
思わぬところでいいワインに出会えました。


*****

Vignobles Gonet-Médeville
Cru Monplasir 2019
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 95点


Château Croix Mouton Sans Soufre 2019 Bordeaux Supérieur

シンボリックな「M」のマークに「Château Croix Mouton」とあります。以前、シャトー・クロワ・ムートンの2015は試していますが、エチケットの紙質がわら半紙調でボトルもブルゴーニュ型と見かけがずいぶん変わっています。ふむふむとよく読むと、サン・スフルSans Soufre)、つまり亜硫酸塩無添加バージョンということのようです。流行りの自然派ワインですね。おいしくするための自然派なら大歓迎なんですけど(笑)、とにかく試してみましょう。

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シャトー・クロワ・ムートンは、2003年まではシャトー・ムートンだったところです。かのメドック第1級のシャトー・ムートン・ロートシルトよりも古いらしいので本家シャトー・ムートンということらしいのですが、「紛らわしい!」と訴えられて、あっさり名称変更してしまったそうです。シャトー・ムートン・ロートシルトの方は、1973年にズルっこして1級になったズルいやつという印象があるので、この名前の件からも、とことん体裁にこだわる痛いシャトーと思ってしまいます(笑)。名前に恥じないくらいおいしいんですけどね。悲しいかな、やっぱり「偉大なワイン」の方が「偉い」んですね。(笑)


公式ページはオーナーのジャン・フィリップ・ジャヌイクス(Jean Philippe Janoueix)名です。
CroixMouton00
その中の所有ワイナリーのひとつがクロワ・ムートンになります。通常の亜硫酸塩入りのワインは載ってますが、今日の自然派サン・スフル版は残念ながら見当たりません。仕方がないのでネット情報から。
・メルロー 100%
酸化防止剤として必須である亜硫酸塩を加えずに作るためには、雑菌の繁殖など起こらないよう細心のケアをしなくてはなりません。このワインは、ステンレスタンクで熟成後、珍しい0.2ミクロンのクロスフィルターで処理し、清澄剤も不使用でリリースされます。ただし、発酵・熟成の過程で酵母から微量の亜硫酸は生成されたりしますから、正確には「サン・スフル(Sans Soufre)」=「亜硫酸なし」ではなくて、製造過程で亜硫酸塩を加えていないという意味で「サン・ザジュー・ド・スフル(Sans ajout de Soufre)」=「亜硫酸無添加」というのが正しいフランス語表現でしょう。


シャトー・クロワ・ムートンを訪問してみましょう。
CroixMouton01
ボルドー右岸のドルドーニュ川河畔にありますが、ストビューでまったく近づけず、またHPにもシャトーの画像が載ってないので苦肉の策です。川の対岸から望みました(笑)。ないよりマシくらいの見え方ですね。

このシャトー・クロワ・ムートンは、ジャヌイクス家のワインビジネスの4代目になるジャン・フィリップ・ジャヌイクス(Jean Philippe Janoueix)さんが1997年に取得しています。なので、印象的なエチケットの「M」のデザインは1998年のミレジムから始まっています。
ジャヌイクス家のワインビジネスの歴史はジャン・フィリップさんの曽祖父の時代(1867年)にさかのぼります。ジャン・フィリップさんが現オーナーとなったのは1994年からです。

この方はサンテミリオンやポムロールにもシャトーをお持ちです。所有シャトーの所在を示す地図が公式ページにあったので貼っておきます。
CroixMouton02
シャトー・クロワ・ムートンの至近のシャトー・ル・コンセイエ(Château Le Conseiller)というのは同じ場所にあるようです。(ニコイチ)

いつものボルドー右岸地図にも所在を示しておきましょう。
CroixMouton03
川沿いにちょっと行けばフロンサックですね。


エチケット平面化画像。
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裏ラベルなしの一枚もの。作り手(ジャン・フィリップ・ジャヌイクスさん)のメッセージがあり「亜硫酸無添加は傷みやすいので冷蔵保存して2年以内に消費せよ」ということです。
汚い剥がし跡がみえますが…。

インポーターシールがこんな感じで貼ってました。(怒)
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わざわざ日本語の説明文が付いていますが、製造過程で発生した亜硫酸塩が微量に検出されたので、「酸化防止剤(亜硫酸塩)」の表記にしたとなっています。でも、用途が「酸化防止」の時の表記はこれでいいですが、自然発生したものも「酸化防止」とすべきものでしょうか? 通常、食品添加物は目的に応じた用途名と物質名を併記することが義務付けられていますが、この場合、自然発生したわけで「酸化防止」が目的じゃないですよね。なんなんだか…。
こうなると「サン・スフル」を売り文句にするのもひと苦労ですね。個人的には、劇的にワインがうまくなるならいいですが、気持ち健康的なイメージのためだけの「自然派」なら別にこだわりたいとは思いませんが。(笑)


さあ、抜栓。
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エチケットの紙質といい自然派の演出でしょうか、キャップシールが透明になってます。

コルク平面化。
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DIAM3を採用です。ミレジムもしっかり入ってますね。

Alc.14.5%。
濃い濃いガーネット。細かめの涙は色付きです。
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黒ベリー、ブルーベリー、果実感の高い香りです。
還元臭ほか異臭はないですね。
辛口アタック。
程よい酸に誘われ、厚み・立体感しっかりした味わいに到達します。
喉越しでシルキーなタンニンを纏って余韻に突入します。
なかなかのバランスは全く崩れず、
フィニッシュまで至福が続きます。

ドラマチック。なかなかレベル高し。
亜硫酸入りの通常のクロワ・ムートンよりいいんじゃない。(笑)


*****

Château Croix Mouton
Sans Soufre 2019
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 93点


Château Recougne Carmenere 2014 Bordeaux Supérieur

チリのある名門ワイナリーを訪問した時「ここだけの話、ボルドーのブドウはチリのブドウだよ。」と言われました。その昔フィロキセラで壊滅したブドウを復活させるため、ボルドーからチリへ持ち込まれたブドウが再度海を渡ったことを指しています。確かに元は本国産とはいえ、結果的にチリと同じブドウになったわけです(笑)。しかし、わざわざチリにボルドーから持ち込まれたのに、ボルドーに帰らなかった品種があります。カルメネール(Carmenère / Carménère)です。今日のワインは珍しいボルドーのカルメネールのモノセパージュです。

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作り手はボルドー右岸フロンサックのエリアにあるシャトー・ルクーニュです。その昔アンリ4世(16~17世紀)が滞在時に飲んだワインに感動し、シャトー・ルクーニュを Terra Recognita(認められた土地)とすることを宣言されたそうな。ラベルの封蝋のマークはそのことだそうです。バリバリ歴史がありますやん。
歴史はずっと飛んで、1938年から Xavier Milhade一家が4世代に渡ってこのシャトーを運営していますが、その Xavier さんがフィロキセラ禍を乗り越え生き残っていたカルメネールの古樹を発見したのがきっかけで、2000年からカルメネールの栽培を始めたそうです。そして今日のこのカルメネール100%のワインは2008年がファーストヴィンテージなんだそうです。


公式ページは若干貧弱ですが、まあまあ最低限の内容はあります。
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データシートもあって、カルメネールが85%以上とあり、「単品種で作ってもいいけど、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドするといい感じ。」てなことが書いています。日本の紹介サイトにはカルメネール100%って書いてあるんですがね~。
・カルメネール 85%
・メルロー/カベソー 15%
という感じでしょうか。品種の個性を出すためかコンクリートタンクとステンレスタンクのみで樽は使っていないようです。


一度消えかけた謎の多いカルメネールですがフランス原産なのは間違いありません。
Errazuriz02
1783年のベルジュラック地区での「Carmeynere」という品種の記述がおそらく文献での初出ではないかと思われます。この当時(18世紀)はメドックのトップシャトーはカルメネール(もしくはカベルネ・フランとのブレンド)で名声を築いたという資料もあり、フィロキセラ禍が大きな転換期であることは明白ですが、晩熟で収量の安定しないカルメネールは、その後カベソーとメルローのブレンドに置き換わっていったと考えられます。16世紀にカオールから各地に広まったというマルベック/コ(Malbec/Côt)も18世紀にはボルドーに蔓延していたといいます。18世紀のボルドーはカルメネールなのかマルベックなのか。南西地方に残ったマルベックに対し消え去ったカルメネール。謎に満ちて興味深いです。

2013年に実施されたDNA分析によると、カルメネールの親子関係はこのようになります。

カルメネール= (母) ムラル x (父) カベルネ・フラン

ムラル(Moural)はフランス原産の品種です。このようにカルメネールの親として登場はしますが、現在栽培はされていないようです。チリでカルメネールと混同されていたメルローはというと…

メルロー= (母) マグドレーヌ・ノワール・デ・シャラント x (父) カベルネ・フラン

なんと、片親(父)が同じカベフラです。混同されたくらいですから血は争えないですね(笑)。このマグドレーヌ・ノワール・デ・シャラント(Magdeleine Noire des Charentes)というのもフランス原産の古い品種で現在は栽培はされていませんが、実は、コ(Côt)すなわち、マルベック(Malbec)の母親がこの品種なのです。なんだかみんなご親戚。
ついでにカベソーもおさらいしておきましょう。

カベルネ・ソーヴィニヨン= (母) カベルネ・フラン x (父) ソーヴィニヨン・ブラン

でしたね。ここではカベフラは母となりました。ボルドーの主要品種の陰にはカベフラが暗躍していたということでしょうか。
因みに、AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux の赤の主要品種は以下になります。

<赤の主要品種>
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・カベルネ・フラン
・カルメネール
・コ(マルベック)
・メルロー
・プチヴェルド

普通にカルメネール、マルベックが入ってるのに驚きます。ボルドーの何かのこだわりなんでしょうか。こういう規定だけでも歴史を反映したいということですかね。カルメネールは今日のような作り手もいて栽培面積は増えているとはいえ、ボルドーでは 40ha ほどしかありませんから。
実はカルメネールはイタリア北部で割と大量に生き残っています。合計1,074haもあるそうです。イタリアのカルメネールは過去何度か試しています。


さて、シャトー・ルクーニュを訪問。ストビューで入れないので写真はネットから拝借。
ChRecougne01
小ぶりながら立派なシャトーを構えています。その背後には醸造施設でしょうか。

ボルドー右岸AOCの地図で位置関係を見てみましょう。
ChRecougne02
シャトー・ルクーニュがあるのはフロンサックのエリアですが、Galgon というコミューンで、ここは全域がAOCフロンサックを名乗れるわけではないので、AOCボルドー/ボルドー・シュペリュールになるんでしょうね。


エチケット平面化画像。
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シャトーのイラスト、正確です。(笑)


さあ、抜栓。
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キャップシール、コルク、かっこいいですよ。

コルク平面化。
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ミレジムしっかり入っていい感じですが、DIAM1とはケチりましたね。(笑)

Alc.12%。(pH:4.14、Brix:5.5)
濃いガーネット。
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黒ベリー、深い森の下草、青い風味もありますが、
チリのカルメネールで感じるモカはありません。
チリカルに似てるような違うような。
若干酸を感じますが、ほどよい渋みのタンニンと拮抗します。
奥行きのある味はボルドー左岸の雰囲気が出てますね。
カベソー80%、メルロー15%、プチヴェルド5%の味わいと言いましょうか。
酸味が少し残るため余韻は長くはないんですが、
いいボルドーを飲んだ余韻がします。


*****


Château Recougne
Carmenere 2014
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 94点


Château Féret-Lambert 2015 Bordeaux Supérieur

やまやの店頭で昔から気になっていた、ブルーのエチケットが一際目を引くシャトー・フェレ・ランベールです。AOCボルドーやボルドー・シュペリュールは大抵スルーしてるのですが(笑)、どこかの雑誌の記事で「食欲が減退する効果のある青色をラベルに使う稀有な作り手」というような変な紹介があったのでずっと気になってました。晴れて今日お試しです。(笑)

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スルザー(Sulzer)家が地元のワイン協同組合を離れてシャトー・ラ・ボンネル(Château La Bonnelle)を始めたのが1990年。その10年後、スルザー家の娘ヴァレリーさんがフェレ(Féret)家のアンリさんと結婚し、フェレ家が持っていたシャトー・ランベール(Château Lambert)に引っ越しました。休眠中だったシャトーのポテンシャルに気づいた両家は共同でシャトー・フェレ・ランベールを立ち上げます。
スルザー家は、Vignobles SULZER として、Château La Bonnelle、Château Féret-Lambert 他、Château Bourron や Château Tertre de Belvès というのも運営しています。


公式ページは、Vignobles SULZER のサイトの中にあります。

シンプルですがワイン紹介もしっかりしてあります。
・メルロー 90%
・カベソー 10%
畑は23haにも拡大していて、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのみが植えられているそうです。ブドウ園の地下に作られた天然の石灰岩のセラーで、新樽率30%のフレンチオーク樽で15ヶ月の熟成をするそうです。なかなかなもんじゃないでしょうか。

シャトー・フェレ・ランベールを訪問します。なかなか立派ですよ。
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ドルドーニュ川とガロンヌ川の間、いわゆるアントル・ドゥ・メールですが、かなりドルドーニュ川寄りで、公式ページには「サンテミリオンのすぐ南」なんて書いてます(笑)。確かにサンテミリオンからは車で20分ほどの距離です。


さて、今日のワインはAOCボルドー・シュペリュール。
普段はスルーしている AOC Bordeaux Supérieur を深掘りしてみましょう。
Machorre02
AOC Bordeaux Supérieur の対象範囲は、ご覧のINAOの地図のようにAOC Bordeaux と全く同じ広範囲になります。境界はかなりの部分ジロンド県のそれと共通です。じゃあ、AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux は何が違うのかということなんですが、なぜか日本ソムリエ協会の教本でも「ボルドー・シュペリュールの方が生産条件が厳しい」とあるだけで詳しく書いてません。なぜなんでしょうね。
 
仕方がないので、2021年3月付けの最新の官報を読み解いてみましょうか。これはフランス農業食料省 MAA(Ministère de l'Agriculture et de l'Alimentation)が出しているもので、INAO(Institut National de l'Origine et de la Qualité、旧称 Institut National des Appellations d'Origine)というのはその傘下になります。AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux は別の文書になっていますが、内容も膨大ながら対象地域や使用品種などほとんどが共通のようです。違いを探すのに一苦労しましたが、はっきり違うのは熟成期間でした。以下、Rouge(赤)についてです。白(Blanc)はまた違っていて<カッコ書き>しました。

AOC Bordeaux Supérieur:約9ヶ月(収穫翌年の6月15日まで) <白は約3ヶ月>
AOC Bordeaux:約3ヶ月(収穫年の12月31日まで) <白は規定なし>

あと、最低アルコール度数がAOCボルドー・シュペリュールで11%、AOCボルドーで10.5%となってました。白はAOCボルドー・シュペリュールで12%、AOCボルドーで10.0%と差が大きいですが、AOCボルドー白が辛口なのに対し、AOCボルドー・シュペリュール白は甘口だからだと思われます。
他にも細々といろいろ規定があるようですが、これ以上深読みはしないでおきます。(笑)

ついでですが、AOC Bordeaux Supérieur と AOC Bordeaux では使える品種が2021年から追加されるので軽く触れておきます。(今回の官報はこの辺りの変更が肝のようです。)

<赤の主要品種>
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・カベルネ・フラン
・カルメネール
・コ(マルベック)
・メルロー
・プチヴェルド

<赤の補助品種> →これが今回追加
・アリナルノア(Arinarnoa)
・カステ(Castets)
・マルスラン(Marselan)
・トウリガ・ナシオナル(Touriga Nacional)

アリナルノアはタナ x カベソーの交配種。カステは古いボルドー品種。マルスランはカベソー x グルナッシュの交配種。トウリガ・ナシオナルはポルトガル原産の同国代表品種です。
なんだかすごい追加に見えますが、これら補助品種の作付けは5%に制限され、ブレンドも合計で10%までです。またこれら補助品種のラベル表記も認められていません。白も3種類(コロンバール、メルロー・ブラン、ユニ・ブラン)の補助品種が同じく追加になっています。


エチケット平面化画像。
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きれいなブルーですね。確かにワインがおいしそうに感じる効果はなさそうですが。


さあ、抜栓。
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キャップシール(ここもブルー!)、コルクともにラベルと同じ紋章が入っています。

コルク平面化。
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ミレジムもちゃんと入っていて、一流ワインの風格はあります。

Alc.14.5%。(pH:3.83、Brix:7.3)
濃いガーネット。
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黒ベリー、プラム、木樽の香り。
酸味がクールに乗った辛口アタック。
行儀のいい酸なので邪魔はしてません。
味の厚み、構造感をしっかり受け止められました。
タンニンの収斂性は喉元に少々張り付く感じ。
余韻ではその渋みが酸と絡み合って最後までちょっと騒がしい。
一部は新樽でMLF行うとなっていましたが、全量の方がいいかもね(笑)。

アヒージョに合わせたんですが、案外うまく合いました。
濃い目の食事に合わすには丁度いい酸味かもしれません。


*****


Château Féret-Lambert 2015
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 91点


Château Machorre 2007 Bordeaux Supérieur

AOC ボルドー・シュペリュールの、ちょっと古めの2007年をいただきます。
お気づきの方もおられるかもしれませんが、普段はこんなワインを積極的に買い求めることはありません。どうせワインくじのハズレなんでしょうと思われた方、大正解です(笑)。でも、大ハズレではなく中当たりくらいかもしれません。


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なにせ、近所の京阪百貨店でやってる1本1,000円のワインくじですからね。当たればうれしいけど、ハズレてもそんなに痛手じゃありません。といっても、大ハズレで飲む気も起らないワインが手元に残るのは困りますが。(笑)

これがそのワインくじのチラシです。ボルドー赤ワイン限定。
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1等のクロ・デュ・マルキは出なかったですが、5等賞でした。全100本中、上から24本内に入ったわけですから上出来と言えるでしょう。(笑)

2007年の熟成ボルドー・シュペリュール。まだ少し興味はあります。ただし、インポーターの売れ残りワインでしょうから、情報豊富とはいかないのが困りもの。案の定、公式サイトのようなものは見つかりませんでした。インポーターのサイトでも作り手情報はほぼゼロでした。

ワインの情報だけはかろうじてあり、以下の通り。
・メルロー 60%
・カベソー 30%
・カベフラ 10%
醗酵はセメント・タンク。熟成は新樽率33%のフレンチオーク樽にて14ヶ月間。
ちょっと贅沢な樽使いです。ホントかな~。(笑)
エチケットに誇らしげなシールがありますが、この2007年がジルベール&ガイヤール(2015) で金賞を取ってるのは本当そうです。(笑)

と思ったら、立派な公式サイトを発見してしまいました。ちょっと目が節穴だったようで…。

ワイン情報はおおむねインポーターサイトの通りでした。15世紀にもさかのぼる歴史のあるところで、1992年に現在の所有者(Thiery SCEA、Marie Thieryさん)が取得したそうです。


シャトー訪問します。AOCボルドー(シュペリュール)といっても、その範囲は広大。情報少ない場所を突き止めるのは難儀しましたが、おそらくここです。(ストビューで近づけませんが。笑)
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ガロンヌ川沿いに遡り、AOCコート・デュ・マルマンデの手前ぐらいまで行った所です。

公式ページにシャトーの写真があったので貼っておきます。エチケットのイラスト通り。
Machorre01
メドック以外ではショボショボなシャトーが多いですが、ここは結構立派なシャトーでした。

AOCボルドーとAOCボルドー・シュペリュールの対象地域は同じです。
Machorre00
AOCボルドー・シュペリウールの方が、AOCボルドーよりも厳しい条件(例えば、樹齢20年以上、最低12ヶ月以上の熟成など)をクリアする必要があるなどの解説はありますが、はっきりしたことはINAOのサイトや官報も見るんですが、いまひとつ決定的な条件が見当たらないんですよね。不思議~。

AOCボルドー・シュペリウールの対象地域の地図をINAOのサイトから拝借します。
Machorre02
ボルドーとベルジュラックやコート・デュ・マルマンデなどとの境界は行政区分、すなわち県境になるようですね。


エチケット平面化画像。
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ちょっと印刷品質はアレですが、風格はありますね。
裏ラベルが少し汚れてますが…。

それはこのインポーターシールを剥がしたからです。
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剥がしにくいシールで作り手の名前や住所を隠すという不届き者の例です。


さあ、抜栓。
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汎用品なのは仕方なしですね。

コルク平面化。
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ミレジムが頭に打ってあるのは好感が持てます。

Alc.13%。(pH:4.20、Brix:7.3)
濃いガーネット。エッジはさすがに褐変です。
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黒ベリー、ナッツ、鞣し革。
熟成香がいい具合です。
辛口アタック。
くすんだ感じはなく果実味を残してうまく熟成した感じがします。
凝縮感ある味わいですが、中にメルローっぽい軽さも感じます。
傑出した感はやはり弱いんですが非常にバランスよくまとまっています。
タンニンも舌触りで収斂性の名残りをとどめますが極限までこなれてシルキー。
余韻も、軽め感もありつつのじんわり持続で楽しめました。
やはり、オリはけっこう出ています。

ボルドーの2007年は厳しかったからかもしれませんし、
シャトー自体の実力もあるでしょう。
しかし、これを1000円でゲットできたなら上出来です。(笑)


*****


Château Machorre 2007
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 92点


Château Lamothe-Vincent Réserve Saint-Vincent 2016 Bordeaux Supérieur

何かきっかけでもない限り試すことの滅多にないボルドー・シュペリュールです。
大抵お手頃価格なのでいいんですが、味も値段なりということが多いですからね。
そんなのをいただくのは、またワインくじのハズレかなんかじゃないのと思った方、
大正解です。(笑)


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近所にある京阪百貨店のお酒コーナーのワインはよくのぞくんですが、
たまにワインくじをやってます。モトックスが作ってるっぽいんですが、
お安いこともあってついつい買ってしまいます。

これがそのラインアップ。なんと千円(税抜き)ですよ。(笑)
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ま、1等でもダルマイヤックですから、当然たいしたものは入ってません。
今日のワインは、その中の4等でしたから、まあいい方じゃないでしょうか。

調べると、なんと漫画「神の雫」で出てきたワインだとか。
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(ちょっとボカしてみたけど転載しちゃいました。亜樹直先生ごめんなさい。)
まあこの漫画、結構なローエンドのワインもおいしいとなれば紹介してますよね。


公式ページはひと昔風な雰囲気ながら、情報はデータシート完備でそこそこ。

ただ今日のワインが載ってません。トップエンドがBordeaux Supérieurなので、
これもいい方の部類に入るんでしょうけど。仕方ないので、以下ネット情報モトックス)。
・メルロー 80%
・カベソー 20%
熟成は新樽率33%のフレンチオーク樽で12ヶ月。ちゃんとしてますね。


アントル・ドゥ・メールのモンティニャック村にあるシャトー訪問。
ストビューでは木立で中が見えなかったので上空写真にインポーズ。
Lamothe01
なかなか立派なところです。1920年創業の家族経営だそうですが、
施設への投資もしっかりしているようです。

ボルドー全体(主要河川着色済み)地図で位置関係を見てみます。
Lamothe00
ドルドーニュとガロンヌの2つの川に囲まれたところの、ちょうど真ん中辺り。
Bordeaux(Bordeaux Supérieur)はメドックからこの辺りまでの広域が対象。
アントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)はAOCとしては白ワインのみです。
しかし、もう少し東になるとベルジュラック他、南西地方の範囲に入ってきます。

ボルドーというのは広域であるだけでなく、赤・白・甘口や、各地の格付け、
右岸・左岸他、細かなAOC含め、実はすごく全体像をつかむのが大変です。
1表で網羅することができず、こんな合わせ技の地図を作っています。
Bordeaux_map
ネットの拾い物ですが、これで見れば大抵のことはわかります。(笑)


エチケット平面化画像。
IMG_2035
リヨン国際ワインコンクール金メダルが最初から刷り込まれています。


さあ、抜栓。
IMG_2425
意外や意外、キャップシールもコルクもしっかりしています。

コルク平面化。ミレジムもちゃんと横に入っています。
IMG_2426
シャトーのイラストもあり、上等ボルドーの風格ですね。

Alc.13.5%。
濃いガーネット。涙も色つき。
IMG_2428

黒ベリー、ブラックチェリー、スパイス。
シダ、樹脂の樽香もしっかり効いています。
変な酸味を感じたと思うと辛口アタック。
厚みやストラクチャーはしっかり感じられ悪くないんですが、
やはり酸に囲われたような味わいですね。

ダメダメという人もいるかもしれませんが、
けっして欠陥のような酸ではないので、僕的にはOK。
楽しめました。


*****


Vignobles Vincent
Château Lamothe-Vincent
Réserve Saint-Vincent 2016
Bordeaux Supérieur
RRWポイント 87点


Château Croix Mouton 2015

シャトー「クロワ」ムートンの2015年です。
2003年まではシャトー・ムートンだったところです。
かの第一級、ムートン・ロートシルトよりも古いらしいのですが、
紛らわしいと訴えられて、あっさり名称変更したそうで。
やっぱり「偉大なワイン」の方が「偉い」んですかね。(笑)


IMG_6139


1997年からは、
ジャン・フィリップ・ジャヌイクス(Jean Philippe Janoueix)がオーナーで、
この方はサンテミリオンやポムロールにもシャトーをお持ちです。

公式ページからそれらの位置関係がわかる地図を拝借。
CroixMouton01
ボルドー右岸ばかりですね。

クロワ・ムートンはドルドーニュ川畔、際々にあります。
CroixMouton01-1
まわりはきれいな畑に囲まれています。
近所に見えるのは、同じオーナーのシャトー・ル・コンセイエかも。

公式ページはそこそこ情報あり、セパージュは、
・メルロー 98%
・カベフラ 2%
樽熟ははっきり書いてないですが、インポーターサイトによれば、
新樽率15%で10ヶ月のようですね。

エチケット平面化画像です。
IMG_5861
実は毎年この「M」のロゴが変わります。

近年の2013、2014、2016はこんな感じ。
CroixMouton03

ついでに、1998~2012までの一覧表も載せておきましょう。
CroixMouton02
一番左上が1998で、以降順番、一番右下が2012です。


さて、抜栓です。
IMG_6141
キャップシールもその年のロゴと同じ色になってます。
コルクは合成ながら、ミレジムが十字架マークの中にも記されてます。
Alc.14.5%。
良年2015年らしいフルボディーです。
濃い目ルビー。
メルロー主体らしく、フランボワーズ、カシスかな。
ちょっと青草っぽくもあります。
フレッシュなアタックです。
甘みがあるようで実は甘くないのは、このフレッシュ感ですね。
タンニンではないような「苦味」がかすかにあり。雑味?
味の厚み、構造感は弱いですね。これもメルローのせいかな?
褒めるところはほとんどないですが、飲みやすいです。
スルスルいけてしまいます。


*****


Jean Philippe Janoueix
Château Croix Mouton 2015
AOC Bordeaux Supérieur
RRWポイント 85点


--- Red Red Wine ---

:「偉いワイン」探しの備忘録

"Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない"

かの有名なSFの名言です。(笑)
あくまで自己流にワインの世界を日々記録しています。
いつかその「偉いワイン」に出会うために。偉いワインとは?

尚、 各記事末の「RRWポイント」なる点数はロバート・パーカー気取りのマイ評価です。

• 即ち、50~100点の100点満点評価
• 白ワインWWWポイントは80点満点


So much wine, so little time...

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