Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録

ワインについて、僕SFが自分用のメモ・備忘録として書き込む場所です。 Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない。 かの有名な僕の名言です。(笑) あくまで自己流に、(お手頃価格の)ワインの世界を日々記録しています。 いつかその「偉いワイン」に出会うために。

Gaillac

Vinovalie Sans Culotte ni sulfites ajoutés 2018 Gaillac Blanc Sec

南西地方の中ではガイヤック・ルージュは過去何度か試しており、このあたりで特徴的な土着品種(Duras、Ferなど)含め掘り下げたりしています。そんな中で、ガイヤック・ブランはラン・ド・レルLen de l'El)というガイヤック地域の固有品種が主要品種であるというのは知識としては得ていました。で、そうなるとやっぱり気になって実際に飲んでみたくなるんですよね。あまり選択肢はないんですが、こんなガイヤック・ブランをお取り寄せしてお試しです。Ni Sulfites Ajoutés(亜硫酸塩添加なし)とありますが、流行りの亜硫酸塩(SO2)無添加のようですね。

IMG_7593
作り手は、以前フロントンAOCなどを試した時と同じところで、Vinovalie という協同組合です。フロントン、ガイヤックに3ヶ所とカオールに1つの4つの協同組合の集合体で、2006年に統合して誕生しました。

公式ページは前にも見てますが、大手だけあってオシャレです。

ワイン紹介ではちゃんとページがありました。

・ロワン・ド・ルイユ 100%

INAOが正式としている Len de l’el(ラン・ド・レル)ではなく、シノニムの Loin de l'œil(ロワン・ド・ルイユ)で書かれていますね。現地では通りのいいシノニムなんでしょうか。
醸造は低温浸漬の上、アルコール発酵、澱引き。亜硫酸塩(SO2)を添加しないので新鮮さを保つため迅速に瓶詰めされます。

ラン・ド・レル、もしくはロワン・ド・ルイユです。もちろんフランス原産。
Len-de-l'El
オック語で「目から遠く離れている」という意味だそうで。茎が長く、ブドウが目(つぼみ)から離れていることからついた名前らしいです。フィロキセラ以前の1870年頃まではこのあたりの畑の1/3はラン・ド・レルだったそうです。現在はガイヤック・エリアのみで603ha(2016年)栽培されているそうです。

AOC Gaillac を見てみましょう。なんと11種類あります。

Gaillac blanc(白)
Gaillac blanc primeur(白、プリムール)
Gaillac premières côtes(白、ブドウの出所に制限あり後述)

Gaillac mousseux(泡白、いわゆる瓶内二次発酵)
Gaillac doux(甘口白)

以上の白系5つは下記の主要品種が50%以上占めないといけません。
<主要品種> Len de l’el、Mauzac、Mauzac Rose、Muscadelle
<補助品種> Ondenc、Sauvignon Blanc

Gaillac vendanges tardives(遅積み甘口白)

ヴァンダンジュ・タルディヴ(Vendanges Tardives)は主要品種が若干違います。
<主要品種> Len de l’el、Ondenc
<補助品種> Mauzac、Mauzac Rose、Muscadelle
主要品種が50%以上占めないといけないのは同じです。

Gaillac rouge(赤)
Gaillac rosé(ロゼ)

以上の赤系は下記の主要品種が70%以上占めないといけません。また、主要品種の内、2つは必ず使い、Duras、Fer、Prunelard は単独もしくは合計で40%以上含まれないとダメです。
<主要品種> Duras、Fer、Prunelard、Syrah
<補助品種> Cabernet Franc、Cabernet Sauvignon、Gamay、Merlot

Gaillac rouge primeur(赤、プリムール)

赤のプリムール(いわゆるヌーボー)はボジョレーの如くガメ(Gamay)のみ。

Gaillac méthode ancestrale(泡白、古式製法)
Gaillac méthode ancestrale doux(甘口泡白、古式製法)

以上の Méthode Ancestrale は、Mauzac、Mauzac Rose から作られます。白ですがラン・ド・レル他は使うことができません。

1938年最初にAOC Gaillac になったのは白系のみ。遅れること32年、赤とロゼがAOCに認められたのは1970年になります。そういう意味では最初は白、そしてラン・ド・レル(Len de l'El)で有名になったAOCと言えますね。ただし、現在は75%が辛口の赤ワインとロゼが占めるようですが…。

そして、Gaillac Premières Côtes というちょっと上等そうな名前のAOCは、ワインの生産地域こそ AOC Gaillac Blanc と同じタルン県北部の 64 のコミューンに広がっていますが、ブドウの生産地域は中心地とも言える 11 のコミューンに限定されていますから注意しましょう。
IMG_7552

注意ついでに触れておくと、AOC Gaillac RougeRosé は、アルビ(Albi)の町の東側の飛び地のようなところが追加されています。経緯は不明ですがややこしいですよね。
GaillacR


過去にも訪問しましたが、Vinovalie の各拠点です。モダンで規模も大きいですね。
Fronton05
フロントンに1つ、ガイヤックに2つ、カオールに1つの計4つの協同組合から成ります。本部はガイヤックのエリアにあることから、基本はガイヤックの生産者と言えるかもしれませんね。

恒例の Google Map 上に南西地方のAOC、IGPを示した地図でガイヤックを確認。
Sud_Ouest01
ガイヤック、見つかりましたでしょうか。AOC ガイヤックを内包する IGP は「IGP Côtes du Tarn」と言って、タルン県のタルン川流域一帯になります。


エチケット平面化画像。
IMG_7553
「Sans Culotte(パンツはかず)」は亜硫酸塩無添加のシリーズで、ほかに AOC カオールの赤と AOC フロントンのロゼがあるようです。


さあ、スクリュー回転。
IMG_7589
亜硫酸塩添加ゼロのシールがネックに貼ってあります。

Alc.13% 。
濃いイエロー。
IMG_7590

りんご、キウイ、オレンジ。
フルーティーな香り。
味わいは青リンゴっぽいです。
あっさり感は強めですね。
軽くて少々肩透かしですが、
果実味を演出する酸がいい具合に効いていて、
最後にはまあまあ満足できます。


*****


Vinovalie
Sans Culotte ni sulfites ajoutés 2018
Gaillac Blanc Sec
WWWポイント77点



WhiteWhiteWine01

Vignobles Arbeau Arborescence Gaillac Rouge 2017

ちょっと離れたところにあるグランマルシェに遠征。そこで、同じ作り手のフロントン(AOC Fronton)とガイヤック(AOC Gaillac)がありました。南西地方はカオールやマディランはよく見かけますが、なかなか他のAOCは珍しいので両方ゲットしてもよかったのですが、土着品種ネグレット(Négrette)主体の赤・ロゼしかないフロントンより、赤・白・ロゼ・泡・甘口と色々あるガイヤックの方が深掘りし甲斐がありそうなので(笑)、まずはガイヤックの方からお試しです。

IMG_5696
作り手はアルボー家(Famille Arbeau)で、1878年からネゴシアン・エルヴール(Négociant éleveur:ブドウを仕入れ、醸造・熟成・瓶詰めを自ら行う)を始めたという老舗。本拠地はフロントンですが、AOCフロントンの他、AOCガイヤックの各種のワインを取り扱っています。(以前にもガイヤックの赤を試していますが、その時のはガイヤックの町にある作り手でしたね。)


公式ページは手作り風でひと癖あります。ワイン紹介まで最低5回はリンクを辿ります。
Arbeau00
AOCガイヤックは赤、ロゼ、辛口白、甘口白の4種類を出していますが、その中には今日の「Arborescence」なるワインは見つからず(笑)。仕方がないので日本のショップ情報に頼ります。
・デュラス(Duras) 55%
・ブローコル(Braucol) 20%
・カベルネ 20%
さて、合計が100%に足りません(笑)。海外のネット情報ではカベルネが25%となってましたので、これで計算は合います。しかし、カベルネ・ソーヴィニヨンなのかカベルネ・フランなのかは謎のままです。熟成はタンクで8ヶ月のようです。

デュラス。教本や他のサイトでもそう書いてありますが(笑)フランス語では「デュラ」。
Duras01
相当古い品種ですが、1842年に南西地方ガイヤックで初めて言及され、今でもこの地方の代表品種です。ガイヤック周辺でしか栽培されていません。2013年のDNA分析では、トゥレソ・ノワール(Tressot Noir)xサヴァニャン・ブラン(Sauvagnin Blanc=Traminer)の自然交配であるとされました。それまではトゥレソ・ノワールの親がデュラxプチヴェルドであるとまことしやかに言われていました。2016年には計785haが栽培されていますが減少傾向だそうです。ある意味希少な品種ですね。

今日のワインのセパージュではブローコル(Braucol)となってましたがフェール(Fer)です。
Fer_Braucol01
ブローコルはフェールのシノニムになります。マンソワ(Mansois)ともいいます。以前はフェール・セルヴァドゥ(Fer Servadou)と呼ばれていたようですが、今はこれもシノニムだそうです。この品種も南西地方に古くからあり、特にAOCマルシヤック(Marcillac)の代表品種になっています。AOCマルシヤックではフェールは90%以上ないといけません。この品種が使える産地は南西地方に割と多いです。(Béarn、Saint-Mont、Côtes du Marmandais、Gaillac、Fronton、Madiran、Tursan、Entraygues-Le Fel、Estaing など。ラングドックの Cabardès も。)

休題閑話、全 AOC Gaillac を見てみましょう。なんと11種類あります。

Gaillac blanc(白、以下白は *Len de l’el、Mauzac、Muscadelle 主体)
Gaillac blanc primeur(白・プリムール)
Gaillac premières côtes(白、主要品種が50%以上)
Gaillac mousseux(泡白、いわゆる瓶内二次発酵)
Gaillac doux(甘口白)
Gaillac vendanges tardives(遅積み甘口白、Len de l’el、Ondenc 主体)
Gaillac méthode ancestrale(泡白、古式製法、Mauzac 主体)
Gaillac méthode ancestrale doux(甘口泡白、古式製法、Mauzac 主体)
Gaillac rouge赤、Duras、Fer、Syrah 主体)→ 今日のワイン
Gaillac rosé(ロゼ、品種は赤と同じ。)
Gaillac rouge primeur(赤・プリムール、ガメのみ。ボジョレーみたいですね。)

(*Len de l'el は Loin de l'oeil とも呼ばれるガイヤック土着の白品種です。 ガイヤックのみで栽培されており、他のAOCでは使われません。2010年には629haの栽培面積があります。)
1938年最初にAOCになったのは白系のみ。遅れること32年、赤とロゼがAOCに認められたのは1970年になります。そういう意味では最初は白で有名になったAOCと言えますね。


作り手訪問。フロントンの町のすぐ北側、タルン川のほとりです。
Arbeau01
ラバスティド・サン・ピエール(Labastide-Saint-Pierre)という町でAOCフロントンのエリア内です。

INAOの地図でAOCフロントンとAOCガイヤックの範囲を見てみます。
Gaillac_AOP
どちらもガロンヌ川の支流、タルン川流域になります。AOCガイヤックの白(系)はアルビ(Albi)の町の東側の飛び地のようなところが対象になりません。つまりその「飛び地」は赤のみということになります。また、AOCガイヤックを内包する IGP は「IGP Côtes du Tarn」と言って、タルン県のタルン川流域一帯になります。

さあ、恒例のGoogle Map上に南西地方のAOC、IGPを表した地図です。
Sud_Ouest01
今日の作り手の所在(@フロントン)とガイヤックの位置関係をご確認ください。


エチケット平面化画像。
IMG_5673
一応、デュラスとブローコルのブレンドであることが書かれ、ガイヤックの超ザックリした場所の地図もあります。賞味期間が6年とも書かれてますね。

インポーターシールは剥がしましたが、こうでした。
IMG_5671
バーコードを隠したいのはわかりますが、大事な公式ページのURLも隠れてました。


さあ、抜栓。
IMG_5692

コルク平面化。
IMG_5693
「1878年」に驚いてしまいましたが、ここに創立年を書いてはイカンでしょう。(笑)

Alc.12.5%。(pH:4.09、Brix:6.3)
ガーネット。
IMG_5704

カシス、ブルーベリー、アセロラっぽくも。
フルーティな辛口アタック。
酸はいい爽快感を演出。
ペラペラではない一定の厚みがあるのは評価できます。
喉越しに心地よい渋みもありますね。
さすがに独特な味わいを見せますが、
各要素がいいバランスで流れるので、
全体としていい評価となります。


*****


Vignobles Arbeau
Arborescence
Gaillac Rouge 2017
RRWポイント 89点


Mas des Combes Gaillac Rouge 2015

ちょっと前に南西地方の課題の一つ、フロントンをクリアしましたので、
今日はタルン川沿いにもう少し上流へ。AOCガイヤックの赤を試します。
土着品種のフェール・セルヴァドゥやデュラスがたっぷり入ってますよ。(笑)


IMG_2765
ドメーヌの起源は1540年に遡るといいます。現当主はレミ・ラロックさん。
1988年にドメーヌを引き継いだ時は18haだった畑を、34haまでにしています。
奥さんと子供2人による家族経営。ガイヤックの町の6km北側にあります。
やはり、AOCガイヤックの品種にこだわってやってるそうです。


公式ページはまあ普通。平均点ですが、あるだけ有難いです。

ワイン情報は2018年のものしかないですが、まあ大して変わりないでしょう。
・フェール・セルヴァドゥ 30%
・シラー 25%
・メルロー 25%
・デュラス 20%
熟成は樽はなし。ステンレスタンクで15~18ヶ月です。

フェール・セルヴァドゥ、デュラスというローカル品種合わせて50%ですね。
まず、これが規定通りなのか、AOC Gaillacの決まりを見てみましょう。
AOC Gaillacは赤・白・ロゼがあり、1938年最初にAOCになったのは白のみ。
遅れること32年、赤とロゼがAOCに認められたのは1970年になります。

赤・ロゼのAOC規定はこうです。
主要品種:Duras、Fer (Servadou)、シラー
補助品種:カベフラ、カベソー、ガメ、メルロー、Prunelard
(Prunelard - プリュヌラールはマルベックの父親にあたるローカル品種)
主要品種は合わせて60%以上でないといけません。今日のは75%でクリア。
主要品種の中で、DurasとFer Servadouは合計40%以上。単独10%以上。
この2品種は必須ということ。これもクリアしていますね。
あと、さっき出てきたPrunelardは10%を超えてはいけません。
なんだか、ややこしい決まりにしてるんですね。

さて、
これを見てもピンときませんが、一応これらローカル品種の写真を確認。(笑)
Fer_Servadou
フェール・セルヴァドゥ(Fer Servadou)はフェール(Fer)だけだったり、
Braucol(ブローコル)やMansois(マンソワ)というシノニムもあります。
「fer」はフランス語で「鉄」の意味です。果皮が厚くて堅いからだそうで。
この品種を使うAOCの代表はマルシヤック(Marcillac)らしいですが、
マルシヤックがAOCになったのは1990年なので、ガイヤックの方が先では?

デュラス(Duras)は逆に正真正銘ガイヤックが代表です。
ただ、さっきの規定ではデュラス100%ではAOC Gaillacになりません。
フェール・セルヴァドゥを少なくとも10%はブレンドしないといけません。


ドメーヌ訪問は、ガイヤックの市街から北へ車で15分ほどになります。
ガイヤックの町はタルン川が貫いています。一応スクショをば。
Gaillac
小さな町ですから、ずずっと行くと、すぐ一面ブドウ畑が広がります。

おおっ、ドメーヌの敷地に続く小道には入れず、入り口ショットです。
Bombes01
Google Mapに上がっていた写真を貼っておきます。素朴な石造りですね。
2015年には新しいセラーを建てられたそうですが、これは確認できず。


いつもの地図でガイヤック及び作り手の所在を確認しようと思いましたが、
如何せん、昔作ったので不正確でガイヤック以東のAOCもカバーできてません。
Fronton01
これ作り直すの面倒だな~とは思いますが、いずれはやらねばなりませぬ。(笑)

今日は折衷案でガイヤック周辺だけをズームして作ってみました。
Fer Servadouを使うAOC マルシヤック(Marcillac)も入っています。
Duras
例によって、南西地方も各AOCを効率よく理解するには「川」が鍵です。
ガロンヌ川、ロット川、そしてガイヤックのあるタルン川に注目しましょう。
黄色のAOCは白も認められたところです。あとはだいたい赤・ロゼのみです。
(Cahorsは赤のみ。MadiranやBergeracのPécharmantも赤のみですね。)


エチケット平面化画像。
IMG_2759
インポーターシールはバーコードを隠していましたので剥がしました。


さあ、抜栓。
IMG_2762
汎用の合成コルクです。これは仕方ないですね。

一応、平面化。
IMG_2760
「セラー元詰め」。いろんな表現があるもんですね。

Alc.12.5%。
クリアな透け感もあるガーネット。涙はくっきりしないけど細かいです。
IMG_2763

ブラックベリー、プルーン、白胡椒。
ぷっとブレタノマイセスが香った気も...。
辛口アタック。
不思議な風味の酸に包まれて味がやって来ます。
タンニンもしっかりあるんですが、いつもと雰囲気が違います。
味の深みがなく軽いのかと思うと、そうでもないです。
そこそこ味の立体感があって楽しめます。
酸とタンニンが余韻でも刺激的なんですが不思議に悪くない。

しかし、この明らかに「初めて味わう品種」って感じ、
試してみるもんですね。面白い。


*****


Mas des Combes
Gaillac Rouge 2015
RRWポイント 86点


--- Red Red Wine ---

:「偉いワイン」探しの備忘録

"Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない"

かの有名なSFの名言です。(笑)
あくまで自己流にワインの世界を日々記録しています。
いつかその「偉いワイン」に出会うために。偉いワインとは?

尚、 各記事末の「RRWポイント」なる点数はロバート・パーカー気取りのマイ評価です。

• 即ち、50~100点の100点満点評価
• 白ワインWWWポイントは80点満点


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