Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録

ワインについて、僕SFが自分用のメモ・備忘録として書き込む場所です。 Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない。 かの有名な僕の名言です。(笑) あくまで自己流に、(お手頃価格の)ワインの世界を日々記録しています。 いつかその「偉いワイン」に出会うために。

Loire

Château de Fesles La Chapelle Anjou Cabernet Franc 2020 Vieilles Vignes

近所の百貨店で直感で選んだロワールの赤です。アンジュー(Anjou)のカベルネ・フラン。狙い通りの当たりならいいんですが。アンジューには赤・白・ロゼ・泡となんでもあり、赤はカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンが主要品種になってますが、やはりカベルネ・フランが王道ですね。作り手は甘口白の名産地 AOCボンヌゾー(Bonnezeaux)にあるようですが。

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作り手のシャトー・ド・フェルは、名前のように11世紀に建てられた本物のお城(シャトー)です。所有者は時代によって変わりましたが、周囲にブドウ畑を開き当初からワイン作りを続けているそうです。2008年からはヘルフリッヒ家(la famille Helfrich)が所有しています。アンジェ(Angers)の30キロ南にあるトゥアルセ(Thouarcé)というコミューンにあり、アンジューでは4番目に高い高台でロワール川支流のレイヨン川を見下ろす好立地なんだそうです。実はこのトゥアルセにボンヌゾー(Bonnezeaux)という場所があり、コミューン全体がAOCボンヌゾーのエリアになっています。よってシャトー・ド・フェルも甘口白のAOCボンヌゾーを出しています。

公式ページはショップ兼用ながら情報豊富でよくできています。

今日のワインもしっかり載っています。10ユーロということもわかりました(笑)。

・カベルネ・フラン 100%

「La Chapelle」というのはシャトーに隣接する畑の名前で、所有畑の一番いいところなんだそうです。そこの Vieilles Vignes(古樹)ですからこれはすごいかも。樽使いなんかはインポーターのサイトを見てもわかりませんでした。白ワインに樽を使ってますから赤も使ってると思うんですけどね。

カベルネ・フランです。ロワールではブルトン(Breton)というシノニムがありますね。
Chinon02
ボルドーの非常に古い品種になりますが、起源はバスク地方(スペインもしくはフランス)らしいです。17世紀に枢機卿リシュリューさん(Cardinal Richelieu)がボルドーから千本以上のブドウの木をロワール地域のブルグイユとシノンにある自身のエステートに送って植えたとされます。これでボルドーにあったカベフラがロワールに伝わったと思われます。その時のエステートの管理人がアベ・ブルトンさん(Abbé Breton)でした。ロワールではなぜブルトン(Breton)というシノニムで呼ぶのかわかりましたね。カベルネ・フランという名前が初めて出てくるのは1823年を待つことになりますが、当時から「カベルネ」とつく品種がカベルネ・ソーヴィニヨンはじめいくつもあったため現在のカベルネ・フランを指しているかどうかは同定が難しいそうです。

そうそう、カベフラはカベソーの母でしたね。父はなんと白ブドウ。
カベルネ・ソーヴィニヨン= (母) カベルネ・フラン x (父) ソーヴィニヨン・ブラン。

世界各地で栽培されますが、世界合計の56,052haの内、32,327ha(約58%)がフランスです。ロワールが約15,000haでやはり多く、ボルドーに約12,000haあります。残りは南西地方やラングドックです。

さあ、シャトー・ド・フェル訪問。敷地(周囲の畑)が広くストビューで近づけず。
Fesles
小ぶりですが立派なシャトーと、その前には整備された庭園があるようです。アンジューでは4番目に高い高台ということですが、確かに周囲はなだらかに下っており、シャトーはてっぺんにあるようです。海抜約100メートルとのこと。シャトーの周囲が「La Chapelle」という一番いい畑で、カベルネ・フラン(18ha)とグロロー(2ha)が植えられています。その周囲がシュナン・ブラン(24ha)になります。グロロー(Grolleau)は主にロゼ・ダンジュー(Rosé d’Anjou)用。シュナン・ブランは当然 AOCボンヌゾー(AOC Bonnezeaux)の甘口ワインになります。(辛口もやってますが。)


AOCアンジューとソーミュールをカバーする地図にシャトーの場所を入れました。
Loire_Anjou
今日のワインのAOCアンジューですが、アンジェ(Angers)周辺とは言うもののかなり範囲は広く、ソーミュールはじめ実にたくさんのAOCとオーバーラップすることがわかると思います。

甘口のAOCコトー・デュ・レイヨン(Coteaux du Layon)の部分を取り出してみます。
Coteaux-du-Layon_Bonnezeaux
これらがAOCアンジューとガッツリ重なってるので地図にすると見にくかったんですよ。あまり重ねるのはよくないですね。逆に言うと、このあたりは今日の作り手のように甘口白とアンジューの赤の両方やってるパターンが多いんじゃないかと思われます。
AOCコトー・デュ・レイヨン内のロシュフォール=シュル=ロワール(Rochefort-sur-Loire)というコミューンは「Coteaux du Layon Premier Cru Chaume」「Quarts de Chaume(Grand Cru)」という上等甘口白ワインのエリアになっています。全部シュナン・ブラン(ロワールでは「Pineau de la Loire」というシノニムあり)一択の貴腐ワインを主とする甘口です。プルミエ・クリュやグラン・クリュって付くわけですからそういう位置づけなんでしょう。

ところで今日の作り手はAOCボンヌゾー(AOC Bonnezeaux)にあるんでした。
Thouarce
AOCボンヌゾーをズームアップ。AOCボンヌゾーもトゥアルセ(Thouarcé)というコミューン全体が対象で、その中にボンヌゾー(Bonnezeaux)という地域がある関係です。Google Mapでは「ボネオー」なんて書いてますね(笑)。ネイティブの発音を聴くと「ボンゾー」って聞こえますが(笑)。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
今日はこの中のアンジューあたりのお話でしたということで、ロワールの中での位置関係を確認しておいてください。


エチケット平面化画像。
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裏ラベルの解説もしっかりしてていいですね。それを隠さないラックさん、エライ。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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ミレジム入り。いいですね。

Alc.13.5%。
赤味強めのガーネット。
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黒ベリー、ブルーベリー、プラム。
辛口アタック。
酸・タンニンの効き方が絶妙です。
きれいなレイヤーの構造感がある作り。
余韻への流れもたおやかに進みます。
「ヤッタネ!」のニンマリ出ました。
ほほ~、こんなうまいカベフラ初めて。


*****

Château de Fesles
La Chapelle
Anjou Cabernet Franc 2020
Vieilles Vignes
RRWポイント 95点


Paul Buisse Crémant de Loire Brut

クレマン・ド・ロワールです。クレマン(Crémant)とはシャンパーニュと同じ伝統的方式、いわゆる瓶内二次発酵で作られた仏産スパークリングワインの総称。いろいろと試してますが、シャンパーニュの代わりというより最近はその個性がわかってきたので、敢えて最初からクレマンを探すようになってきました。今日のこれなんてロワールらしくシュナン・ブランからです。

IMG_1235
クレマン・ド・ロワールというだけで店頭で適当に選んだので作り手を調べてみます。ラベルからポール・ビュイス(Paul Buisse)というロワール川沿いのアンボワーズ(Amboise)という町の作り手であるのがわかります。Google Mapで所在に行ってみると、アンボワーズから少し離れたシェール川(Cher、ロワール川の支流)沿いがヒットします。よくよく調べると、もともとモントリシャール・ヴァル・ド・シェール(Montrichard Val de Cher)にあった1905年創業の老舗を1980年に引き継いだ現当主ポール・ビュイスさんが大手ワインメーカーのピエール・シャイニエ(Pierre Chainier)の傘下に入ることにした...ということのようです。

公式ページはまだ残っており、ピエール・シャイニエには円満に引き継いだなんて書いています。

現在ここは閉鎖中ですが、ワインツアーをやっていた時のパンフレットが以下の感じです。
Panflet
なかなか良さげですが、もうこの場所はGoogle Mapでも「閉鎖中」と出ます。

これがピエール・シャイニエのHP。ポール・ビュイスはメインブランドになってます。

今日のクレマンのデータはネット情報と総合してこんな感じ。

・シュナン・ブラン 66%
・シャルドネ 34%

やっぱりシュナン・ブラン。いい感じです。熟成期間は12ヶ月となっています。AOCクレマン・ド・ロワールの規定でいくと、「伝統的方式/シャンパーニュ方式(瓶内二次発酵)で12ヶ月以上の熟成」となっているので規定通りOKです。

AOCクレマン・ド・ロワールの規定で使える品種は以下の通り。

<白品種>シュナン・ブラン、シャルドネ、オルボワ(Orbois=Arbois Blanc)
<黒品種>カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、グロロー、グロロー・グリ、ピノー・ドーニス、ピノ・ノワール

黒品種もあるのはロゼがあるからで、ロゼはカベフラ主体で作られることが多いようです。

シュナン・ブランはロワールでは「Pineau de la Loire」というシノニムがあります。
CheninBlanc01jpg
シュナン・ブランは、2018年のDNA分析でサヴァニャン(Savagnin)と何らかの品種の自然交配で生まれたとされています。さらにこのシュナン・ブランとグエ・ブラン(Gouais Blanc)の交配から、バルザック・ブラン(Balzac Blanc)、コロンバール(Colombard)、ムスリエ・サン・フランソワ(Meslier Saint-François)といった品種が生まれたことが判明しています。


一応、ピエール・シャイニエを訪問。
ChanierPaul-buisse3
アンボワーズの郊外。まあ、工場然としていますね。今日のクレマンもここで作った?

現在閉鎖中の元のポール・ビュイスにも行ってみます。
Paul_Buisse
Google Mapの機能で少し前の写真を出して貼っています。現在の写真はもう少し寂れた感じだったので(笑)。

さて、クレマン(Crémant)~をまとめておきます。シャンパーニュ以外の伝統的方式(Méthode Traditionnelle)/シャンパーニュ方式(Méthode Champenoise)、いわゆる瓶内二次発酵のフランス産スパークリングワインはクレマン(Crémant)という名称を使って以下の8つのAOC(Appellation d'Origine Contrôlée)にまとめられます。


クレマン・ド・サヴォワ(Crémant de Savoie)が2014年6月制定と一番新しいAOCです。また、(12ヶ月)と書いたもの以外は熟成期間が9ヶ月以上の規定になっています。ロワールは12ヶ月で少し長期熟成なんですね。消費量はクレマン全体の約半分がクレマン・ダルザス(Crémant d'Alsace)で圧倒的1位です。それぞれの産地は名前からどこかわかりますよね?

クレマン軍団(?)の公式ページというのがあり、各クレマンについて詳しく載っています。



今日のクレマン・ド・ロワール(Crémant de Loire)に話を戻しましょう。
LoireMapa
INAOの地図ですが、AOCクレマン・ド・ロワールの範囲が示してあります。AOCアンジュー(Anjou)+AOCトゥーレーヌ(Touraine)+AOCシュヴルニー(Cheverny)という3つのエリアの範囲と同一になります。

やはり、わかりにくいのでGoogle Map上にこのAOCクレマン・ド・ロワールの範囲を転記。今日のポール・ビュイスとピエール・シャイニエの所在も印していますのでご確認を。
Cremant-de-Loire
AOCクレマン・ド・ロワールと言いながらロワール全域が対象ではないというのが興味深いです。いわゆるシュナンブラン主体のエリア。クレマンにソーヴィニョン・ブランが使われない理由がわかった気がします。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
見にくいですが、よく確認すると確かに、AOCアンジュー(Anjou)+AOCトゥーレーヌ(Touraine)+AOCシュヴルニー(Cheverny)が上のAOCクレマン・ド・ロワールの範囲と一致します。


エチケット平面化画像。
IMG_0620
ミレジムはないですが、住所がアンボワーズなのでピエール・シャイニエ傘下になってから作られたものですね。旧URLが書いてあるのはご愛敬。


さあ、抜栓。
IMG_1231
それなりにカッコいいです。

コルク平面化。
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クレマン・ド・ロワール、Méthode Traditionnelle しか書いていません。

Alc.12.5%。
玉ねぎイエロー。
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泡立ちは例によって動画でご確認ください。


青リンゴ、グループフルーツ。
辛口アタック。
柑橘系のフルーティさ溢れる酸が嬉しいです。
やはり、じんわり甘みも感じるグレープフルーツですね。
クレマンの熟成からくるコクはナッツ系の風味。
シュナンの風味も感じられた?ような気がします(笑)。
クレマン・ド・ロワール、いいですね。


*****


Paul Buisse
Crémant de Loire Brut
WWWポイント79点



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Château de Coulaine Les Pieds Rôtis Chinon 2021

ロワールのシノン(Chinon)ですが、シノンと言えば普通カベルネ・フランの赤を想像されるんじゃないでしょうか。しかし今日のこれは白です。白は全体の4%しか作られないそうですから希少ですね。ブドウは、ロワールではピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)と言うシノニムで呼ばれる、シュナン・ブラン100%です。

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作り手はシャトー・ド・クーレーヌ(Château de Coulaine)。シノンの町のすぐ隣、ボーモン・アン・ヴェロン(Beaumont-en-Véron)というところに1470年に建てられたというホンマもんのシャトーがワイナリーになっています。この城を建てたご先祖様はシノンの市長だったそうで、ゴイゴイスーですよね。現当主のジャン・ドニ・ド・ボナヴァンチュール(Jean Denys de Bonnaventure)さんは16代目だそうで、農業工学とワイン醸造学を学んだ後、先代が1994年から有機農法に切り替えたという今時になったなワイナリーを、2017年から引き継いでいます。

シャトー・ド・クーレーヌのインスタに載っていた今日のワインの写真。
IMG_0994
何に合わせているのかマリアージュが気になりますが、ホタテ(Saint-Jacques)だそう。なるほど、これはうまそうじゃ。

公式ページはなかなか品もよく情報豊富。畑の素性やワイン作りのプロセスも解説があります。

ワインの紹介もショップ兼用ながらしっかりしてます。

・シュナン・ブラン 100%

AOCシノンの赤はカベルネ・フラン主体にカベルネ・ソーヴィニヨンを10%までブレンド可(大抵カベフラ100%だそうですが。)ですが、白はシュナン・ブラン一択です。数年使いの旧樽でシュールリーの9ヶ月の熟成をしています。


シャトー・ド・クーレーヌを訪問。ストビューでは門の中へは入れません。
Ch.de-Coulaine
敷地の奥に立派な城があるのがわかります。500年以上前に建てられた本物です。


INAOの地図でAOCシノン(AOC Chinon)の対象コミューンを見ておきます。
Chinon01
シノンというコミューンが中心ですが、シノンだけではないヴィエンヌ川(Vienne)両岸の26のコミューンが対象です。今日の作り手のあるボーモン・アン・ヴェロン(Beaumont-en-Véron)はシノンのすぐ西隣ですね。

この範囲をやっぱりGoogle Mapに重ねてみました。クーレーヌ城も示してます。
Chinon
今日のワインの畑「Les Pieds Rôtis」というのは、ヴィエンヌ川の左岸にあり、クーレーヌ城の対面らしいです。左岸・右岸は川の河口に向かって言うので、シャトーからするとヴィエンヌ川の対岸ということになります。南向きの急な斜面とも書いてあるのでそれらしいところを探しましたが、だいたい対岸に南向きの斜面など見つかりません。畑探しはあきらめましょう(笑)。ブドウの樹齢は約10年で、白い「チョーク」と呼ばれる粘土石灰岩土壌だそうです。

AOCシノン含む周辺のAOCも記したGoogle Map上で位置関係を把握しましょう。
Loire_Anjou_Saumur_Touraine
シノンってトゥーレーヌのエリアの西の端っこなので、通常のエリア別の地図ですと、アンジュー・ソーミュールとの位置関係や、品種の分布が分断されて見えてしまいますが、実はというか当たり前ですが、地続きなので位置関係以上の結びつきがあったりします。アンジューあたりから始まるカベルネ・フラン=ブルトン(Breton)とシュナン・ブラン=ピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)が織りなすモザイクのようなエリアがトゥーレーヌまで広がっています。このあたり(アンジュー・ソーミュール・トゥーレーヌ)を一括で見られる地図はあまりないので、Google Mapで実現するこの地図には意義があるんです。(と、勝手に思っています。笑)

上の地図には、赤・白・ロゼなどの分類は書き込んでいませんが、ここに一覧を貼っておきます。
Loire_Color
Touraine のところに AOP Chinon があります。赤・白・ロゼがOKなのわかりましたでしょうか。また、AOCシノンとはロワール川を挟んで対岸にAOCブルグイユ(AOC Bourgueil)とAOCサン・二コラ・ド・ブルグイユ(AOC Saint-Nicolas-de-Bourgueil)というカベフラ主体のよく似たAOCがありますが、これらには白がないことも気にしておきましょう。

シノンとその周辺のロワール全体の中での位置関係をいつもの「大ロワール地図」で見ます。
Loire_s

この地図の出典は、ロワール渓谷のワインの公式ページというここからです。

ここのインタラクティブ地図はマウスオーバーで色が変わるので、内包されたりオーバーラップしているエリアの関係性がわかりやすいです。奥に入っていくと個別の地域のデータシートに行き着きます。AOCシノンの場合、生産エリアの面積が 2,350ha あることや、86%赤ワインで、ロゼ10%4%しか作られていないこともわかります。


エチケット平面化画像。
IMG_0995
裏ラベルの解説は印刷品質は悪いですが有難いです。

インポーター、ファインズのシールがこうです。
IMG_0993
なぜ、ちょっとだけ重ねるかな~?うまく剥がせませんでした。


さあ、抜栓。
IMG_1110

コルク平面化。
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シャトーのイラストがカッコいいです。

Alc.12.5%。
濃い目のハチミツゴールドイエロー。
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白桃、パイン。
甘やかさ感じる辛口アタック。
酸にスッキリしたミネラル感あり。
味も白桃にグレープフルーツのビター感を足した感じ。
甘やかさが後を引きますが気になるほどではないです。
それが奥深い味わいが後を引く効果になってる気がします。

いやあ、シノンの白、いいじゃないですか。
もっと作ればいいのに(笑)。


*****


Château de Coulaine
Les Pieds Rôtis
- Lieu-Dit du Château de Coulaine -
Chinon 2021
WWWポイント80点



WhiteWhiteWine01

Domaines Tatin Quincy Vin noble 2021

ロワール渓谷上流域、サンセールなんかと一緒に分類されたりするカンシー(Quincy)という産地のワインをお初にいただきます。ここはソーヴィニョン・ブランの白一択のAOCです。ただし、お隣のルイィ(Reuilly)と共にロワール川から少し離れた微妙な位置にあります。そのあたりもお試ししながら深掘りしてみるとしましょう。

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ドメーヌ・タタン(Domaines Tatin)はカンシーに25ヘクタール、ルイィに10ヘクタールの畑を持つ家族経営の作り手です。農業を生業としていたジャン・タタンさんが1988年に奥様のお父上から農場を引き継ぎます。ご夫婦はその農場のワインのポテンシャルを見出し(AOC Quincy ですもんね。笑)、90年代に入ると「Domaine des Ballandor」と「Domaine du Tremblay」という名前(畑の区画名から来ています。)でAOCカンシーの白ワインをリリースして本格的にワイン作りを本業としていきます。カンシーは白しか作れないので、すぐ近くのルイィに畑を買い増しピノ・ノワールを植えて赤ワインもラインアップに加わりました。

公式ページは自然派ワインをアピールするように虫や草木のイラストがあります。

自然に配慮した生産者に与えられる認証、Terra Vitis(テラ・ヴィティス)と Haute Valeur Environnementale(HVE)を取得しているとのこと。なるほど、そこが売りなんですね。
TerraVits
元農場ということもありますが、テラ・ヴィティスの方はワインのみを対象とした認証です。

・ソーヴィニヨン・ブラン 100%

今日のワインそのものがHPに載っていないんですが、インポーター(エイ・エム・ズィー)の説明によると、日本へ導入にあたり日本向けに特別なラベルにしているとのこと。よって、インポーター情報をコピペすると、樹齢20~60年、ステンレス100%で発酵後、バトナージュをしながらシュールリーで熟成ということのようです。

AOC Quincy の規定では、ソーヴィニヨン・ブラン主体に10%までソーヴィニヨン・グリ(Sauvignon Gris)を加えていいことになっています。ソーヴィニヨン・グリはソーヴィニヨン・ブランの色変異種です。色味が変わるかもしれませんが味の傾向は同じ感じじゃないでしょうか(たぶん。知らんけど。笑)。まあ、大抵は今日の作り手のようにソーヴィニヨン・ブラン100%だと思いますが。
AOC Quincy は1936年にロワール地方で初めてAOCに指定された地域になります。フランスで最初のAOC、シャトーヌフ・デュ・パプに次ぎ2番目だそうで、古くから名声があり歴史もある産地ということになりますが、相当古くからソーヴィニヨン・ブランに適した産地であると名前が知れ渡っていたそうです。ソーヴィニヨン・ブランを味わうなら、サンセールやプイィ・フュメじゃなくてカンシーが先に来るべきかもしれませんね。

ロワールではブラン・フュメ(Blanc Fumé)とも言われるソーヴィニョン・ブランです。なので、AOC Pouilly-Fumé も AOC Blanc Fumé de Pouilly と表記しても構いません。
SauvignonB
親子関係ですが、以前より母方が「Savagnin=Traminer」という品種自体の具体的な存在が未確認の理論上の品種ということになっていましたが、最近のデータによるとサヴァニャン・ブラン(Savagnin Blanc)で確定したようです。しかしながら、父方は依然不明のままです。それでは、サヴァニャン・ブランとは何ぞや?ということになりますが、これがまたややこしい。シノニムがトラミナー(Traminer)で、突然変異で果皮色がロゼのサヴァニャン・ロゼ(Savagnin Rose)となり、更なる突然変異でゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)が生まれたとされています。
世界中で栽培されるポピュラーな品種ですが生産量はやはり本家フランスがNo.1です。全世界で124,700haの栽培面積(2016年)で、その内フランスが28,084haですから、本家フランスは1/4(23%)程度ということになります。

ドメーヌ・タタンを訪問します。周りは一面の農地。ブドウ畑ではなさそう。
01
カンシー(Quincy)ではなくブリネ(Brinay)という隣のコミューンにあります。ここでもAOCカンシーが名乗れます。

AOC Quincy と AOC Reuilly を1枚の地図で俯瞰し位置関係を見てみましょう。
Quincy_Reuilly
AOC Quincy は、Quincy と Brinay の2コミューンが対象。 AOC Reuilly は、 Reuilly とその周辺の Diou、Chéry、Lazenay、Lury-sur-Arnon、少し離れて Preuilly が対象コミューンです。ロワール渓谷からは少し離れますが、そのロワール川の支流のシェール川(Le Cher)とそのまた支流のアルノン川(L'Arnon)の流域一帯であることに着目してください。
AOC Reuilly は、AOC Quincy と違い、ピノ・ノワールの赤とピノ・グリ&ピノ・ノワールのロゼが認められています。今日の作り手は赤をラインナップしたくてルイィの畑を買い増したとのことでしたね。

サントル・ロワール(Centre - Loire)の地図で他AOCとの位置関係を確認。
Loire_Centre-Nivernais
サントル・ニヴェルネ(Centre Nivernais)っていう言い方は、日本ソムリエ協会の教本はじめ日本でしか見ないんですが(笑)、フランスではこうは言いません。サントル(Centre)は「真ん中」、ニヴェルネ(Nivernais)はヌヴェール(Nevers)周辺の昔のフランスの地方名で、現在ではニエーヴル県(Nièvre)に相当する地域を指しますが、「ニヴェルネ」の「真ん中」ではおかしいですよね。

これが「中央ロワール」ワインの公式ページ。ここでは「Centre - Loire」と言ってます。

サントル・ロワール。これも個人的には変です。ロワールの真ん中じゃないから…。どちらかと言えばロワール渓谷の最上流域なのでロワールの「端っこ」ですよね。やっぱり、フランスの真ん中(Centre de la France)っていうのが一番合ってる気がします(笑)。
まあ、とにかく「サントル・ニヴェルネ」と言うのはやめて「サントル・ロワール」を日本に定着させないとですね。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
ロワールの全体像が見られていい地図だと思います。一番古いAOC、カンシー、結構変なところにあります(笑)。


エチケット平面化画像。
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日本向け特別ラベルなのかもしれませんが、妙な手作り感があります。

インポーターシールは裏ラベル横に縦貼りしてあったので別撮り。
IMG_0562


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.13%。
しっかりイエロー。
IMG_0671

黄桃、パイン。
木の芽? 緑のニュアンスです。
辛口アタック。
生き生きした酸が心地いいです。
夏みかん風の柑橘系風味に苦味もあって美味しい。
レモンのシャーベットの後味。

やはり、カンシーだからでしょうか。
ロワールで一番感動したソーヴィニヨン・ブランになりました。


*****


Domaines Tatin
Quincy Vin noble 2021
WWWポイント80点



WhiteWhiteWine01

Franck & Aurélien Bailly(Domaine Bailly Reverdy)Chavignol 2017 Sancerre

AOCサンセールの赤をいただきます。ピノ・ノワール100%なので、昨今高騰が激しいブルゴーニュの代わりになるんではないかと期待して抜栓です(笑)。サンセールってソーヴィニヨン・ブランの印象が強いと思います。確かに85%は白らしいんですが、残り15%はピノ・ノワールのみで作る赤とロゼというわけです。ロワールのピノ・ノワールも調べておきたいですね。

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作り手は、ドメーヌ・バイィ・ルヴェルディ。サンセールの隣のコミューン、ビュエ(Bué)にあります。1952年に、ベルナール・バイィ(Bernard Bailly)さんとマリー・テレーズ・ルヴェルディ(Marie-Thérèse Reverdy)さんが結婚した際に始めたドメーヌで、お二方の名前をドメーヌ名にしているのがわかります。今日のワインのラベルには「フランク&オーレリアン・バイィ」となっていますが、フランクさんはベルナールさんの末息子。オーレリアンさんはベルナールさんの息子で二代目のジャン・フランソワさんの息子(ベルナールさんの孫)ということのようです。フランクさんはボルドーで、オーレリアンさんはボーヌとモンペリエで修行をしたあとドメーヌに加わっています。まさに家族経営ですね。

公式ページはサンセールの土壌やテロワールの説明があり好感が持てます。

今日の「フランク&オーレリアン・バイィ」名のワインは見当たりませんが、サンセール・ルージュがそれでしょう。

・ピノ・ノワール 100%

手摘み収穫。除梗ありですが、状況によって茎も若干残すようです。樽はないですが、MLF含む熟成を1年間行います。面白いことに、今日のワインの畑の素性がサンセールの土壌の成り立ちに応じて以下のように示されていました。

50%:カイヨット(Caillottes)<石灰岩の小石からなる土壌>
35%:テール・ブランシュ(Terres blanches)<白色の粘土質(キンメリジャン)の土壌>
15%:シレックス(Silex)<粘土質の硬い土壌(フリント・Frint:火打石)>

HPでも詳しく解説されていて、これらサンセール特有のテロワール(この場合は土壌)にかなりこだわりを持っているのがわかります。

AOCサンセールは、白はソーヴィニヨン・ブラン、赤はピノ・ノワールのみです。ドメーヌ・バイィ・ルヴェルディの畑はピノ・ノワールが30%を占め、サンセールの平均よりは赤を多めにやっているようです。オーク樽での熟成はしない規定のようですね。このあたりが土壌の特徴も相まってブルゴーニュとの味わいの違いになってくるんでしょうかね。


ドメーヌ・バイィ・ルヴェルディを訪問します。
Dom.Bailly-Reverdy01
ロワール川沿いのサンセールの町から車で10分くらいの隣町ビュエ(Bué)にあります。

INAOの地図でAOCサンセールの対象コミューンを確認します。
AOC-Sancerre
今日の作り手のあるビュエ(Bué)は見つかりましたでしょうか。

サントル・ロワール/サントル・ニヴェルネの地図で他AOCとの位置関係を確認。
Loire_Centre-Nivernais
これらサンセール周辺のエリアを、サントル・ロワール(Centre-Loire)とか、サントル・ニヴェルネ(Centre Nivernais)というんですが、ロワールの真ん中ともニエーヴル県(Nièvre)の真ん中とも違う気がします。強いて言えばフランスの真ん中です(笑)。
プイィ・フュメ(Pouilly-Fumé)、プイィ・シュル・ロワール(Pouilly-sur-Loire)やカンシー(Quincy)は白で示してありますが、白ワインのみのAOCという意味です。サンセール他には大抵赤もロゼもあります。ムヌトゥ・サロン(Menetou-Salon)はサンセールと同じく、白ならソーヴィニヨン・ブラン、赤・ロゼならピノ・ノワールです。サンセールの北側コトー・デュ・ジェノワ(Coteaux du Giennois)も赤・白・ロゼありですが、ここの赤・ロゼはピノ・ノワールに加えガメ(Gamay)が認められています。ルイィ(Reuilly)はロゼにピノ・グリが認められています。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
ひと筋縄ではいかないロワールの全体像が見られていい地図だと思います。


エチケット平面化画像。
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「Sélectionné par Jean-Luc Pouteau, meilleur sommelier du Monde 1983」と書いています。裏ラベルでわかりますが、「1983年世界最優秀ソムリエ、ジャン・リュック・プトーのセレクト」という意味です。

ネックにこんなPOPがありました。初代世界最優秀ソムリエが選んだワインだそうです。
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ジャン・リュック・プトーさん、今日のドメーヌ・バイィ・ルヴェルディの赤・白とも選んでいますね。いい作り手ということでしょうか。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
IMG_0047

Alc.13.5%。
透けるルビー。若干オレンジ味があります。
IMG_0048

フランボワーズ、ゼラニウム的な草っぽさ。
上品な熟成香か、出汁感が複雑に折り重なってる感じです。
酸味ほどよく効いた辛口アタック。
やはり熟成が進んだ複雑味が感じられます。
最初の酸はフレッシュさ果実味を添えていい仕事してます。

いやいや、ブルゴーニュに比肩するどころか、
独自の良さ・うまさが出てます。
さすが、ジャン・リュック・プトー・セレクションです(笑)。


*****

Franck & Aurélien Bailly
(Domaine Bailly Reverdy)
Chavignol 2017
Sancerre rouge
RRWポイント 93点


B. François Méthode Traditionnelle Blanc de Blancs Brut

成城石井のスパークリングワインのお楽しみBOXのハズレではありますが、幸い末等ではなく、くじ自体も瓶内二次発酵で揃えてあってハズレてもそんなに悪いものではなさそうです。ただ、こういうののハズレは無名の出どころの知れないものが多く、正体を突き止めるのに難儀することが多いです(笑)。案の定、AOCの表示はなく、ロワールのソーミュールにある作り手であることしかわかりません。さてさて…。

IMG_9873
作り手の特定は困難を極めましたが、ほぼ確実な情報に落ち着きました。CFGV(La Compagnie Française des Grands Vins)という1909年創業という100年以上の歴史のあるスパークリングワイン専門のメーカーでした。パリ近郊のトゥールナン・アン・ブリー(Tournan en Brie)に本拠地(本社)を置き、アルザス北部のヴァイセンブルク(Wissembourg)とロワールのソーミュール(Saumur)を加えた合計3ヶ所に製造拠点を持ち、フランス最大級のスパークリングワインメーカーとして世界60か国以上に輸出もさかんにしているようです。

で、今日のワインはそのソーミュールの拠点である、メゾン・ヴーヴ・アミオ(Maison Veuve Amiot)で作られています。ここは1884年から瓶内二次発酵の伝統的方式で発泡性ワインを作っていたそうで、ロワールの老舗をCFGVが取得して傘下に収めたんでしょうね。


公式ページは単独ワイナリーの如く自社ブランドのみでCFGV向けは触れていないようです。

なので「B. François」というワインは載っておらず、ネット情報で以下を突き止めました。

・シャルドネ
・シュナン・ブラン
・ユニ・ブラン

 白品種のみ。Blanc de Blancs(白ブドウのみで作られる白のスパークリングワイン)というのは合っています。残念ながらセパージュの%は不明。メゾン・ヴーヴ・アミオは、「AOCソーミュール・ムスー(Saumur Mousseux)」と「AOCクレマン・ド・ロワール(Crémant de Loire)」の他、「AOCのないただのスパークリング」と本日のワインのような「AOCのない瓶内二次発酵」の4種展開です。手間をかけて瓶内二次発酵するのにAOCを名乗らないのはもったいないというか、よっぽどの理由があると思われ、そこら辺を考察してみましょう。

 AOC Saumur Mousseux(ムスーはスパークリングです。)の規定では、シュナン・ブランが60%以上なので上記のシャルドネが最大量ならアウトですね。ちなみにAOCソーミュール・ムスーにはロゼもあって、こちらはカベルネ・フランが60%以上ないといけません。また、白・ロゼともソーヴィニョン・ブランは10%以下という規定です。

 AOC Crémant de Loire は、12ヶ月の熟成義務があるのでここでひっかかるかなとも思いましたが、一応出荷まで1年かけると書いてあるのでギリOKかもしれません。

 それより、どちらのAOCの使用可能品種にもユニ・ブラン(Ugni Blanc)がありません。まさかこれを混ぜたおかげでAOC名乗れなくなったんでしょうかね。以下にそれぞれの使用可能品種を挙げます。

AOC Saumur Mousseux Blanc / Rosé>
・Chenin Blanc(Pineau de la Loire)
・Chardonnay
・Sauvignon Blanc
・Cabernet Franc
・Cabernet Sauvignon
・Gamay
・Grolleau Gris
・Grolleau
・Pineau d’Aunis
・Pinot Noir

AOC Crémant de Loire Blanc / Rosé>
・Chardonnay
・Chenin Blanc
・Orbois
・Cabernet Franc
・Cabernet Sauvignon
・Grolleau
・Grolleau Gris
・Pineau d’Aunis
・Pinot Noir


今日のワインに入っているかもしれないユニ・ブラン(Ugni Blanc)を見ておきます。
Ugni-Blanc
サンテミリオン(Saint-Émilion)というシノニムがありましたね。白ブドウで栽培面積がフランス最大ですが、90%がコニャックやアルマニャックになるそうです。どうりで普通のワインではあまり見ません。イタリアではトレッビアーノ(亜種が多い品種で正確には Trebbiano Toscano に当たるようです。)と同じ品種になります。


ソーミュール(Saumur)にあるメゾン・ヴーヴ・アミオを訪問します。
Veuve-Amiot-01
ソーミュール市街から車で5分ほどです。さすが大手です。結構立派な佇まいですね。

アンジュー・ソーミュールの地図で、AOC Saumur との位置関係を見ます。
Loire_Anjou
メゾン・ヴーヴ・アミオの場所を示してあります。長らくこの辺りのAOCの位置関係が掴めていなかったので描いた地図です。特にソーミュール周辺がややこしい。

念のため、INAOの地図で AOC Saumur 関連の範囲を見てみました。
Saumur
あれれ? AOCソーミュール・ムスー(Saumur Mousseux)ってAOCソーミュール(Saumur)よりかなり広範囲に広がっていますね。知らんかった。今後の地図の課題がまたひとつ見つかりました(笑)。

AOCクレマン・ド・ロワール(Crémant de Loire)の地図でも見てみましょう。
Cremant-de-Loire
AOCクレマン・ド・ロワールの範囲は、AOCアンジュー(Anjou)+AOCトゥーレーヌ(Touraine)+AOCシュヴルニー(Cheverny)という3つのエリアの範囲と同一になります。


エチケット平面化画像。
IMG_9761
裏ラベルにはワイナリー名が Caves Elisabeth となってます。


さあ、抜栓。
IMG_9875-(1)

Alc.12%。
イエロー。
IMG_9871

泡の立ち様は動画にてご確認を。


黄桃、夏ミカン。
辛口アタック。
薄い柑橘系の風味。
薄い。軽い。味気ない…。
瓶内二次発酵であればもう少し頑張って欲しかったかな。


*****


La Compagnie Française des Grands Vins (CFGV)
B. François
Premium Sparkling Wine

Méthode Traditionnelle
Blanc de Blancs Brut
WWWポイント76点



WhiteWhiteWine01

Monmousseau Crémant de Loire Méthode Traditionnelle

タカムラの店頭にて久々に漫画(神の雫)のワンページをPOPにしてるのを発見しました。漫画は未だ読破していないので(笑)内容には無知なんですが、このクレマン・ド・ロワールも紹介されていたようですね。そう言えば泡が苦手ということで、フランスの8大クレマンもまだ制覇していません。ここらでクレマン・ド・ロワールを試して掘り下げてみたいと思います。

IMG_9546II
作り手のモンムソーは1866年創業の歴史あるところ。モンムソーの醸造所は、ロワール川の支流シェール川(Le Cher)沿いにある有名なシュノンソー城(Château de Chenonceau)から川沿いに東へ車で15分のところにあります。敷地内にロワールの城の建設に使われた採石場の跡地を発見し、これを天然のセラーとして活用しており、年間を通じ12℃に保たれるという抜群の環境でワイン作りを行っています。

これがタカムラにあった店頭展示。漫画のコピーをそのまま使ってるのがすごい。
IMG_2383
漫画とともに「やっぱりすごい!」というキャッチコピー。気になりますよね。

公式ページは、歴史やロワール渓谷の概要、自慢のセラー解説など情報盛りだくさん。

肝心のワイン紹介は外部のショップサイトへのリンクとなります。

・シュナン・ブラン 58%
・シャルドネ 30%
・カベルネ・フラン 12%

これはタカムラのPOPにあったセパージュ。ネット情報では、シュナンブラン 55%、シャルドネ 33%、カベルネ・フラン 7%、ピノ・ノワール 5%と、ピノ・ノワールが入ってるというのもありました。公式ページにはパーセンテージはないのですが、カベルネ・ソーヴィニヨンとグロロー(Grolleau)も入ってるとあります。情報が錯綜していますが、まあ、シュナン・ブラン主体ということで(笑)。熟成期間は18~24ヶ月となっています。AOCクレマン・ド・ロワールの規定でいくと、「伝統的方式/シャンパーニュ方式(瓶内二次発酵)で12ヶ月以上の熟成」なので結構贅沢に寝かしてるみたいです。モンムソーの地下セラーで自然に12℃の一定に保たれる素晴らしい環境ですからいいですね。

AOCクレマン・ド・ロワールの規定で使える品種は以下の通り。

<白品種>シュナン・ブラン、シャルドネ、オルボワ(Orbois)
<黒品種>カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、グロロー、グロロー・グリ、ピノー・ドーニス、ピノ・ノワール

黒品種もあるのはロゼがあるからで、ロゼはカベフラ主体で作られることが多いようです。

シュナン・ブランはロワールでは「Pineau de la Loire」というシノニムがあります。
CheninBlanc01jpg
シュナン・ブランは、2018年のDNA分析でサヴァニャン(Savagnin)と何らかの品種の自然交配で生まれたとされています。さらにこのシュナン・ブランとグエ・ブラン(Gouais Blanc)の交配から、バルザック・ブラン(Balzac Blanc)、コロンバール(Colombard)、ムスリエ・サン・フランソワ(Meslier Saint-François)といった品種が生まれたことが判明しています。


モンムソーを訪問。シェール川べりの道に面しています。
Monmousseau01
前述のように、ロワール川の支流シェール川(Le Cher)沿い。シュノンソー城(Château de Chenonceau)から川沿いに東へ車で15分のところです。採石場跡と思われる建造物が丘の斜面に入り口を見せています。ここからセラーに入れるんでしょうかね。


さて、クレマン(Crémant)~をまとめておきます。シャンパーニュ以外の伝統的方式(Méthode Traditionnelle)/シャンパーニュ方式(Méthode Champenoise)、いわゆる瓶内二次発酵のフランス産スパークリングワインはクレマン(Crémant)という名称を使って以下の8つのAOC(Appellation d'Origine Contrôlée)にまとめられます。


クレマン・ド・サヴォワ(Crémant de Savoie)が2014年6月制定と一番新しいAOCです。また、(12ヶ月)と書いたもの以外は熟成期間が9ヶ月以上の規定になっています。消費量はクレマン全体の約半分がクレマン・ダルザス(Crémant d'Alsace)で圧倒的1位です。それぞれの産地は名前からどこかわかりますよね?

クレマン軍団(?)の公式ページというのがあり、各クレマンについて詳しく載っています。



さて、今日のクレマン・ド・ロワール(Crémant de Loire)に話を戻しましょう。
LoireMapa
INAOの地図ですが、AOCクレマン・ド・ロワールの範囲が示してあります。AOCアンジュー(Anjou)+AOCトゥーレーヌ(Touraine)+AOCシュヴルニー(Cheverny)という3つのエリアの範囲と同一になります。

やはり、わかりにくいのでGoogle Map上に転記。モンムソーの所在も印しています。
CremantLoire
AOCクレマン・ド・ロワールと言いながらロワール全域が対象ではないというのが興味深いです。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
見にくいですが、よく確認すると確かに、AOCアンジュー(Anjou)+AOCトゥーレーヌ(Touraine)+AOCシュヴルニー(Cheverny)が上のAOCクレマン・ド・ロワールの範囲と一致しますね。


エチケット平面化画像。
IMG_9489
Brut とか甘・辛口の表示がないですね。HPのワイン紹介ページには「Brut」と書いてあるので辛口なんでしょう。


さあ、抜栓。
IMG_9541
ミュズレ等無印でつまらないですが、価格的に仕方ないでしょう。

Alc.12.5%。
薄いゴールドイエロー。
IMG_9544

泡の立ち具合は動画にてご確認ください。


青リンゴ、黄桃。
生き生きした酸を感じる辛口アタック。
いい具合に苦味もベースにあります。
バター、ナッツ感も出ています。
若干パイン系トロピカル感も来たような…。
いろんな要素があって味わいも深くていいですね。


*****


Caves Monmousseau
Crémant de Loire
Méthode Traditionnelle
WWWポイント79点



WhiteWhiteWine01

Domaine de Terres Blanches Alchimie Sauvignon Blanc 2019 Coteaux du Giennois

スーパーで見つけたロワールのソーヴィニヨン・ブランです。ニュージーランドほか新世界が続いていたのでフランスのソーヴィニヨン・ブランは久しぶりです。産地はコトー・デュ・ジェノワCoteaux du Giennois)ですね。サンセールやプイィ・フュメは飲んでるんですが、コトー・デュ・ジェノワはまだ試したことのないところでした。

IMG_9032
作り手はドメーヌ・ド・テール・ブランシュ(Domaine de Terres Blanches)と言いますが、プイィ・シュル・ロワール(Pouilly sur Loire)に本拠地があるメゾン・サジェ・ラ・ペリエール(Maison Saget la Perrière)という大手メゾンが、サンセール(Sancerre)のすぐ隣のブエ(Bué)というコミューンに売りに出されていたワイナリーを1998年に取得、2014年にファーストヴィンテージをリリースしたばかりの新しいところです。
(メゾン・サジェ・ラ・ペリエールはプイィ・フュメからペイ・ナンテまで、今日のドメーヌ・ド・テール・ブランシュ含め計5つのワイナリーを所有し、ロワール全域をカバーしています。)

ドメーヌ・ド・テール・ブランシュはサンセールとコトー・デュ・ジェノワに35haの畑を所有。2013年から世界的に著名な醸造家&コンサルタントのステファン・ドゥルノンクール(Stéphane Derenoncourt)さんにコンサルタントを依頼し、テロワールの個性が見事に表現されたワインを2014年にリリース、ドメーヌ・ド・テール・ブランシュという名前もこの時つけられました。「Terres Blanches(白い土地)」とはサンセールとコトー・デュ・ジェノワのミネラル豊富な粘土石灰質(キンメリジャン)の土壌を指す言葉です。「そのままやん」という名前のドメーヌです(笑)。

※サンセールやプイィ・フュメ(Pouilly-Fumé)のエリアでは、テール・ブランシュ(Terres Blanches)の他、石灰岩の小石からなるカイヨット(Caillottes)、火打ち石や粘土を含んだシレックス土壌(Silex)が特徴的です。


公式ページは新しいドメーヌだけあってスクロール式の今風です。ワイン紹介もしっかりあり。

ワイン紹介もデータシート完備です。

・ソーヴィニヨン・ブラン 100%

AOCコトー・デュ・ジェノワ(Coteaux du Giennois)に属するボニー・シュル・ロワール(Bonny sur Loire)のコミューンにある畑から。ロワール川を見下ろす珪質粘土土壌(ケイ酸塩?Silexっぽい?)のテラスに植えられているそうです。低温浸漬でしっかりと落ち着かせた後、温度調節付きタンクで20日間発酵。ソーヴィニヨン・ブランのフレッシュさを引き出し、セラーのタンクで4~6ヶ月熟成されます。
サンセールの単一畑ものがフラッグシップとすれば、このコトー・デュ・ジェノワはエントリーラインということのようですが、しっかりこのあたりのテロワールを表現できているそうです。

フランス原産ソーヴィニョン・ブランです。ロワールではブラン・フュメ(Blanc Fumé)とも言われ、AOC Pouilly-Fumé も AOC Blanc Fumé de Pouilly と表記しても構いません。
SauvignonB
ソーヴィニヨン・ブランは以前より、母方が「Savagnin=Traminer」という品種自体の具体的な存在が未確認の理論上の品種ということになっていましたが、最近のデータでは「サヴァニャン・ブラン(Savagnin Blanc)」で確定したようです。しかし、父方は依然不明のままです。実はピノ・ノワールも母方がサヴァニャン・ブラン(Savagnin Blanc)で父方不明ということになっています。面白いですね。
じゃあ、サヴァニャン・ブランとは何ぞや?ということになりますが(笑)、これがまたややこしい。シノニムが「トラミナー(Traminer)」、突然変異で果皮色がロゼのサヴァニャン・ロゼ(Savagnin Rose)となり、更なる突然変異でゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)が生まれたとされています。
世界中で栽培されるポピュラーな品種ですが、全世界で124,700haの栽培面積(2016年)で、その内フランスが28,084haですから、本家フランスは1/4(23%)程度ということになります。以下、ニュージーランド(20,497ha)、チリ(14,999ha)、南アフリカ(9,246ha)、アメリカ(6,747ha)、モルドバ(6,909ha)、オーストラリア(6,044ha)と続きます。ニュージーランドを筆頭に新世界すごいですね。


ドメーヌ・ド・テール・ブランシュを訪問。まだ新しい建物です。
Dom.TerresDBlanches
サンセール(Sancerre)の町の南西、車で8分くらいの所にあります。付近も一面畑でワイナリーもたくさんありますね。


AOC コトー・デュ・ジェノワ(Coteaux du Giennois)の範囲をINAOの地図で確認。
INAO_CDG
今日のワインの畑があるというボニー・シュル・ロワール(Bonny sur Loire)もどこかわかりました。ロワール川を見下ろす珪質粘土土壌のテラスというのがどこかわかりませんが(笑)。

サントル・ロワール(Centre-Loire)/サントル・ニヴェルネ(Centre Nivernais)の地図で他AOCとの位置関係を確認。ドメーヌ・ド・テール・ブランシュの所在も書き込んでいます。
Loire_Centre-Nivernais
プイィ・フュメ(Pouilly-Fumé)、プイィ・シュル・ロワール(Pouilly-sur-Loire)やカンシー(Quincy)は白で示してありますが、白ワインのみのAOCという意味です。サンセール他には大抵赤もロゼもあります。もちろんコトー・デュ・ジェノワ(Coteaux du Giennois)も赤・白・ロゼありです。赤・ロゼはピノ・ノワールとガメが認められています。

ついでに、いつもの「大ロワール全体地図」(笑)も貼っておきます。
Loire_s
ひと筋縄ではいかないロワールの全体像が見られていい地図だと思います。

この地図の出典は、ロワール渓谷のワインの公式ページというここからです。

わかりやすくていいサイトです。


エチケット平面化画像。
IMG_9008
シンプルなラベル。ミレジムもAOCも裏ラベル見ないとわかりませんでした。


さあ、抜栓。
IMG_9028

コルク平面化。
IMG_9029
この線がトレードマークなんですね。

Alc.13.5%。
オレンジ味ある濃いめのイエロー。
IMG_9030

夏ミカン、グレープフルーツ、洋梨かリンゴの皮。
香りは多めです。
辛口アタック。
リンゴ風のうまさ、コクもあります。
ミネラル感というのかスモーキーな風味。
とにかく酸と複雑味のバランスが絶妙です。
後味も印象的でした。

とにかく今まで試したソーヴィニヨン・ブランの中でも
別格なくらいいいですね。
ここのサンセールならどうなんでしょう。気になる~。


*****


Domaine de Terres Blanches
Alchimie Sauvignon Blanc 2019
Coteaux du Giennois
WWWポイント80点



WhiteWhiteWine01

Thierry Michon Domaine Saint Nicolas Cuvée Jacques 2011 Fiefs vendéens Brem

AOCフィエフ・ヴァンデアン・ブレム(Fiefs Vendéens Brem)からのピノ・ノワールです。こんなワインを試すのは、このところの高騰もあってブルゴーニュ以外の美味しいピノ・ノワールを探しているからで、フランス国内でも各所でピノ・ノワールは作られていますので結構楽しんで探しています。またこれは、「知識としては知っているが飲んだことがないAOC」でもあります。一応、ロワールに分類されるようですから後ほどまとめておきましょう。

IMG_8517
作り手のドメーヌ・サン・二コラは、1960年に先代パトリス・ミションさんが始めた家族経営のワイナリーです。息子のティエリー・ミション(Thierry Michon)さんが現当主となってから、近代的なワイナリーを建設、ビオディナミも実践し、1995年には全所有畑が ABマーク、Demeter、Biodyvin、Ecocert の認証を受けています。マイナーな産地ですが各方面で評価は高いようです。産地の「フィエフ・ヴァンデアン(ブレム)」は、VDQSから2011年にAOCとなっています。
* VDQS(Vins Délimités de Qualité Supérieure)とは、2011年まであったフランスのワインの規格で、2011年に全ての産地がAOCに昇格し、事実上廃止されています。(EUのワイン法にこれに当たるカテゴリーがなかったため廃止になりました。)

公式ページはグッド。内容充実。メンテ(facobookやブログの更新)もされています。

ワイン情報は最新ヴィンテージの2017年のデータシートのみでした。

・ピノ・ノワール 100%

ビオディナミによる栽培、手摘み収穫、完全除梗、1~2年落ちのオークの大樽で12ヶ月の熟成です。

ドメーヌ訪問。きれいなカーヴが見えますが、ストビューでは近づけませんでした。
Saint_Nicolas01
サーブル・ドロンヌ(Les Sables-d'Olonne)という大西洋に面した海辺の町のすぐ東隣のリル・ドロンヌ(L'Île-d'Olonne)という町にあります。車で10分で海岸に出られるくらい海に近いので、今日のワインの AOCフィエフ・ヴァンデアン・ブレム(Fiefs Vendéens Brem)は気候や土壌が海の影響を強く受けているようです。フィエフ・ヴァンデアン~と名の付くAOCは5ヶ所あるんですが、それぞれの場所のテロワールは異なると思われ、AOCフィエフ・ヴァンデアンという名前で一括りにはできなさそうな印象を受けます。

さあ、AOCフィエフ・ヴァンデアンってどこやねん?ということですが、ロワール渓谷のワインの公式ページ「VINS DU VAL DE LOIRE」のインタラクティブ地図で見てみるとペイ・ナンテ(Pays Nantais)の南側にかろうじて載っていることがわかります。
Muscadet03
フィエフ・ヴァンデアンのエリアをクリックしても何も出てきません。オマケ程度の扱いですね。

INAOの地図で場所を確認するとこんな感じ。
INAO_Fierfs_Vandeens
フィエフ・ヴァンデアンの5地域はヴァンデ県(Vendée)にあり、「Fiefs Vendéens」が「ヴァンデ県の領地」という意味なのも合点がいきます。ナント(Nantes)のあるロワール・アトランティック県(Loire Atlantique)の隣(南側)の県になりますが、どちらもペイ・ド・ラ・ロワール地域圏(Pays de la Loire)という同じ地方に属しますので、ロワールの一員という扱いのようです。

以上、ペイ・ナンテ地区の飛び地のような AOCフィエフ・ヴァンデアン ~(AOC Fiefs Vendéens ~)ですが、後ろにコミューン名をつけて5ヶ所に分れます。単なる「AOC Fiefs Vendéens」というのはありません。コミューン名付きの以下の5つになります。

・Fiefs Vendéens Brem(フィエフ・ヴァンデアン・ブレム)
・Fiefs Vendéens Mareuil(フィエフ・ヴァンデアン・マルイユ)
・Fiefs Vendéens Chantonnay(フィエフ・ヴァンデアン・シャントネ)
・Fiefs Vendéens Pissotte(フィエフ・ヴァンデアン・ピソット)
・Fiefs Vendéens Vix(フィエフ・ヴァンデアン・ヴィックス)

AOCフィエフ・ヴァンデアンは、赤・白・ロゼが認められています。白ワイン主体のペイ・ナンテに分類されてるのがやはり違和感ですね。

<赤>
主要品種:カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ネグレット(Négrette)
補助品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、ガメ

<ロゼ>
主要品種:ガメ、ピノ・ノワール
補助品種:カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ネグレット
※Fiefs Vendéens Brem はグロロー・グリ(Grolleau Gris)も使えます。

<白>
主要品種:シュナン・ブラン
補助品種:シャルドネ
※Fiefs Vendéens Brem はグロロー・グリ(Grolleau Gris)も使えます。
※Fiefs Vendéens Vix はソーヴィニョン・ブランも使えます。


AOCフィエフ・ヴァンデアンはフランス全体のどのあたりかというとこんな感じ。
フランス産地
緯度的にはブルゴーニュあたりと同じくらいですかね。

上のフランス地図の四角部分をGoogle Mapで拡大、AOC Fiefs Vendéens を書き込みます。
Fierfs_Vandeens
先ほどのINAOの地図でお気づきの人がいればすごく偉いです。注意深く見てみると、フィエフ・ヴァンデアン・ピソット(Fiefs Vendéens Pissotte)の対象エリアはピソット(Pissotte)のコミューンのみとなっており、そこに連なる3つのコミューンは「ひとかたまり」で同じエリアなのかと思えば、少し離れたフィエフ・ヴァンデアン・ヴィックス(Fiefs Vendéens Vix)の方に属しています。つまり、フィエフ・ヴァンデアン・ヴィックスは分断されて2ヶ所あるということです。これ、大抵のフランスAOCの解説書は間違ってますので、すごい新事実って気がします(笑)。

対象コミューンをまとめると…。

<AOC Fiefs Vendéens Brem
Brem-sur-Mer
・Bretignolles-sur-Mer
・L'Île-d'Olonne
・Olonne-sur-Mer
・Vairé

<AOC Fiefs Vendéens Mareuil
・Chaillé-sous-les-Ormeaux
・Le Champ-Saint-Père
・Château-Guibert
・La Couture
Mareuil-sur-Lay-Dissais
・Rives de l'Yon
・Rosnay
・Le Tablier

<AOC Fiefs Vendéens Chantonnay
Chantonnay

<AOC Fiefs Vendéens Pissotte
Pissotte

<AOC Fiefs Vendéens Vix
・Auchay-sur-Vendée
・Longèves
・Le Poiré-sur-Velluire
   ------------------------
Vix

以上、マイナーなAOCを掘り下げてみました~の回でした(笑)。


エチケット平面化画像。
IMG_8464
裏ラベルのQRコードは公式ページではなく携帯専用の簡易サイトにつながり、ドメーヌの簡単な説明やアクセス地図が提供されています。頑張ってますね。

インポーターシールは微妙に重ねてありました。なぜに?
IMG_8463
これでもかのビオワイン、ビオディナミの認証マークです。


さあ、抜栓。
IMG_8512

コルク平面化。
IMG_8513

Alc.12%。
オレンジ褐変ありの濃いめルビーです。2011ですからね。
IMG_8516

フランボワーズ、リコリス、ダシ感も。
熟成か、樽から来るのか、スパイスっぽくも。
酸味がそこそこ主張する辛口アタック。
果実味しっかりあります。
奥行きのある複雑な味わいです。
かすかな苦味様の味もいいアクセント。
酸味が帰ってきながらですが、余韻に浸れます。
ちょこっとオリがありました。ビオっぽい。

ピノ・ノワールとしてなかなかのレベルですよ。
こんなのを探していきましょう。
ブルゴーニュに頼らなくていいように(笑)。


*****


Thierry Michon
Domaine Saint Nicolas
Cuvée Jacques 2011
Fiefs Vendéens - Brem -
RRWポイント 92点


Domaine de Pallus Les Pensées de Pallus 2016 Chinon

たまに無性に飲みたくなるロワールのカベルネ・フラン。今日はAOCシノンからですが、このドメーヌ・ド・パリュ(Domaine de Pallus)というのを割と評判がよさそうなので選んでみました。パーカーおじさんも92点をつけています。なるほど、あまり安くなかったのは(4000円台)そんなせいですね。しかし、これは楽しみです。

IMG_8399
作り手は、ベルトラン・スルデ(Bertrand Sourdais)さんという、醸造家で名を馳せた人で、高祖父が1889年にシノンの地に立ち上げたワイナリー、今日のドメーヌ・ド・パリュ(Domaine de Pallus)がご実家です。2005年から5代目としてドメーヌを引き継いで運営し、過去の輝かしい経歴で培ったノウハウを投入しAOCシノンのワインを世に出しています。
その経歴というのがすごい、というか面白いです。ボルドー大学で醸造学を学んだ後、スペイン・プリオラートのアルバロ・パラシオス(Alvaro Palacios)、チリのサンタ・リタ(Santa Rita)、フランス・ボルドーではムートン・ロートシルト(Château Mouton Rothschild)やレオヴィル・ラスカーズ(Château Leoville-Las Cases)といった錚々たる生産者の元で修行を積み、2000年にはスペインのワイン商ミゲル・サンチェスさんと共同で立ち上げたリベラ・デル・ドゥエロのドミニオ・デ・アタウタ(Dominio de Atauta)が好評を博し、醸造家としてその手腕が高く評価されることになります。
実家のドメーヌ・ド・パリュ(Domaine de Pallus)の運営をするようになっても、惚れ込んだスペインの銘醸地リベラ・デル・ドゥエロは自身の活動拠点になっているのでしょう。2010年には Bodegas Antídoto、2011年には Dominio de Es という新しいワイナリーを、ドミニオ・デ・アタウタに近いリベラ・デル・ドゥエロの東端のソリア県に立て続けに立ち上げています。

公式ページはベルトラン・スルデさん名の総合サイト。そしてなんと全編スペイン語のみ!?

自らをソリアの作り手と名乗り、facebookもスペイン語でしか書いていません。ご実家のドメーヌ・ド・パリュ(Domaine de Pallus)もしっかり載っていますが、リベラ・デル・ドゥエロの所有ワイナリーの方が先で、メニューの末席です。フランス人であることを忘れたんでしょうか?
まあ、今日のシノンはちゃんと載ってますので良しとしましょう(笑)。

・カベルネ・フラン 100%

このドメーヌのフラッグシップですので、最良の畑のブドウを使っています。熟成はブルゴーニュのオーク樽で12ヶ月+コンクリートタンクで6ヶ月です。

カベルネ・フランです。ロワールではブルトン(Breton)というシノニムがあります。
Chinon02
AOCシノン赤・ロゼはカベフラが主体ではありますが、実はカベソーも10%までなら混ぜてよいことになっています。しかし、大体がカベフラ100%であり、カベソーを混ぜるところはほぼないようですが。また、AOCシノンにはもあります。ロワールでは、ピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)と呼ばれるシュナン・ブラン100%です。ドメーヌ・ド・パリュはこの白のAOCシノンも出しています。

そうそう、カベフラはカベソーの母でしたね。
カベルネ・ソーヴィニヨン= (母) カベルネ・フラン x (父) ソーヴィニヨン・ブラン。

ドメーヌ・ド・パリュを訪問しておきます。
Domaine_de_Pallus01
クラヴァン・レ・コトー(Cravant-les-Côteaux)というシノンの隣のコミューンになります。

所有畑の区画の地図がHPにあったので、今日のワイン「Les Pensées de Pallus」の区画がわかりました。早速行ってみます。ドメーヌのすぐ横、石垣で囲われていてカッコいいです。
Domaine_de_Pallus02
石灰質の岩の上を鉄分が豊富な石を含む砂の層が覆ってる土壌だそうです。

INAOの地図でAOCシノン(AOC Chinon)の対象コミューンを見ておきます。
Chinon01
シノンというコミューンが中心ですが、シノンだけではないヴィエンヌ川(Vienne)両岸の26のコミューンが対象です。今日の作り手のあるクラヴァン・レ・コトー(Cravant-les-Côteaux)はシノンのすぐ東隣ですね。

さあ、AOCシノン周辺含むGoogle Map上でドメーヌの位置関係を把握しましょう。
Loire_Anjou_Saumur_Touraine
シノンってトゥーレーヌのエリアの西の端っこなので、通常のエリア別の地図ですと、アンジュー・ソーミュールとの位置関係や、品種の分布が分断されて見えてしまいますが、実はというか当たり前ですが、地続きなので位置関係以上の結びつきがあったりします。アンジューあたりから始まるカベルネ・フラン=ブルトン(Breton)とシュナン・ブラン=ピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)が織りなすモザイクのようなエリアがトゥーレーヌまで広がっています。このあたり(アンジュー・ソーミュール・トゥーレーヌ)を一括で見られる地図はあまりないので、Google Mapで実現するこの地図には意義があるんです。(と、勝手に思っています。)

上の地図には、赤・白・ロゼなどの分類は書き込んでいませんが、ここに一覧を貼っておきます。
Loire_Color
Touraine のところに AOP Chinon があります。赤・白・ロゼがOKなのわかりましたでしょうか。また、AOCシノンとはロワール川を挟んで対岸にAOCブルグイユ(AOC Bourgueil)とAOCサン・二コラ・ド・ブルグイユ(AOC Saint-Nicolas-de-Bourgueil)というよく似たAOCがありますが、これらには白がないことも気にしておきましょう。

シノンとその周辺のロワール全体の中での位置関係をいつもの「大ロワール地図」で見ます。
Loire_s

この地図の出典は、ロワール渓谷のワインの公式ページというここからです。

ここのインタラクティブ地図はマウスオーバーで色が変わるので、内包されたりオーバーラップしているエリアの関係性がわかりやすいです。奥に入っていくと個別の地域のデータシートに行き着きます。AOCシノンの場合、生産エリアの面積が 2,350ha あることや、86%赤ワインで、ロゼ10%4%しか作られていないこともわかります。


エチケット平面化画像。
IMG_7757
フォントがお洒落だわ。

そしてインポーターのシールの貼り方がこの有り様でした。
IMG_7756
いつもながらモトックスさんはこんな感じ。やれやれ。


さあ、抜栓。
IMG_8394

コルク平面化。
IMG_8395
「Les Pensées de Pallus」と書いた専用品。ミレジムもしっかり入ってます。

Alc.13%。
ガーネット。中程度の大きさのはっきりした涙あり。
IMG_8397

黒ベリー、プラム、鉛筆の芯。
フッとブレットが香った気がしました。
辛口アタック。
クールな酸が程よく効いています。
いいカベフラのエレガントさを纏って複雑味がやって来ます。
程よいタンニン、程よい酸味、コーヒーっぽさも出てきて、
最終的なバランスは絶妙と思われます。
余韻もクールに決まりました。

あくまでも偶然ですが(笑)、
パーカーおじさんと同じ92点になりました。


*****

Domaine de Pallus
Les Pensées de Pallus 2016
Chinon
RRWポイント 92点


--- Red Red Wine ---

:「偉いワイン」探しの備忘録

"Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない"

かの有名なSFの名言です。(笑)
あくまで自己流にワインの世界を日々記録しています。
いつかその「偉いワイン」に出会うために。偉いワインとは?

尚、 各記事末の「RRWポイント」なる点数はロバート・パーカー気取りのマイ評価です。

• 即ち、50~100点の100点満点評価
• 白ワインWWWポイントは80点満点


So much wine, so little time...

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