Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録

ワインについて、僕SFが自分用のメモ・備忘録として書き込む場所です。 Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない。 かの有名な僕の名言です。(笑) あくまで自己流に、(お手頃価格の)ワインの世界を日々記録しています。 いつかその「偉いワイン」に出会うために。

RRWポイント:91点

Shannon Ridge High Elevation Zinfandel 2020 Lake County

カリフォルニアのジンファンデルです。カリフォルニアのポピュラーな品種ではありますが、特にジンファンデル/プリミティーヴォにはこだわりはありません。じゃあ、どうしてこのワインを手にしてしまったかというと、レイク・カウンティーというお初の産地だったからです(笑)。正確にはレイク・カウンティ産のワインはHESSのワインで一度ニアミスはしていますが。

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ソノマ・カウンティの農場で育ったクレイ・シャノンさんは、セント・ヘレナのブドウ畑のマネージャーとしてキャリアをスタート、カリフォルニアのワイン産地を転々としてブドウ栽培の腕を磨きます。その後、ブドウ栽培管理会社を立ち上げ、北カリフォルニアのトップ・ワイナリーなどにブドウを供給していました。そのクレイさんがレイク・カウンティのクリア湖のほとりに広大な理想郷に出会い、1996年にシャノン・ファミリー・オブ・ワインズをそこに設立したということです。

公式ページは動画がいっぱい。サステイナブルな有機農業システムを高らかに謳っています。

やはりアメリカ、ワイン情報はショップのみ。

・ジンファンデル 100%

情報はネット頼りですが、裏ラベルに「オークの香り」と書いてあるので樽熟していると思いきや、オーク・ステイブ(オークの樽板)を投入しての9ヶ月間熟成だそうです。新板率(?)35%らしいです(笑)。

アメリカでの呼び名はジンファンデル(Zinfandel)。しかしながら、1994年のDNA分析にて正体はクロアチアあたりが原産のプリミティーヴォ(Primitivo)と判明しています。
Zin01
今だに「オラが国のオリジナルの品種だ!」と主張するアメリカ人が結構いるそうです。EUが1999年に「Primitivo」のシノニムとして「Zinfandel」を認めるまで、アメリカの公的機関、BATF(Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives=米国アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)もこの主張をしていたようです。
そのアメリカ人の気持ちはわからなくもないんですが、だいたい「Zinfandel」という名前も出どころ不明で、オーストリアの品種「Zierfandler(ツィアファンドラー)」と間違えてしまったという説が濃厚です。これ全く別の白品種なんですけど…。やっぱり、プティ・シラーの命名の一件といい、アメリカはカオスです。(笑)


シャノン・ファミリー・オブ・ワインズを訪問。でっかいけど少々ショボい佇まい。
Shannon
クリア・レイク(クリア湖)の周辺に畑が広がっています。ただ、今日のワインは「High Elevation Collection」というシリーズなので、標高平均700mの山の上のブドウ畑なんだそうです。

レイク・カウンティを俯瞰してAVA(American Viticultural Areas)を見てみましょう。
Lake-County
シャノン・ファミリー・オブ・ワインズは「Big Valley District – Lake County」というAVAにありますね。レイク・カウンティは広域のノース・コーストAVA(North Coast AVA)に属します。以下のレイク・カウンティのAVAを挙げておきます。地図と照らし合わせてみましょう。

●Clear Lake AVA(以下のAVAを内包しています。)
 Big Valley District–Lake County AVA
 High Valley AVA
 Kelsey Bench–Lake County AVA
 Red Hills Lake County AVA
 Upper Lake Valley AVA

●Guenoc Valley
●Benmore Valley


ラベル平面化画像。
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インポーターはアグリ。HPで生産者情報が詳しく書いてあって好感が持てます。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.13.9%。
赤味のあるガーネット。
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黒ベリー、カシス、スパイス、かすかな香ばしさは樽香か
酸から飛び込んでくる辛口アタック。
苦味様の滋味を纏った味の厚みはそこそこあります。
酸はフルーティーさを演出していることに気づきます。
甘味も思わせる感じです。

余韻もそこそこじっくり楽しめました。
いいジンファンデルだと思います。


*****

Shannon Ridge
High Elevation Collection
Zinfandel 2020
Lake County
California
RRWポイント 91点


Viña San Esteban In Situ Single Parcel Pinot Noir 2020 Aconcagua Costa

近所のスーパーで「IN SITU」というチリワインを発見。昔、アメリカ在住中によく見かけたチリワインのブランドなのでとても懐かしいです。本当はカルメネールがあったら嬉しかったんですが、チリのピノ・ノワールもいいものがありますから試してみないといけません。

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作り手のビニャ・サン・エステバンは、アコンカグア渓谷で高品質のワインを生産するために1974年にホセ・ビセンテ(José Vicente)さんが立ち上げた家族経営のワイナリーです。「イン・シトゥ(In Situ)」はビニャ・サン・エステバン(Viña San Esteban)のブランド名ですが、ほぼ屋号のように使ってますね。ラテン語でしょうか、「オン・サイト(現場で)」の意味だと思われます。ビニャ・サン・エステバンがあるのは、アコンカグア川流域のサン・エステバンという町です。ワイナリー名は所在の町の名前から取ったようですね。現在では息子のオラシオ(Horacio)さんがブドウ畑の改修・ワイナリーの近代化を推し進めており、品質向上目覚ましいようです。なにしろ、このオラシオさん、ボルドー大学で醸造を学び、シャトー・ムートン・ロートシルト、ムートン・カデで働き、カリフォルニアに渡ると伝説のパリス・テイスティングで3位となったシャローン・ヴィンヤードでも働いています。

公式ページはモダンな感じでいいですね。アメリカ向けの輸出が多いんでしょう。

データシートもあってワイン情報は充実しています。

・ピノ・ノワール 100%

太平洋岸から16kmというところにある単一畑からのピノ・ノワールを手摘み収穫しています。やはりボルドー式、225Lのフレンチオークのバリックで12ヶ月の熟成をしています。瓶詰め後、リリース前さらに6ヶ月寝かします。

イン・シトゥ~ビニャ・サン・エステバンを訪問します。
InSitu01
パッと見、チリの田舎の農家風情ですが、近代的なセラーを備える立派な施設です。サン・エステバンというアコンカグア川沿いの町にあり、この辺りが地理条件「Andes」を付記できるサン・エステバン(San Esteban)というDOアコンカグア・ヴァレーのサブリージョンになっています。

今日のワインのラベルには D.O. Aconcagua Costa となっています。この D.O.(Denominación de Origen)について深掘りをしておきたいと思います。なぜなら、これはお馴染みの D.O. Aconcagua Valley とは別で、2012年に新たに設定された D.O. になるからです。いったいどのエリアになるのかということを、バルパライソ州(Región de Valparaíso)のGoogle Mapで確認してみましょう。
Aconcagua_Valparaiso
バルパライソ州は首都サンティアゴのある首都州を取り囲むように太平洋側に広がっており、アコンカグア・ヴァレーのみならず、カサブランカ・ヴァレー、サン・アントニオ・ヴァレーまでを含めてアコンカグア・リージョンRegión Vitícola de Aconcagua)を形成しています。

チリでは2011年に新しい原産地呼称表示の制度が導入されていまして、
 ●Costa(コスタ =海岸)
 ●Entre Cordilleras(エントレ・コルディジェラス =山脈の間の平地部分)
 ●Andes(アンデス =アンデス山脈)
の3つの地理条件をD.O.に付記できるようになっています。

じゃあ、D.O. Aconcagua Costa は D.O. Aconcagua Valley(Valle del Aconcagua)+ Costa なのかというとさにあらず、この翌年の2012年に別個に独立したD.O.として設定された別のものになります。対象エリアは上のGoogle Map上に(Costa)の印をつけた産地、アコンカグア・リージョンの海岸側の部分になります。つまり、アコンカグア・ヴァレーのコスタ(Zapallar と Quillota)+カサブランカ・ヴァレー+サン・アントニオ・ヴァレーという、海岸線に沿った広大な D.O. ということです。Zapallar と Quillota については元々固有の D.O. を持たなかった地域ですから、新たに D.O. 認証を受けたということになりますね。

イン・シトゥ(ビニャ・サン・エステバン)の場所を地図上に示していますが、ワイナリー自体は内陸の地理条件「アンデス」に属します。今日のワインのピノ・ノワールの畑は海岸線から16キロとのことですから、ワイナリーからは結構離れていることになります。どこだかわからないのが残念ですが、海岸線近くの「コスタ」のエリアのどこかなんだな~と眺めておいてください(笑)。

以下はアコンカグア・リージョンの DO、サブリージョン、エリア、付記される地理条件のまとめです。今日の「D.O. Aconcagua Costa」は表現されていませんが、「Costa」とされているところすべてと思ってください。
Región vitícola de AconcaguaValle del AconcaguaZapallar
Quillota
Hijuelas
Panquehue
Catemu
Llay-Llay
San Felipe
Santa María
Calle Larga
San Esteban
Costa
Costa

Entre Cordilleras
Entre Cordilleras
Entre Cordilleras
Entre Cordilleras
Entre Cordilleras
Andes
Andes
Andes
Valle de CasablancaCasablancaCosta
Valle de San AntonioCartagena
Algarrobo
Costa
Costa
Valle de LeydaSan Juan
Santo Domingo
Costa
Costa
Valle del Marga-MargaQuilpuéCosta














(出典:Anexo:Regiones vitícolas de Chile

Costa(コスタ=海岸)、Entre Cordilleras(エントレ・コルディジェラス=山脈の間の平地部分)、Andes(アンデス=アンデス山脈)それぞれのエリアを示した地図です。
A
このあたりをもっとしっかり調べたいんですが、チリのSAG(Servicio Agrícola y Ganadero =農業牧畜庁)のサイトを見てもバッチリの資料ってないんですよね~。まあ、飲みながら調べながら、ぼちぼち追記・修正をしていくとしましょう。(笑)


ラベル平面化画像。
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おっと、裏ラベルに畑名が書かれていますね。「Los Aromos vineyard」。ググってみましたが畑の場所の特定には至りませんでした。残念。

インポーターはカルディでお馴染みのオーバーシーズです。
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ここのシールは裏ラベルを隠さないタイプなので好感が持てますね。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.13%。
ルビーにかすかなオレンジ味あり。
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フランブエサ(ラズベリー)、チェリー、リコリス。
ゼラニウムもあります。
辛口アタック。
酸がしっかり一本通ってる感じ。
程よいコクと複雑味あり。
コンパクトにこじんまりとまとまってますがバランスはいいです。
余韻からフィニッシュまで酸が再度主張するのが少し余計。
なかなかのうまさと思いますが、ちょっと最後にケチがついたかな。


*****

Viña San Esteban
In Situ
Single Parcel Pinot Noir 2020
Aconcagua Costa
RRWポイント 91点


Majella The Musician Cabernet Shiraz 2020 Coonawarra

南オーストラリアのクナワラ産のカベソーとシラーズのブレンドというのがすぐわかるラベルです。やまやに最近並びだした作り手のようで今回がお初になります。近所でもいろいろ新しいのが入ってくるのはいいもんですね。昔と比べるとやまやは頑張ってる印象で、ボルドーや新世界関係で面白そうなのがちょこちょこ入ってますので、ついつい偵察に行ってしまいます(笑)。

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南オーストラリア州のワインゾーン、ライムストーン・コーストのクナワラ・リージョンにペノーラ(Penola)という小さな町がありますが、そこに4世代に渡って住んでいるリン家(The Lynn family)が営むワイナリーが今日のワインのマジェラ(Majella Wines)です。ブドウ園とワイナリーを設立し、ワイン作りのためのブドウ栽培を始めたのは1968年からで、それまで現在のブドウ畑になっているクナワラの土地で羊を放牧してウールを生産していたとか。ずっと地元の大手老舗ウィンズ・クナワラ・エステート(WYNNS Coonawarra Estate)にブドウを供給したりしていたそうですが、1996年にワイナリーを新設しメンバーも増強して本格的にワイン生産を本業としています。ただし、まだ羊の放牧もやってるそうです(笑)。

公式ページは内容充実、ギャラリーにはいい写真がふんだんに上がっています。

ワイン紹介はショップ兼用ではありますが、過去のデータシートが全部載ってるのがすごいです。

・カベルネ・ソーヴィニヨン  74%
・シラーズ 26%

クラシック・オーストラリアン・ブレンドと書いていますが、オーストラリアの王道って感じですね。ステンレスとオークのタンクの組み合わせで発酵。オークとの接触を最小限に抑えながらさらに 6 か月間熟成。樽がどれくらい使われているのか明記はされていませんね。

マジェラを訪問。ストビューが古すぎて超低解像度だったのでHPから写真を拝借。
Majellaa011
ペノーラ(Penola)の町か北へ車で5分。まさにクナワラというエリアになります。


クナワラ(Coonawarra)含むライムストーン・コースト(Limestone Coast)です。
Australia_Limestone_Coast
ライムストーン・コーストは、バロッサ・ヴァレー他銘醸地の G.I.(Geographical Indications)を擁する南オーストラリア州ですが、一番南側になり、すぐ東側をヴィクトリア州に接しています。クナワラ含め6つのサブリージョンがありますので合わせてご確認ください。

これら G.I. は、政府公式のワイン・オーストラリアというサイトで一覧で見られます。

オーストラリア全体では65の G.I. がありますが、一覧ページから個々のサブリージョンのリンクがあり詳細情報が見られます。地図も完備で大変有用です。

参考までに「南オーストラリア州」の地図を貼っておきます。
South_Australia01
クナワラ含むライムストーン・コーストはバロッサなどと同じ南オーストラリア州(South Australia)に属するのがわかります。


ラベル平面化画像。
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はい、アウト。
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何とかなりませんかね、この丸隠し。


さあ、スクリュー回転。
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無印。

Alc.14.5%。
ガーネット。
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黒ベリー、ダークチェリー、胡椒。
辛口アタック。
厚み、奥行きしっかりあり。
酸も効果的に効いています。
余韻もある。


*****

Majella
The Musician Cabernet Shiraz 2020
Coonawarra
RRWポイント 91点


Viñas Bisquertt La Joya Single Vineyard Carmenere 2017

久しぶりにビニャ・ビスケルト(Viña Bisquertt)のカルメネールをいただきます。結構グレードの高そうなやつを見つけたなと思っていましたが、調べると、以前に飲んだ「Ecos de Rulo」ってやつの名称変更だそうで、2016年のヴィンテージから「La Joya」になってるとのこと。前のは2015でしたので、そのヴィンテージ違いの2017をいただくということになりました(笑)。

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ビニャ・ビスケルトは、1978年創業のコルチャグア・ヴァレーの家族経営の作り手です。マルチグエ(Marchigüe)にあるエル・チェケン(El Chequén)という95ヘクタールの畑を所有。チリらしくすべて接ぎ木なしの自根のブドウだそうです。この地域のパイオニア的存在だと豪語しています(笑)。

公式ページはトップページの自社畑の空撮映像が印象深いです。

データシート付きでワイン紹介があります。「La Joya」は「宝石」の意味があります。

・カルメネール 100%

D.O. Marchigüe(Marchihue)にあたる自慢のエル・チェケンの畑からの手摘み収穫。樽熟は、オークの大樽とコンクリートタンクの併用で12ヶ月です。


ビスケルトを訪問しますが、ストビューがなく畑と池のショットです(笑)。
Bisquertt01
マルチグエ / マルチウエ(Marchigüe / Marchihue)の集落の北にある広大な畑ですが、ワイナリー施設と思われる建物がショボいのが少々気になります。大きなため池のようなのが敷地の真ん中にあるようです。

HPには所在を示すこんな地図が載ってましたが、これは少々盛りすぎ(笑)。
Bisquertt_Colchagua
この地図ですと、リベルタドール・ヘネラル・ベルナルド・オイギンス州全体がコルチャグア・ヴァレーに見えますが、半分はカチャポアル・ヴァレーです。また、ビスケルトはこんなに広くありません(笑)。所有畑がこの範囲に散らばってるという意味かもしれませんが…。

リベルタドール・ヘネラル・ベルナルド・オイギンス州(Región del Libertador General Bernardo O'Higgins)を俯瞰してビニャ・ビスケルトの正確な所在を確認します。
Libertador_O'Hinggis_Rio
色付きの文字で地名が入っているところは、コルチャグア・ヴァレー、カチャポアル・ヴァレー、それぞれのサブゾーンで、今日のワインの「D.O. Marchigüe(Marchihue)」のようにそれぞれ単独のD.O. になっています。


ラベル平面化画像。
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ヴィーガンのマークがあります。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.14%。
ガーネット。
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黒ベリー、モカ、青みもかすかにある。
カルメネールの王道の香りです。
辛口アタック。
酸味は程よく乗っています。
圧倒的ではないですが、
厚み・複雑みの感じはいいカルメネールのそれです。

若干軽めですが、フライドチキンにうまく合いました(笑)。
合わせやすいカルメネールということで。


*****

Viñas Bisquertt
La Joya Single Vineyard Carmenere 2017
D.O. Marchihue
RRWポイント 91点


Weinhaus Weinreich ROT Rotwein Trocken 2019 Rheinhessen

ラインヘッセンの赤ブレンド。ドルンフェルダーが主体のようです。ラインヘッセンと言えばドイツ最大のワイン生産地であり、生産量も最大です。そんなラインヘッセンなのですが、なぜかあまり飲む機会がありませんでした。こっちが避けていることはないと思うのでインポーターの扱いの偏りでしょうか。とにかくお試ししながら深掘りしてみましょう。

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ラベルがあまりにも簡素なので裏ラベルを頼りに作り手を調べます。ラインヘッセンのベライヒ・ヴォンネガウ(Wonnegau)にあるベヒトハイム(Bechtheim)という町のヴァイングート・ヴァインライヒ(Weingut Weinreich)ということはわかりました。ヤンとマルクのヴァインライヒ兄弟が2009年から始めたワイナリーになります。今日のワインもユーロリーフのビオワインですが、オーガニックやヴィーガンを積極的に推し進めているようです。マキシメ・ヘアクンフト・ラインヘッセン(Maxime Herkunft Rheinhessen)というVDP会員から成るラインヘッセンの生産者団体(2017年発足)のメンバーです。

公式ページはこれ。単一畑ワインやゼクト(Sekt=Schaumwein)もやってますね。

ワインリストに今日のワインはあるようなんですが、個別の説明がないですね。しかたないので、以下インポーター情報から。

・ドルンフェルダー 60%
・メルロー 30%
・カベルネ・ソーヴィニヨン 10%

ステンレスタンクで発酵、18ヶ月の樽熟成をするとのこと。ドルンフェルダー主体にメルロー・カベソーとは面白いブレンドな気がします。

ドルンフェルダー(Dornfelder)はラインヘッセンで黒品種では一番多い品種です。
Dornfelder
ドイツ国内でも黒ブドウとしては2番目に多く栽培されている品種です。(1位はもちろん、Spätburgunder、ピノ・ノワールです。)この品種が生まれたのは1955年で、ヴァインスベルク研究所のアウグスト・ヘロルド(August Herold)さんが、

・ヘルフェンシュタイナー(Helfensteiner)X ヘロルドレーベ(Heroldrebe )

の交配で生み出しました。人工交配で生まれたのにこの交配品種が判明したのは2012年のDNA鑑定によってだそうで、アウグストさん、ちゃんとメモっておきましょうね(笑)。この品種が交配されたヴァインスベルク(Weinsberg)研究所の創設者、イマヌエル・ドルンフェルドさん(Immanuel A. L. Dornfeld)に因んでドルンフェルダー(「ドルンフェルドさんの~」の意。)と名づけられています。


ヴァイングート・ヴァインライヒ(Weingut Weinreich)を訪問しましょう。
Weinreich01
ドイツはストビューがないのでHPでワイナリー外観写真を探しますが全くありません。facebookにもない。困った果てにネットで見つけたのが右上にインポーズしてある写真です。立派な外観でホテルもやってるようなんですが何で写真を上げてないんでしょうね?
このタンクの写真は公式に上がっていたものです。ワイナリーはベヒトハイム(Bechtheim)の町の中にあります。

ラインヘッセン(Rheinhessen)は13ある指定生産地域(g.U.)のひとつです。
Rheinhessen
ラインヘッセンは、ドイツのワイン産地の総面積のほぼ 4 分の 1 を占めます。品種の比率は以下のような感じです。(2021年統計:ラインヘッセン公式HP

リースリング 19%
ミュラー・トゥルガウ 15%
ドルンフェルダー 12%
・ピノ・グリ(Grauer Burgunder)8%
ジルヴァーナー 7%
ピノ・ノワール(Spätburgunder)5% …

白ワインが優勢ですが(全体の約73%)、ドルンフェルダーも相当あるのがわかります。これでもドルンフェルダーの栽培面積はドイツ国内最大です。また、ラインヘッセンは以下の3つのベライヒ(Bereich)に分かれます。(上の地図にも示しています。)

・ビンゲン(Bingen)
・ニーアシュタイン(Nierstein)
・ヴォンネガウ(Wonnegau)

今日の作り手は、地図にも記したようにベライヒ・ヴォンネガウ(Bereich Wonnegau)に属しています。加えてラインヘッセンは、24の集合畑(Großlage)、432の単一畑(Einzellage)を内包しています。


ラベル平面化画像。
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インポーターシールは目立たず、裏ラベルも隠しません。
Importer-seal


さあ、スクリュー回転。
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Alc.12.5%。
赤味があるガーネット。
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黒ベリー、アセロラ、リコリス。
辛口アタック。
ちょうどいい酸に誘われ、
こじんまりした旨味に辿り着く感じ。
薬草の臭みはほぼないです。
ピノ・ノワールのようなエレガントさもありますね。
ビオだからか結構なオリが最後にありました。

その昔、ドイツで初めて飲んだドルンフェルダーが薬草の風味満載でした(笑)。
その印象からすると意外過ぎるぐらい美味しいです。
やはり同じ品種もいろいろ試さないとだめですね。


*****

Weingut Weinreich
ROT Rotwein Trocken 2019
Rheinhessen
RRWポイント 91点


Masseria Borgo dei Trulli Lucale 2021 Primitivo Passito Puglia IGP Appassimento

プーリア州のプリミティーヴォをいただきます。このところアメリカのジンファンデルばっかりだったので、久しぶりのイタリアのプリミティーヴォということになります。同じ品種とはわかっていますが、作り方も含めて結構それぞれで趣きが違う気がしています。そんなところも楽しんでみましょう。

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作り手のマッセリア・ボルゴ・デイ・トゥルッリ(Masseria Borgo dei Trulli)は、プーリア州ターラント県(Taranto)マルッジオ(Maruggio)にあるワイナリー。いわゆる、プリミティーヴォ・ディ・マンドゥリアDOC(Primitivo di Manduria)のエリアになります。時系列の経緯まで調べられなかったんですが、2010年創業でトレントに本拠地を持つオリオン・ワインズ(Orion Wines)というのが所有するワイナリーです。ここはイタリア中10ヶ所に生産拠点を持つ大企業みたいです。
そのオリオン・ワインズのプーリア州の拠点が今日のマッセリア・ボルゴ・デイ・トゥルッリで、「トゥルッリの村の農家」みたいな意味のネーミングになっています。トゥルッリ(Trulli)というのはこの地方の伝統的な石造りの小屋のことだそうです。(HPに写真がありました。)
Trulli02
トゥルッリはプーリア州の観光地にもなってるアルベロベッロ(Alberobello)のものが有名ですが、そちらとはずいぶん見かけが違うようですね。

Alberobello
アルベロベッロ(Alberobello)はワイナリーからも車で1時間以上離れているようですし。


公式ページは単独で設けてあり、内容も一つのワイナリーのように豊富です。

今日のワインもここの主力か、データシート付きで紹介されています。

・プリミティーヴォ 100%

畑はマンドゥリア(Manduria)とアヴェトラーナ(Avetrana)のコムーネにあるそうです。ワイナリーまでは車で20~30分といったところでしょうか。樹齢は25~35年と古樹の部類です。ブドウが完熟すると、「il giro del picciolo」という「ブドウの房の茎をねじって栄養を止める技」を使うそうです。これでアパッシメント(Appassimento:陰干しで乾燥させること)が進むそうです。このまま12日間放置され、20~30%の水分が失われるとのこと。
除梗あり、破砕なし。ステンレスタンクで発酵中に頻繁にルモンタージュ(Remontage)を行います。デレスタージュ(Délestage)という特殊な方法(果帽が浮き上がった際に一度果汁のみを別に移し、果皮や種子を数時間空気に触れさせて酸化させ、その後果汁を再び発酵槽に戻す方法)で行うそうです。澱引き後、マロラクティック発酵を行います。しかし、すごく手の込んだ作り方をしてるんですね~。
熟成はというと、ワインの全量の約25%のみフランスとアメリカのバリックで8ヶ月間と、ここは少し軽めです。

プリミティーヴォはアメリカでジンファンデルと呼ばれる品種と同一なのはご存知の通り。
Zinfandel
原産はクロアチアで、そのクロアチアでトリビドラッグ(Tribidrag)もしくはシュリエナク・カシュテランスキ(Crljenak Kaštelanski)と呼ばれる品種と同じものであることがわかっています。イタリア原産じゃないんだ…と思ってしまいますが、今の「イタリア」という国が確立したのが19世紀後半で、ナポレオン戦争(1803 - 1815年)前まで遡るとクロアチアにあたる所はそれまではヴェネツィア共和国領だったりします(笑)。
昔イタリア
もっとも、この品種自体は2000年以上前にフェニキア人かギリシャ人が今のプーリアの地へ持ち込んだとされていますから、原産国を語るのは野暮なのかもしれません。海側から来たとすれば、なぜイタリアのブーツのかかと(プーリア州)なのかは合点がいきますね。
プリミティーヴォがジンファンデルと同一品種である可能性は早くから疑われていて、DNA分析がなかった頃からほぼ同定する研究結果が存在しています。カリフォルニア大学デイヴィス校のキャロル・メレディス博士のチームは1994年には2つの品種は同一である結果をDNA分析から得ており、その後もクロアチアとイタリアのブドウの専門家と協力して研究を継続し、2011年には以下の3品種は同一であることが確定しました。

Tribidrag (=Crljenak Kaštelanski)(クロアチア)
Primitivo(イタリア)
Zinfandel(米国カリフォルニア)

因みに、同時にモンテネグロの以下の品種も同じものだと判明しています。
・Kratošija(モンテネグロ)
聞いたことないし、知らなくてもいい情報ですね(笑)。

この判定が出て、EUが1999年に「Primitivo」のシノニムとして「Zinfandel」を認めると、それまで「オラが国のオリジナルの品種だ!」としていた米国BATF(Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives=米国アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)の主張は却下されました(笑)。だいたい「Zinfandel」という名前も出どころ不明で、オーストリアの品種「Zierfandlerツィアファンドラー)」と間違えてしまったという説が濃厚です。これ全く別の白品種なんですけど…。やっぱり、プティ・シラーの命名の一件といい、アメリカはカオスです(笑)。


マッセリア・ボルゴ・デイ・トゥルッリ(Masseria Borgo dei Trulli)を訪問。
Trulli01
幹線道路沿いのポツンと一軒家風情です。2019年、まだ建設中かな?


プーリア州(Puglia)俯瞰してワイナリーの場所を確認します。
Puglia02
確かにプリミティーヴォ・ディ・マンドゥリアDOC(Primitivo di Manduria)のエリアですね。今日のワインは「Puglia IGP(Indicazione Geografica Protetta)」なのでプーリア州全体が対象です。しかし畑の場所もエリア内なのでプリミティーヴォ・ディ・マンドゥリアDOCで出しても良さそうなものですが。ちょっと考察してみましょう。
イタリアの IGP の生産量TOP10を挙げると以下になります。(2018年データ)

(1)Terre Siciliane940,300hl)
(2)Veneto940,000hl)
(3)Emilia(854,500hl)
(4)Puglia(731,700hl)
(5)Trevenezie(651,700hl)
(6)Toscana604,500hl)
(7)Rubicone(523,700hl)
(8)Provincia di Pavia(490,700hl)
(9)Salento(487,800hl)
(10)Terre di Chieti(222,100hl)

プーリアIGPは第4位の超ポピュラーIGPということになります。9位のサレントIGP(Salento)でも出せそうですね。これらIGPには、プリミティーヴォの赤のみではなく、様々な品種の赤・白・ロゼ・スパークリングがあり、なんでもOK状態です。ただ一つ気になるのは、これらIGPに「Passito」というアパッシメントの設定があることです。個人的見解ですが、作り手が「Passito」に価値を見出し、「Passito」を前面に表示したかったから、あえて「Puglia IGP」を選んだのではないかと思うのです。

少しズームアップした「Salento IGP」の地図でもワイナリーの位置を見ましょう。
Puglia_Salento_IGP
IGP Salento の範囲は、レッチェ県(Provincia di Lecce)+ターラント県(Provincia di Taranto)+ブリンディジ県(Provincia di Brindisi)となります。ちょうどブーツのヒールの部分ですね。プーリアIGPより範囲が狭まった分、上等な感じがしますが、なぜサレントIGPで出さなかったんでしょうね(笑)。


ラベル平面化画像。
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表ラベルに(たぶんブドウの)木のイラストがありますが、金色で描いてあります。この写真ではわかりにくいですが。バーコードの上の木も面白いですね。おっと、安定剤(アカシア)配合ですね(笑)。


さあ、抜栓。
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コルク平面化。
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Alc.14.5%。
濃いガーネット。
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黒ベリー、熟したチェリー。
墨のような香りは「スモーキー」ってやつですかね。
甘みをかすかに感じる辛口アタック。
アパッシメント効果か「煙い」濃い味わいです。
シナモンっぽい風味はプリミティーヴォの個性。

さすが手が込んでるだけあって、アパッシメントが生きてる印象。
ここまでやって、アカシアなしでは無理なのでしょうか?


*****

Masseria Borgo dei Trulli
Lucale 2021
Primitivo 
Passito Puglia IGP
Appassimento
RRWポイント 91点


Pago Casa Gran Casa Benasal 2020 DO Valencia

スペイン、DOバレンシアの赤ブレンドをいただきます。裏ラベルには「GSMブレンド」と書いているので、Grenache(グルナッシュ)、Syrah(シラー)、Mourvèdre(ムールヴェードル)のブレンドと思いきや調べるとどうやらちょっと違うようです。そんなところを紐解きながらバレンシアのおさらいをしたいと思います。

IMG_9569
ワイン名の「カサ・ベナサル」は今日の作り手パゴ・カサ・グランが敷地内に所有する古い醸造所。そこでは300年以上前からワイン作りがされていたそうです。現オーナー、カルロス・ガルビスさんのお母様マヌエラ・ガルビスさんが1960年代にドイツの知人からもらい受けたゲヴュルツトラミネールでワイン作りを始めたのが「パゴ・カサ・グラン」の始まりです。2004年に引き継いだカルロスさんは、ヨーロッパの有機認証も取得して、自然派ワイン推しでワイナリー再興を遂げているとのこと。

公式ページは日本語もあってビックリ。ワイン紹介ページに行くと英語のままですが(笑)。

ワイン紹介に%がなかったので以下はインポーターのモトックス情報。

・ガルナチャ・ティントレラ 40%
・シラー 40%
・モナストレル 20%

Garnacha Tintorera、Syrah、Monastrell。これらGSMをコンクリートタンクで4ヶ月の熟成をさせます(樽熟する上級モデルもあるようです)。ん?ちょっと待てよ? モナストレルはムールヴェードルのシノニムだからいいとして(どちらもMで始まるのは偶然か?)、ガルナチャ・ティントレラ(Garnacha Tintorera)は、いわゆるグルナッシュ・ノワール(Grenache Noir)ではなく、アリカント・アンリ・ブーシェ(Alicante Henri Bouschet)という、果肉・果汁が色付きのタンテュリエTeinturier)の品種になります。ちなみにスペインでのグルナッシュの正式名称は「Garnacha Tinta」といいます。

これがただのガルナチャとは違うガルナチャ・ティントレラ(Garnacha Tintorera)です。
Alicante-Henri-Bouschet
アリカント・アンリ・ブーシェ(Alicante Henri Bouschet)、もしくはアリカント・ブーシェ(Alicante Bouschet)で知られる、1866年に Petit Bouschet と Grenache が交配されたフランスが原産の品種ですが、フランスでは減少傾向で2,607haしかなく、スペインが19,294haとダントツ1位です。他にはポルトガルのアレンテージョでも多いですが(4,547ha)、新世界ではチリも多いです(6,908ha)。スペイン語のティントレラ(tintorera=染物屋、クリーニング屋の意)は、フランス語でタンテュリエ(teinturier)ですので、名前の由来がわかりますね。

モナストレル(Monastrell)はムールヴェードル(Mourvèdre)のシノニムです。
Barahonda03
オーストラリアやアメリカではマタロー(Mataró)というシノニムで呼ばれます。スペインではモナストレル(Monastrell)と呼ばれ、原産はスペインです。14世紀にバレンシアにて言及されたのが最初の記録なのでバレンシア州原産が一番有力です。修道僧によって栽培されていたようで、モナストレルの名前の由来は「修道院(monasterio)」と思われます。16世紀に南仏に伝わりますが、バレンシアのサグント(Sagunt)の港から海路でプロヴァンスに伝わったものは、サグントのカタルーニャ語名が「ムルビエドロ(Murviedro)」だったことから「ムールヴェードル」として広まり、陸路でルシヨンに入ったものは、バルセロナ近くの町「マタロー(Mataró)」がそのまま品種の名前になったと考えられます。全部「M」で始まるからよかったですね(笑)。とにかく、いろんなGSMがあるということで(笑)。


パゴ・カサ・グランを訪問します。あるあるですがストビューで近づけません。
PagoGranCasa01
バレンシア県の南部になります。バレンシア州(Comunidad Valenciana)の州都バレンシア周辺がバレンシア県です。バレンシア州は北からカステジョン県(Castellón)、バレンシア県、アリカンテ県(Alicante)の3県で構成されます。余談ですが、このあたりは地名が2通りの綴り方があったりします。これはこの地方にカタルーニャ語のバレンシア方言というのがあるかららしいです。(例えば、スペイン語:Valencia、カタルーニャ語:València)パゴ・カサ・グランの所在もモヘンテ(Mogente)/モイシェント(Moixent)と2通りで書かれます。また、このあたりは「Les Alcusses」ヴァレーという渓谷になっていて昔からワインの産地だったそうです。


バレンシア州(Comunidad Valenciana)全体を見てみましょう。
Valencia_DOs
パゴ・カサ・グランの所在を印しています。DOバレンシアは2ヶ所に分かれていますが、その南側ですね。バレンシア州には以下の3つのDO(Denominación de Origen=EUワイン法でいうDOP:Denominación de Origen Protegida)があります。

・Valencia
・Utiel-Requena
・Alicante

厳密に言うと、以下の3つもバレンシア州の原産地呼称ということになります…。

Cava (DO Cava の Levante ゾーン、Requenaの町に相当)

3つとも過去に試して記事を書いていますので詳しくはリンク先をご参照。

実はカスティージャ・ラ・マンチャ州やムルシア州と一緒に見た方がベターです。
Castilla-La-Mancha+Valencia
なぜなら、以下の他州のDOがバレンシア州に隣接しており、一緒に覚えた方がわかりやすいからです。地図で位置関係を確認ください。

・Manchuela(Castilla–La Mancha)
・Almansa(Castilla–La Mancha)
・Yecla(Murcia)
・Jumilla(Castilla–La Mancha / Murcia)

フミージャ(Jumilla)はカスティージャ・ラ・マンチャ州とムルシア州の両方にまたがっています。なかなかスペインのDOは一筋縄ではいかなそうです(笑)。


ラベル平面化画像。
IMG_9145
水滴や「B」は型抜きがしてありボトルの中が素通しになっています。チョウは農薬を使うと最初に姿を消す生き物ということで、自然派ワインの象徴として描かれています。

モトックスのシールはこの有り様でした。毎度剥がすの大変です。
IMG_9144
「破砕せずに自然酵母で発酵、シュールリーで数ヶ月熟成」など醸造の情報が書いていたり、ユーロリーフ、Vegan Wineもあるのに丸隠しです。


さあ、抜栓。
IMG_9566

コルク平面化。DIAM1。
IMG_9564

Alc.13.5%。
ガーネット。
IMG_9567

黒ベリー、スミレ、スパイス、茎っぽさあり。
辛口アタック。
穏やかないい酸に導かれ、
膨らみと複雑味のある味に到達します。
若干軽めの印象ながらもミートソースによく合いました。
充分楽しめるGSMです。


*****

Pago Casa Gran
Casa Benasal Red 2020
GSM Blend
DO Valencia
RRWポイント 91点


Château Roc de Bécot 2017 Puisseguin-Saint-Émilion

数日前にサンテミリオンの2022年最新格付けについて記事を書いたところだったので、やまやの店頭でこのシャトー・ロック・ド・ベコというワインが目に留まりました。Bécot という名前もそうですが、ロゴのフォントが Premier Grand Cru Classé に格付けされているシャトー・ボー・セジュール・ベコと同じだったのでピンときました。調べるとやはりボー・セジュール・ベコがピュイスガン・サンテミリオンに取得したシャトーで作るカジュアルワインなんだそうで。

IMG_9598
サンテミリオンのプルミエ・グラン・クリュ・クラッセ格付けシャトー、ボー・セジュール・ベコ(Château Beau-Séjour Bécot)はベコ家が1969年に取得しています。今日のワイン、シャトー・ロック・ド・ベコが作られるシャトーは、2015年に取得したシャトー・べルノン・ベコというところで、ピュイスガン・サンテミリオンにあり、元は Roc de Bernon という名前だったそうです。なるほど、「べルノン・ベコ」となるわけです。
「シャトー・ロック・ド・ベコ」という今日のワインはそこのセカンドというかカジュアルラインといった感じです。シャトー名の「ベルノン・ベコ」の方がメインのワインになります。

シャトー・ボー・セジュール・ベコの公式ページは、なんとFLASHベースで内容が見られません。2022年の格付けで脱退者が続出した原因が、「Reputation」というWEBを含む宣伝などワインの本質とはかけ離れた部分の評価に35%も配点がなされたことです。なのに公式ページが表示できないとは、よく格付け認定されましたね。不思議~(笑)。

シャトー・べルノン・ベコの公式ページは単独であります。こちらはちゃんと見られます(笑)。

今日のシャトー・ロック・ド・ベコもちゃんと情報がありました。

・メルロー 95%
・カベルネ・フラン 5%

若木と言っても樹齢35年だそうです。機械収穫。100%ユーズドの樽で熟成。期間は不詳です。

シャトー・べルノン・ベコを訪問します。2015年取得ですから、さすがに新しい。
Roc_de_Becot01
ピュイスガン(Puisseguin)のコミューンの真ん中。集落からもすぐです。

サンテミリオン周辺、ボルドー右岸のAOCの位置関係とシャトーの所在を確認します。
Bordeaux_Right_Fronsac
フロンサックやポムロール含め、なんちゃらサンテミリオンもすべて赤のみのAOCです。この地図で示したところで唯一例外がフラン・コート・ド・ボルドー(Francs Côtes de Bordeaux)で、ここは白と甘口白も認められています。

ついでなので親元のシャトー・ボー・セジュール・ベコも見ておきましょう。
Saint-Emilion_2022
シャトー・ボー・セジュール・ベコ(Château Beau-Séjour Bécot)はサンテミリオンの2022年の格付けでも引き続きプルミエ・グラン・クリュ・クラッセ(Premier Grand Cru Classé)に格付けされています。
*この地図ではサンテミリオンの最高格付け、Premier Grand Cru Classé の(A)と(B)をマークで示してありますが、2022年の格付け表では「(A)」か「(A)なし」かという表記になっています。しかしながら、旧地図を活用していることもあって、「(A)なし」は「(B)」のままにしています。

シャトー・ボー・セジュール・ベコも訪問してみました。
Beau_Sejour_Becot01
遠景を見るとここがサンテミリオンの小高い丘の上という感じがしますね。

エチケット平面化画像。
IMG_9590
おっと、安定剤(アカシア)入りですね。安ワインはこれを入れないと貫禄出ないってことでしょうか?


さあ、抜栓。
IMG_9595
キャップシールは上等ワイン風情でカッコいいです。

コルク平面化。
IMG_9593
圧搾コルク、DIAM3を採用です。

Alc.14%。
ガーネット。
IMG_9597

黒ベリー、ブラックチェリー。
酸味がかった熟成香がします。
辛口アタック。
ちょっと酸が踊るんですが、
バランスまずまずで立体感ある味わいです。
メルローにしてはしっかり重いのがうれしい。
なかなかのアカシアを感じさせない味わいでした(笑)。


*****


Château Bernon Bécot
Château Roc de Bécot 2017
Puisseguin-Saint-Émilion
RRWポイント 91点


Château Bel-Air 2015 Graves de Vayres

ボルドーは、メドックの格付けシャトーはじめ、グラーヴ、サンテミリオン、ソーテルヌやら超有名な産地・ワインがありますが、対照的に有象無象の無印AOCボルドーもごまんとあるのも事実。そんな中でAOCコート・ド・ボルドーのような独自のAOCを持つところなんかちょっといいんじゃないかとよく試していますが、AOCグラーヴ・ド・ヴェール(Graves de vayres)というのが未試飲でした。近所で見つけたのでゲットしてお試ししてみます。

IMG_9443
この手のワインで苦労するのが作り手の正体を突きとめることです。所在がわからなかったり、公式サイトが見つからなかったりしますからね。案の定、今日のこのワイン「Château Bel-Air」もあまり手掛りなく特定に難航しました。

ラベルには唯一オーナーが「Philippe Serey-Eiffel」という情報があります。公式サイトはついぞ見つかりませんでしたが、「Graves de Vayres」の生産者サイト紹介がありました。

普通はここから公式ページへのリンクがあったりするんですが、そもそも公式ページが存在しないようですね。facebook や Instagram は見つかったんですけどね。

ネット上にも断片的な情報はあり、「Château Bel-Air Eiffel」とも呼んでいるようです。
Ch.BelAir01
建物には「1823年」と刻まれているのでシャトーの歴史は古そうです。そのシャトー・べレールをギュスターヴ・エッフェルさんが取得して今に至るようで、現在のオーナーがその血を引くフィリップさんということですね。「べレール(Bel Air=美しい風)」と名の付くシャトーは数多くあるので区別するために名前を後ろにくっ付けているようで、会社名としては「Château Bel-Air Serey-Eiffel」となっています。16ヘクタールのブドウ園を所有し、メルロー(50%)・カベルネ・ソーヴィニヨン(50%)の作付けです。したがって、今日のワインのセパージュもこうなるようですね。この辺りにしてはカベソー多めです。

・メルロー 50%
・カベルネ・ソーヴィニヨン 50%

樽熟成はしていると思われますが詳細は書いていません。現在のボルドーでは珍しい1913年製の古い垂直油圧プレス機で圧搾するとか、要らん情報は書いてあるんですが(笑)。


シャトー・べレールの場所は突きとめました。ヴェール(Vayres)のコミューンにあります。
BelAir01
そう、AOCグラーヴ・ド・ヴェール(Graves de vayres)のエリアです。敷地含め結構立派なシャトーなんですが、ストビューでは中に入れず。Google Mapに上がっていた写真を貼っておきます。

AOCグラーヴ・ド・ヴェール(Graves de vayres)のエリアを俯瞰して位置関係を確認。
Graves_de_Vayres
ヴェール(Vayres)とアルヴェル(Arveyres)の2つのコミューンがこのAOCの対象です。シャトー・べレールはヴェール(Vayres)側にありますね。大きく蛇行するドルドーニュ川を挟んで向こう側がサンテミリオンやポムロールといった銘醸地です。なんとなくこのエリアが特出しで単独AOCになる理由がわかるような気がします。このAOCでは赤・白が作れますが、facebookとか見る限りシャトー・べレールは赤しかやってないようですね。

アントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)<ドルドーニュ川とガロンヌ川に挟まれたエリア>を俯瞰する地図でAOCグラーヴ・ド・ヴェール(Graves de vayres)の位置を確認します。
EnteDeuxMers_新クリア
ボルドー市の南、いわゆる「左岸」のグラーヴ(Graves)も同じ「グラーヴ(砂利の意)」という名前なので、AOCグラーヴ・ド・ヴェール(Graves de vayres)も砂利質の土壌だと想像できそうですね。ドルドーニュ川の向こうとこっちでどれだけ土壌が違うのかわかりませんが、ポムロールやサンテミリオンと似通ってればいい感じの産地と言えそうです。ポムロールはよくメルローに適した粘土質の土壌と言われますが、純粋な粘土質土壌は丘の頂上周辺のみで、それ以外のところは表面を砂利が覆っているそうです。サンテミリオンに近づくにつれ砂利から砂質の土壌が目立つようになります。


エチケット平面化画像。
名称未設定-3
裏ラベルはなかったので裏にあったインポーターシールを下に付けています。


さあ、抜栓。
IMG_9440
キャップシールの装飾は凝ってます。ここに「Serey-Eiffel」家と書かれています。

コルク平面化。
IMG_9441
「15-1」は「2015」の意味なんでしょうね。

Alc.13.5%。
褐変気味のガーネット。
IMG_9442

黒ベリー、無花果、ダークチェリー。
樽香は弱め。
辛口アタック。
熟成感はありますが複雑味や味わいは弱めかな。
熟成した軽さではなく本質的なものかもしれません。
…とは言ったものの、
2015にしてはフレッシュな感じで楽しめるということで、
総じて好評価です。


*****

Château Bel-Air 2015
Graves de Vayres
RRWポイント 91点


Kir-Yianni Ktima Kir-Yianni Yianakoholi hills 2018

ギリシャ最高峰のワイナリーとも言われるキリ・ヤーニをいただきます。実は2年ほど前にも同じキリ・ヤーニのPDOアミンデオン(アミンテオ)のクシノマヴロ100%のワインを試しています。今日のこれは、同じくギリシャの高貴な固有品種であるクシノマヴロ主体ながら国際品種とのブレンド仕様、そしてキリ・ヤーニの本拠地PDOナウサのエリアからになります。

IMG_9400
キリ・ヤーニは数世紀に渡り家族経営でワインを作ってきた名門ブタリス家のヤーニス・ブタリスさんが1997年に立ち上げたワイナリーです。ヤーニスさんは1960年代後半、ナウサにある35haの畑に土着の黒品種であるクシノマヴロ(Xinomavro)を植樹。当時としては画期的なことで、これを機にギリシャワインの新しい時代が始まったんだそうです。また氏は、ギリシャワイン協会の立ち上げなどギリシャワイン業界に多大な貢献を果たし、「現代ギリシャワインの父」とも呼ばれてるそうな。キリ・ヤーニが作るワインの品質は国際的にも評価され、ギリシャ最高峰のワイナリーの1つとして知られているんだそうで。

公式ページはさすがしっかりしています。ギリシャ語以外に英・独・仏語に対応。

残念ながら2017まででしたが、ヴィンテージごとのワインの詳細情報が載っています。

・クシノマヴロ 50%
・メルロー 30%
・シラー 20%

手摘み収穫。低温浸漬後、温度制御タンクで発酵。MLF後フレンチオーク樽に移され6ヶ月間の熟成をされます。

クシノマヴロ(Xinomavro)はギリシャ北東部の土着品種で、PDOナウサ(PDO Naoussa / ΠΟΠ Νάουσα)とPDOアミンデオン(PDO Amyndeon / ΠΟΠ Αμύνταιο)が主な生産地です。PDOネメア(PDO Nemea / ΠΟΠ Νεμέα)のアギオルギティコ(Agiorgitiko)と並ぶギリシャの代表的な黒品種になっています。
Xinomavro01
Xino」は「」、「Mavro」は「」の意味だそうで、名前からして酸味が多く色の濃い品種だと想像できそうです。その特徴からネッビオーロやピノ・ノワールの近親ではないかと疑われていますが判明はしていません。2013年のDNA鑑定ではグエ・ブラン(Gouais Blanc)と何らかの品種との自然交配であるという結果が出ているようです。(いや、これは結果出てるとは言わんじゃろ?笑)

キリ・ヤーニ訪問。やはりクシノマヴロの銘醸地として名高いギリシャ北部のナウサです。
KIR-YIANNI01
ナウサの町のすぐ北に広がる畑の中にあります。ストビューが到達してなかったのでGoogle Mapに上がっていた写真を拝借。キリ・ヤーニのシンボルマークの塔(小屋?)が畑の中にありました。キリ・ヤーニはPDOアミンデオンのアミンデオ(Αμύνταιο)にも拠点を持っています。

ギリシャ全体のPDO地図でキリ・ヤーニとPDOナウサ他の位置関係を把握しましょう。
Greece
アルバニア、北マケドニア、ブルガリアと国境を接するマケドニア(Macedonia)という北部の地方にPDOナウサはあります。マケドニアには以下の4つのPDOがあります。

・PDO Goumenissa(ΠΟΠ Γουμένισσα)
PDO Naoussa(ΠΟΠ Νάουσα)
・PDO Amyndeon(ΠΟΠ Αμύνταιο)
・PDO Slopes of Meliton(ΠΟΠ Πλαγιές Μελίτωνα)

しかしながら、今日のワインには PDO Naoussa(ΠΟΠ Νάουσα)とは書かれていません。裏ラベルをよく見ると、PGI Imathia(ΠΓΕ Ημαθία)とあります。PGIとは「Protected Geographical Indication」のことでEUワイン法に準拠した広域の地理的保護表示になります。なぜPDOナウサでないかというと、PDOアミンデオン同様、PDOの規定がクシノマヴロ100%でないといけないからです。今日のワインはクシノマヴロとメルロー・シラーのブレンドでしたね。

PGI Imathia(ΠΓΕ Ημαθία)はイマティア県全域が対象で、当然ナウサはその県内にあります。
Imathia
※参考:
Wines of Greece


ラベル平面化画像。
IMG_9206
裏ラベルは英・仏・独3ヶ国語対応ですね。

モトックスのシールはバーコードを隠すだけでした。
IMG_9205


さあ、抜栓。
IMG_9396
キャップシールにも例の小屋が描かれています。

コルク平面化。
IMG_9397
キリ・ヤーニを英語表記とギリシャ語表記で。

Alc.14.5%。
褐変味のあるガーネット。
IMG_9398

黒ベリー、プラム、チェリー、酸の香り。
辛口アタック。
ドライで果実味は弱いですが、
コク、奥行きのある味は絶妙のバランスです。
大人しめの酸が戻ってきますが、
フィニッシュまで邪魔はしないのでOK。
クールにいい感じです。

う~ん、
クシノマヴロ100%よりバランスいい感じがします。


*****

Kir-Yianni
Ktima Kir-Yianni
Yianakoholi hills 2018
RRWポイント 91点


--- Red Red Wine ---

:「偉いワイン」探しの備忘録

"Grand Vin(偉大なワイン)は「偉いワイン」とは限らない"

かの有名なSFの名言です。(笑)
あくまで自己流にワインの世界を日々記録しています。
いつかその「偉いワイン」に出会うために。偉いワインとは?

尚、 各記事末の「RRWポイント」なる点数はロバート・パーカー気取りのマイ評価です。

• 即ち、50~100点の100点満点評価
• 白ワインWWWポイントは80点満点


So much wine, so little time...

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